07. 資金調達

目次

7.1 基本方針

歴史を通じて、大学への私的な支援は、その成長と学問上の卓越さに不可欠なものであり続けてきました。今日でも、大学への個人、民間セクター、非営利財団その他の団体からの出資と献金は物理的および知的基盤の強化に欠かせません。こういった支援によって既存の教育や研究プログラムが増強されるのであり、また科学や技術の分野における新たな試みや、その他の振興のために必要不可欠なのです。こういったことで、本学に対し寄附を行うことや、本学が資金調達を行うことが奨励されています。

本学における資金調達には出資、献金、寄附のほか、遺贈(以下、これらを併せて「寄附」とします)によるものがあります。資金調達には、本学のイベント(チケット販売)や本学のマークやロゴの付いた物品の販売の売上によるものもあります。

本学における資金調達活動は全て、プレジデントオフィス内のファンド・レイジング・オフィサーの部署が監督、調整、指示します。ファンド・レイジング・オフィサーの部署が学長と協議の上、本学の目的に適った資金調達の構想について優先順位付けを行います。ファンド・レイジング・オフィサーの部署はこの優先順位付けに主に焦点を当てて取り組みます。

学長は、優先順位の付いた、寄付の依頼を行う方々のリストを管理します。寄附に関する依頼と交渉には、事前に学長の承認を得る必要があります。

研究支援のための寄付は、プレジデントオフィスと連携して審査し、適切な処理と取扱いを確実に行うようにします。

7.2 留意すべき事項

7.2.1

資金提供者はしばしば、本学への寄附についての税控除の可否を気にかけています。本学は、寄附者が税控除を利用できることを保証するために、必要に応じて、米国からの寄附者にはニューヨークにあるOIST財団を通して寄付するよう助言し、日本の寄附者には日本私立学校振興・共済事業団を通じて寄付するよう助言します。

7.2.2

資金提供者が定めた特定の目的または特定の研究分野のために行われる寄付は格別の配慮に値するものであり、OISTの使命及び利益と一致するよう交渉を伴う場合があります。

7.2.3

本学が支払う関連費用が関わる寄付(資金提供者が建物の工事費を支払うものの、本学がメンテナンスや修繕費を支払わなければならない場合等)は、受入れは可能ですが、精査が必要です。

7.2.4

寄付と助成金:政府、民間セクター、一私人である資金提供者が提供する助成金は「寄付」ではありません。なぜなら、助成者が金銭の効果的な使い道を決定し、支出監査を要求し、研究に対して時間その他の制約を設け、定期的な報告を求め、そしてとりわけ研究の結果、商業的な利益を得る場合があるからです。加えて、助成金(個人が行う私的な助成金を含みます)は間接費(諸経費等)の査定の対象となることがあります。一方で寄付はそのような賦課の対象となりません。助成金はファンド・レイジング・オフィサーの部署ではなく外部研究資金セクション(研究担当ディーンの部署内)が管理します。したがって、寄付と助成金の区別は非常に重要です。

7.2.4.1 寄付:一般に、寄贈資金は、次の項目が満たされた場合に寄付とみなされます。

  • 資金提供者が慈善目的で出資した場合
  • 資金提供者が契約上の要件を課していない場合
  • 資金が取消し不能の形で提供された場合

7.2.4.2 私的助成金:一般に、資金提供は、次のいずれかの項目が満たされた場合に助成金とみなされます。

  • 金銭提供者自らまたはその代理人による監査が定められている場合
  • 金銭提供者が、研究結果の詳細技術報告書や支出報告書等、何らかの見返りを受ける権利を持っている場合
  • 研究が、金銭提供者が指定する特定の要件を満たすように指示されたものである場合(研究全般を支援するのではなく、正確に記載された業務範囲を所定の時間内に完成させる等)
  • 履行について一定の時間が定められているか、または終了が金銭提供者の任意となっている場合
  • 期間の終わりに未消費である資金が金銭提供者に返却されることとなっている場合
  • 金銭提供者から特許やライセンス供与の権利が求められるものである場合

7.2.5

「マッチングファンド」を伴う寄付は差し支えありません。

7.2.5.1 このような寄付が実際に共同研究体制を構成するものであるのか否かの判断にあたっては十分な注意を払う必要があります。これについては、プレジデントオフィスにお問い合わせください。

7.2.6

研究体制支援のための金銭以外の「現物」寄付については、別途の規則があります。プレジデントオフィスにお問い合わせください。

7.2.7

寄付が営利企業からの物である場合には、合意の性質について特に注意してください。営利団体にとって直接の利益ベースのメリットとなるようなものを、本学と寄付を行う営利企業との間の合意内容の一部とすることはできません。

7.3 ルール

7.3.1

本学における資金調達活動は全て、ファンド・レイジング・オフィサーの部署が監督、調整、指示します。

7.3.1.1 学長は、優先順位の付いた、寄付の依頼を行う方々のリストを管理します。このリストは、資金調達の都度、参照されなければなりません。

7.3.1.2 寄付の依頼・交渉は、学長の明確な承認なく行ってはなりません。

7.3.1.3 特定の研究または研究の特定の側面を支援する寄付は、プレジデントオフィスとの連携による審査対象となります。

7.3.2

本学へ献金やその他の寄付を行おうとする営利団体に、直接の利益ベースのメリット、黙示的な商業的利益、その他の報酬があってはなりません。(第22章参照)。

7.3.2.1 資金提供者の営利企業による付帯サービスやメンテナンスを要する専門/独自研究またはその他の設備への資金提供については、受け入れる前にその正当性を得る必要があります。

7.3.3

資金提供者による本学の名称やマークの使用を伴う寄付については、副学長(広報担当)との調整が必要です。(第16章参照。)

7.3.4

資金調達の提案は、以下の基準を満たしている必要があります。

7.3.4.1 得られる資金が本学の主要な方針を支援するものであること

7.3.4.2 資金調達によって、本学が有する他の契約の違反とならないこと

7.3.4.3 本学と、勧誘や案内の受取人との間に関係があること

7.3.4.4 勧誘や案内の受取人が、本学から最近または繰り返し勧誘または案内を受けたことのないこと

7.3.4.5 過去12ヵ月間の同様の促進イベントが、本学について過度な商業主義の印象を持たれるほどに過剰な回数で実施されていないこと

7.3.5

本学の名称、マーク、ロゴを使用した公への物品の売上に基づく資金調達の提案については、以下のことを示さなければなりません。

7.3.5.1 物品提供のために選ばれた営利団体が品質とサービスに関してその業界で非常に高い評価を得ていること

7.3.5.2 販売される物品提供のために選ばれた営利団体が、本学のものと一致した価値および経営手法を有していること

7.3.5.3 提供される製品が高品質であること

7.3.5.4 物品提供のために選ばれた団体が提案する価格が該当する市場において競争力を有していること

7.3.6

研究支援のための寄付は全て、最終的に教育や研究の振興のための寄付としてみなされるか、または私的助成金のための寄付としてみなされるかにかかわらず、プレジデントオフィスが定める研究審査要件の対象となります。

7.3.7

資金調達は全て、本学の全ての資金に適用される基本方針・ルール・手続きの対象です。

7.3.8

寄付の申し出に対しては、資金提供者にファンド・レイジング・オフィサーの部署が寄付の申し出を受け付けたこと、および受付日を記載した礼状を速やかに送付しなければなりません。寄付の申し出の受付の通知は、寄付の受理とは異なります。

7.3.9

本学は、正式に寄付を受理次第、資金提供者に対して受理の日付(受付日または礼状の日付と同日である必要はありません)を記載した受理通知を速やかに送付しなければなりません。受理通知には、寄付の性質と金額(金銭の場合)または資金提供者とのつながりを示すに足る寄付の詳細を記載しなければなりません。

7.3.9.1 条件付きの寄付は、本学が全ての条件に同意し、かつ資金提供者に対して寄付とその条件を受理したことを通知しない限り、「受理された」とはみなされません。

7.3.10

寄付の公表は、プレジデントオフィスのみが行うことができます。

7.3.11

寄付の手続きと正式な受領は、副学長(財務担当)との連携により、ファンド・レイジング・オフィサーの部署が専門に処理します。

7.3.12

学生に対して資金提供の勧誘を行ってはなりません。学生が関与した資金調達活動は、時間と労力(そして熱意)のみに限られます。この制約の例外については学長及び研究科長の承認を要します。

7.4 責任

7.4.1

学長は、寄付と寄付の提案について、本章の7.2および7.3に定める要件に一致しているか否かの審査手続きに関らなければなりません。

7.4.2

学長は、ファンド・レイジング・オフィサーの部署の要請に応じて、資金提供者候補を特定し、またこれらの候補と関係を築き上げ、民間セクターからの資金集めに積極的に参加すべきものとします。

7.4.3

教員は、ファンド・レイジング・オフィサーの部署に対して資金提供者候補を特定して資金調達活動を支援することがあります。教員は、資金提供者/献金の候補を特定または発見した場合には、ファンド・レイジング・オフィサーの部署に支援を要請して同部署を介して対処します。

7.4.4

個々の教員は、ファンド・レイジング・オフィサーの部署に対して資金提供者をまず特定することをせずに資金提供者と交渉することは避けてください。これにより、a) 複数の教員が同時に1人の資金提供者を追うといった失敗や、b) 十分な情報や健全な勧誘計画なしでの勧誘を避けることができます。

7.5 寄附の受入れ

7.5.1

寄附の受入れは、「OIST寄附受入方針」及び「OIST命名権寄附ガイドライン」に従うものとします。

7.5.2

OIST寄附受入方針[Link]で規定されたとおり、寄附審査委員会が寄附の提案を審査し、提案された寄附の受入れ可否を学長に推奨する責任があります。

7.6 寄附講座、寄附研究部門及びチェアシップ

7.9.8で定義された寄附による講座、研究部門及びチェアシップの設置については寄附講座、寄附研究部門及び寄附チェアシップに関する規程を参照するものとします。

7.7 書式類

通常寄附:寄附申込書

寄附講座、寄附研究部門及びチェアシップ:寄附講座、寄附研究部門及びチェアシップの提案書

7.8 連絡先

7.8.1 本方針の所管

学長

7.8.2 その他連絡先

ファンド・レイジング・オフィサーの部署

7.9 定義

7.9.1 遺譲

遺言書の条件に基づいた財産(不動産以外)の譲渡をいいます。

7.9.2 出資

資金を募る要請やキャンペーンに応じて自発的に提供される金額をいいます。

7.9.3 繰延型寄付

通常、資金提供者が取消し不能の形である利益を提供する(ある将来の日付に開始する複数年度の間の本学への年金支払い等)ものの、個人的には残る利益を維持している場合のように、年金形式によって目下の利益と将来の利益に分けた寄付をいいます。

7.9.4 指定寄付(または指定資金)

資金提供者による目的の説明が漠然としている金銭の寄付をいいます。一般に、指定寄付では特定の受取人のみを指定し、金銭の使途は指定されていません。例えば、「奨学寄付金」(寄付金型)として300万円の寄付、本学のチャイルド・ディベロップメント・センターのために5,000ドルの寄贈、図書館支援に500,000ドルの寄贈、または一般寄付金として75,000ドルの寄贈、といった形です。担当の意思決定者および予算管理者は、指定寄付の使用方法を決定する裁量をいくぶんか持っています。「制約寄付」と比較してみてください。

7.9.4.1 奨学寄付金(寄付金型)
特定の研究ユニットに対する教育研究に要する経費に使用するために寄付を受けた資金で、寄付者に対して執行実績等を報告する必要のないもののことをいいます。奨学寄附金(寄付金型)の取り扱いについては、「奨学寄付金(寄付金型)に関するインストラクション」を参照して下さい。

7.9.5 遺贈

遺言書の条件に基づいた不動産の譲渡をいいます。

7.9.6 献金

慈善、教会、非営利教育機関または非営利団体・財団に任意で提供された金銭その他の有形物をいいます。

7.9.7 寄附基金

特定のプログラム又はプロジェクトを指定した寄附プール

7.9.8 寄附講座、寄附研究部門及びチェアシップ

  • 寄附講座:個人、法人又は団体からの寄附により設置又は支援される授業科目又は教育プログラム
  • 寄附研究部門:個人、法人又は団体からの寄附により設置若しくは支援される研究ユニット又はこれに相当する組織若しくは研究プロジェクト
  • チェアシップ:寄附によって設置又は支援される教授、准教授及びアシスタントプロフェッサー、又は同等の教員ポジションの職席

7.9.9 寄附

ある人が別の人または団体に対して、譲渡の相手先である人または団体からの報酬その他の形の対価なしで、任意で譲渡した1つまたは複数の物(金銭を含む)をいいます。

7.9.10 助成金

7.9.10.1 研究分野での助成金
各種の研究分野での研究のために、また多くの場合は特定の研究分野への資金申請に応じての、個人(グループの場合もある)に提供された金銭をいいます。助成金は、研究費を補填し、さらに研究者に収入を提供します。政府、民間セクター機関、個人は全て、助成金によって研究に対する資金提供を行います。助成金は「寄付」ではありません。なぜなら、助成者が金銭の効果的な使い道を決定し、支出監査を要求し、研究に対して時間その他の制約を課し、また特に定期的な報告を求めるからです。研究分野での助成金は、応募前に外部研究資金セクション経由で研究担当ディーンの承認を得る必要があります。外部研究資金セクションまたは事業開発セクションは、助成金に対する実績報告、活動報告、監査、その他資金提供者が求める活動について、申請者の支援を行います。研究分野での助成金にかかる間接経費は、PRP27.5.3に従います。

7.9.10.2 研究分野以外での助成金
研究分野以外での助成金もまた、本学の運営を推進する重要な外部資金となります。研究分野以外での助成金は、主に事務部門の特定の業務への資金申請に応じての、個人(グループの場合もある)に提供された金銭をいいます。研究分野以外での助成金は、応募に際し、申請する部署の副学長の承認を得る必要があります。また、申請者は、速やかに申請内容の詳細、採択の結果を外部研究資金セクションに報告する必要があります。申請部署は、助成金に対する実績報告、活動報告、監査、その他資金提供者が求める活動を自らの責任で行います。

研究分野以外での助成金にかかる間接経費は、PRP27.5.3に従います。ただし、資金提供者が間接経費についてパーセンテージを特に指定をしていない場合には、全額を助成目的に使用することができます。

7.9.11 制約寄付(または制約資金)

特に目的と受取人の両方を資金提供者が指定して寄贈された金銭をいいます。例えば、化学工学の夏季研究生の給費として200,000ドルを資金提供、進化生物学研究のための特定の物品の購入に5,000ドル、またはチューバの演奏もする地質学の学生の募集費用として研究科長の部署に50,000ドル、といったものです。担当の意思決定者および予算管理者は、制約寄付の使途に関してごくわずかの裁量しか持たないか、または一切裁量がありません。「指定寄付」と比較してみてください。

7.9.12 寄附審査委員会

申込まれた寄附を審査し、その寄附の受入れ可否について学長へ助言するためにOIST内部委員会を設立しました。