入居企業インタビュー: Kwahuu Ocean

OISTで開発された世界初のイカの累代飼育技術を活用し、商業的なイカ養殖の実現を目指すKwahuu Ocean株式会社の創業者、中島隆太氏に、OISTイノベーションインキュベーターのネットワーク活用法や、持続可能な小規模養殖ソリューションに込めたビジョンについてお聞きしました。

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貴社の事業内容について教えてください。

私はミネソタ大学ダルース校美術学部教授で、専門は現代美術ですが、モチーフとしているイカの安定飼育を目指し、2010年から琉球大学、2017年からOISTで共同研究を行ってきました。イカは非常に繊細な生き物で、実験用として生かしておくことさえ難しく、養殖については長年不可能と言われてきました。しかし、OISTのジョナサン・ミラー教授率いる物理生物学ユニットの研究チームと共同研究を行う中で、アオリイカの累代飼育10世代を世界で初めて実現することができました。この技術の商業化を目指して設立したのが、Kwahuu Oceanです。

OISTで開発した技術をもとに、商業的な養殖を実現するためのR&Dが目下の取り組みですが、5年以内には、小型分散型養殖モジュールを開発し、漁業者やホテル等の施設に提供することを目指しています。現在の漁業や養殖は環境負荷が大きいことが課題視されていますが、小さなユニットで必要な場所で必要な分を少量生産することで、海への負荷を軽減することが可能です。さらに、不確実性の高い漁と並行して養殖も行うことができれば、漁業者が安定した収入を得られることにも寄与します。この新しい小型分散・地産地消型の養殖モデルをイカ以外にも魚やエビ等の水産物、農作物にも展開することで、沖縄の自然環境を守りながら、沖縄に暮らす人々の生活を向上していくことが当社のミッションです。

OISTイノベーションインキュベーターに入居した理由を教えてください。

OISTで開発した技術を沖縄で展開していく上で、OISTイノベーションインキュベーターに入居するのが自然な流れだったからです。

OISTイノベーションインキュベーター現在の利用方法を教えてください。

現在もOISTとの共同研究が続いており、研究施設で過ごす時間が多いため、インキュベーターをオフィスとして利用すること少ないですが、インキュベーターの入居企業との交流はあります。同じくインキュベーターに入居しているHAKKI社からは事務的なサポートを受けており、レキサン社からはチームビルディングの支援を受けています。

OISTイノベーションインキュベーターに入居するメリットとして感じていることを教えてください。

ネットワーキングの機会があることです。先日、非公式イベントとして開催されたインキュベーターの入居者やOIST関係者が集まったバーベキューでは、さまざまな人と交流できる良い機会でした。

また、当社の場合、OISTの技術を活用しているため、OIST Innovationの知財担当チームから多くの支援をいただいています。中には起業経験のある方もおり、企業との交渉方法やビジネスノウハウについてもアドバイスをいただけるので、とても心強く感じています。

どんな企業にOISTイノベーションインキュベーターへの入居をおすすめしたいですか?

大学関係の企業では医療系や工学系が多いと思いますが、幅広い分野の企業が入居することで多様性が高まり、横のつながりが強化されると考えています。例えば、ファッションやデザインなど、現在はOISTとの関わりが少ない分野の企業が入居してくれたら嬉しいですね。

特にデザインは技術系スタートアップの成長において非常に重要だと考えているので、デザインを支援してくれるような方が入居してくれると心強いです。

OISTイノベーションインキュベーターに今後期待することがあれば教えてください。

研究に集中していると、ラボの関係者としか顔を会わせなくなりがちです。そのため、インキュベーターがさまざまな人々と出会える場として機能していくことを期待しています。経営に関するノウハウや助成金の情報、連携先企業の紹介など、ネットワーキングから得られるものは非常に重要だと考えています。 また、OISTにおけるイカやタコの飼育に関する研究にも今後期待しています。OISTで生まれた新たな技術を、当社がライセンシングを受けて社会実装を進めていくという循環を実現することで、これまでの研究を支えてくれた沖縄へ恩返しをしていきたいです。

(取材日:2024年7月29日)

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