長年にわたる進化論の難問に挑む
去る3月5日~7日にかけて、国内の研究機関からゲノミクス研究者や進化生物学者がOISTに集まり、新たな進化論について議論する野心的な試みに挑戦しました。研究者たちは、文部科学省が助成する複合適応形質進化という新学術領域研究の5年プロジェクトに参加しています。例えば、新しい器官の形成といった複合適応形質進化のメカニズムの解明は、長年にわたる進化論の難問です。なぜなら、これには互いを補うような突然変異が複数の遺伝子で同時に発生することが考えられるからです。
プロジェクトを率いる基礎生物学研究所の長谷部光泰教授は、「これで2回目のミーティングとなりますが、今後は毎年2度集まる予定です」と、説明しました。今回のミーティングは、主に15分間の研究発表とそれに続く5分間のディスカッションで構成されました。ゲノミクスやインフォマティクスの研究者だけでなく、植物と動物それぞれを研究対象とする実験生物学者も出席したため、参加者たちは自分の専門外の分野についても考えさせられました。長谷部教授はこのミーティングをダーウィンのガラパゴス諸島滞在に例え、「彼は様々なものを沢山集めて、後にそれらを結び付けることで進化論を発展させました。同様に、このプロジェクトでは、様々な情報を結びつけて、複合適応形質進化の新たなモデルを提唱することを目指しています。」と語りました。
OISTマリンゲノミックスユニットでグループリーダーを務める將口栄一研究員も本プロジェクトに参加しています。「今回のミーティングは本土から来た50名の研究者にOISTを直接見て頂く良い機会となりました。OISTのDNAシーケンシングセクションが誇る高いパフォーマンスにみな驚いていたと思います。」と、ふり返っていました。
今回のミーティングでは、OIST関係者も自由に聴講することができる3つのセミナーが開催されました。初めに米国エネルギー省共同ゲノム研究所のチェン・フェン博士が新しい単分子リアルタイム(SMRT™)シーケンシングのメリット、デメリット、将来の用途について説明しました。次に琉球大学の辻和希教授が、どのようにアリがコロニーの大きさを感知し、それに応じて繁殖行動を調整しているかという研究について解説しました。最後に、東京大学の笠原雅弘講師が、異なるDNAシーケンシング手法から得られたデータを統合して全ゲノム情報を得るための新しい戦略について話しました。
(ショーナ・ウィリアムズ)
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