01. 沖縄科学技術大学院大学について: 建学と統治の基本理念

目次

1.1 沖縄科学技術大学院大学の建学理念

科学技術の分野における国際的な大学院大学の設置を準備するため、2005年9月1日、独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構法(平成17年法律第26号)に基づき、独立行政法人として、沖縄科学技術研究基盤整備機構が設立されました。そして、この整備機構の設立と運営の成功を踏まえ、沖縄科学技術大学院大学学園法(学園法。平成21年法律第76号)が成立し、公布・施行されました。この法律によって、本学を大学として設置するための制度的基盤が与えられるとともに、研究機関から大学に移行するための枠組みが作られました。

学校法人沖縄科学技術大学院大学学園(学園)が掲げる目的は明確です。それは、国際的に卓越した科学技術に関する教育及び研究を行うとともに、そのような教育研究によって、次のことを実現するということです。

  • 沖縄の自立的発展に貢献すること
  • 日本と世界の科学技術の発展に貢献すること

1.1.1 沖縄科学技術大学院大学の目的

本学の建学に至るまでの諸計画等によって、大学院大学の運営指針となる5つの基本理念が示されています。

世界最高水準 – 本学は、世界をリードする教育研究の拠点となります。その実現のため、創造性や独自性に富んだ研究が奨励され、多様性が尊ばれる文化を根付かせます。

国際性 – 教員と学生の半数以上は外国人となることを目指します。大学の公用語は、科学技術分野の共通言語である英語とします。

柔軟性 – 教育研究と運営の両面において、イノベーションやクリエイティブな思考、そして、柔軟に適応することを奨励します。また、新しいイニシアティブを取り込みます。学際的な教育研究体制を構築し、学生には、一人ひとりの特性を尊重して対応します。

世界的連携 – 国際的な会議、大会、ワークショップ、その他の様々な交流活動に参加・出席し、また、それらを自ら主催することによって、教育及び研究の幅を広げるとともに、本学の認知度を向上させます。

産学連携 – 本学が科学技術の分野で行う研究活動からは、産業界において更に発展し、応用することが可能な成果が生み出されるでしょう。本学は、そうした成果が、沖縄の自立的発展を促し、日本の競争力の向上につながるとともに、広く社会全体に利益をもたらすことを認識します。

1.1.2 学園及び大学院大学のマネジメント体制

学園と大学院大学は、学園法の規定に従いながら、以下のとおり、一体的なマネジメント体制を構築します。

まず、学園の管理運営に関する最終決定権と最終的な責任は、理事会にあります。理事会は、学園の理事長を選任し、理事長は大学院大学の学長も兼務します。理事会は、日々の大学の運営を学長に委任します。さらに、理事会は、学園の副理事長を兼ねる大学院大学のシニアレベル・エグゼクティブ(上級幹部職)を任命します。

学長は、理事会と協議しつつ、大学院大学のマネジメント体制を構築します。それは、卓越した国際的な大学院大学を運営するためにふさわしい効率的かつ効果的なマネジメント体制であり、かつ、管理運営と財務運営の透明性が確保され、それらについて説明責任を果たすことができるものでなければなりません。

1.2 ミッション・ステートメント

沖縄科学技術大学院大学は、国際的に卓越した科学技術に関する教育研究を行います。そして、そのような教育研究を通じて、沖縄の自立的発展に貢献するとともに、日本さらに世界の科学技術の発展を促進し、持続させます。

1.3 基本的価値観(コア・バリュー)

高潔さ、誠実さ、公平性、他人への思いやり、そして本学のミッションへの献身は、本学に勤める教職員や本学の関係者の活動や振る舞いの基礎となる基本的価値観(コア・バリュー)です。本学では、多様性が尊ばれ、ジェンダー、性自認、性表現、年齢、性的指向、心身の障害、健康状態、人種、民族、先祖、文化、出身国、宗教、結婚歴に関係なく、本学のコミュニティーに属する全ての人に対して、等しく機会が与えられます。

さらに、本学は、以下の基本方針によって示される理念に基づき運営されます。

1.3.1 オープンな研究環境

本学の中心的な機能である指導、修得、研究、発表は、調査・探求、思考、表現、学問のための諸活動、平和的な集会についての自由が全面的なサポートを受け、完全に保護される環境の下ではじめて可能となるものです。そのため、学内において、できるだけ幅広い考え方が表現されるよう奨励することが本学の基本方針です。 オープンで自由な意見の交換を支援するため、本学は方針として、多様性に富む集団が多くの優れた資質を持つ人々によって形成され、そのような多様性の下で研究事業が営まれることを推奨します。学長が特例として認めた例外的な状況を除き、本学の研究への参加は、それに必要な資質さえ有していれば、市民権や国籍、民族性によって制限を受けることはありません。同様に、本学の研究に参加する者は、市民権や国籍、民族性によって、研究の核心的な部分へのアクセスが拒否されることもありません。 さらに、本学の研究は、その成果を世界中の科学コミュニティーに普及することを意図するものです。このため、公表に制限が課されるのは、ピア・レビュー(査読)や特許性の審査などのために、契約や法令に基づき、発表や公開が一時的に制限される場合に限られます。

1.3.2 互いに尊重しあう職場の実現に向けた基本方針

本学は、互いに尊重しあうコミュニケーションによって仕事上の関係が築かれ、教育、研究、そして生産性を高める活動が促進される職場環境の提供に努めることを約束します。その実現には、次の価値観が共有される職場であることが必要です。

  1. 本学に所属するすべての人は、例外なく、本学のミッションの達成に大きな貢献をすることができる存在です。
  2. 本学のミッションは、すべての職種のすべての職員が、互いの価値を認め合い、互いに尊重しあう環境のなかで初めて達成することができます。職員間のコミュニケーションは、常に失礼のないようにしなければなりません。これは、大きな困難に直面した状況や緊急時においても同じです。
  3. 本学では職員の多様性が讃えられます。職員は、ジェンダー、性自認、性表現、年齢、性的指向、心身の障害、健康状態、人種、民族、先祖、文化、出身国、宗教、結婚歴の違いに対しても常に寛容で、そうした違いを尊重しなければなりません。心身に障害を持つ職員に対しては、特に配慮が必要です。
  4. 管理職や指導的立場にある人など、権限を持つ職にある人は、皆が仕事で力を発揮できるよう指揮をとる責任を果たしながらも、これらの価値観を共有する上でのロール・モデルとして、率先して取り組まなければなりません。
  5. これと同じように、職員は、それぞれの肩書きにかかわらず、困ったことがあれば、問題提起をし、ディスカッションを行うことが奨励されます。このような行為によって、本学の他の職員から批判的な対応や罰則的な扱いを受けることはなく、そうしたことを恐れる必要はありません。
  6. 相互の理解を促進し、不必要な対立を生まないためには、英語を母国語とする人も、そうではない人も、互いに配慮しあうことが期待されます。そして、議論に参加したり、質問をしたりすることが難しくなるような「言葉の壁」を作らないことが大切です。
  7. 職員の声に対して、本学は職場環境の改善と生産性の向上を目指し、適切な対策をとります。
  8. 学生と教員(又は学生の学業監督に携わる者)、上司と部下、あるいは外部の業者や関係者との親密な関係は、ハラスメントや利益相反を引き起こす可能性があり、就労・就学環境に悪影響を及ぼす恐れがあるため、避けるべきです。その様な関係が存在する場合は上長及び副学長(人事担当)に報告しなければならず、必要に応じてハラスメントや利益相反を防止するための処置が取られます。そのような報告は秘密厳守で取り扱われます。
  9. 尊重の念を欠くコミュニケーション、差別、ハラスメント、いじめ、性暴力の行為者については、行為の様態や悪質性、結果の重大性により、職員の懲戒等に関する規程に基づき厳正に対処します。

1.3.3 学生に対するコミットメント

博士課程プログラムは、本学の中心を成すべきものです。その参加者は、科学技術分野における世界の真に卓越した学生の中から選抜されます。本学は、博士論文プログラムの間だけではなく、その後においても、学生を成功に導くよう努めます。

本学の博士課程に在籍する間、それぞれの学生は、世界レベルの教授陣と密に接しながら、最新の設備が整った研究室において、個々に応じて編成された他に例を見ない教育プログラムで学ぶことができます。本学では、学生たちが最先端の科学技術の研究を進めていけるよう、探究心や独創性をかき立て、議論やイノベーションを促す国際的な構成と学際的なアプローチが、はっきりとした形で設計されています。沖縄での日常生活や様々な活躍を支援するサポートを含め、博士論文研究を行うための最高のコンディションを提供することによって、本学は、学生がそれぞれのゴールに向かって邁進し、将来を担うリーダーとなることを応援します。

1.4 行動規範

この行動規範は、本学のコミュニティーにおいて生活を営み、また、意思決定を行う上で、倫理的又は法的に、或は職業人として守るべき基準について、私たちが共有すべき相互の約束を示すものです。
本学は、高潔さ、誠実さ、公平性、多様性、他人への思いやり、機会均等を尊重するとともに、本学で行われるいかなる活動も、人間の基本的尊厳を傷付けることがないよう努めます。
本学は、ジェンダー、性自認、性表現、年齢、性的指向、心身の障害、健康状態、人種、民族、先祖、文化、出身国、宗教、又は結婚歴に基づく差別はしません。本学が定めるジェンダー行動規範は更に、ジェンダー、性自認、性表現に関わらず全ての人が平等であるという基本原理を強調します。
本学の全ての教職員、学生、役員、理事会のメンバー、その他本学の関係者及びボランティアは、本学のコミュニティーのメンバーとして、これらの価値を維持し、行動で示すことが求められます。さらに、本学学内の倫理的規範だけではなく、本学が属する地域社会の倫理的規範についても順守しなければなりません。この行動規範に含まれる基本的価値観は、本学の教育、研究そしてビジネスにおいて、不可欠な要素です。また、一人ひとりが、私たちの活動に関連する外部の方針、基準、法令等について、それらを認識し、順守しなければなりません。

1.4.1 適用範囲

この行動規範は、本学のコミュニティー内の以下の者に適用されます。

  • 教員、事務職員、研究者、学生等、本学で勤務・活動している間、本学により給与や給付金等が支払われる者
  • コンサルタント、納入業者、契約者等、本学との間でビジネスを行っている者
  • ボランティアとして本学に対してサービスを提供している者
  • 同窓会等、本学との間に正式な提携関係がある者

1.4.2 業務及びその他の活動

本学のコミュニティーに属するメンバーは、関連法令と本学の基本方針・ルール・手続きを順守し、大学の業務を行わなければなりません。本学内における業務やその他の活動が、必ずしも常に特定の法令や倫理規範の対象になるわけではありません。そのような場合には、本学の基本的価値観(コア・バリュー)に基づいて、それらの業務・活動を行わなければなりません。ある特定の業務上その他の慣習が、通常広く行われ、或いは都合のよいものであっても、本学の基本的価値観や行動規範の内容と矛盾する場合、それらは、本学では正当化されません。

1.4.3 情報保護

本学のコミュニティーに属するメンバーは、様々な種類の機密情報や個人情報を、本学を代表して受け取り、作成することになります。そのため、様々な情報へのアクセスや公開に関する法令について理解し、それらを順守するのは本学のコミュニティーに属するメンバー一人ひとりの責務です。さらに、本学のコミュニティーにメンバーは、第三者との情報開示・非開示契約を順守するとともに、当該情報の保護及び開示についての本学の基本方針・ルール・手続きを順守しなければなりません。また、本学との雇用等の関係がなくなった後も、それらのルールや手続きが適用される場合があることに留意する必要があります。

1.4.4 利益及び責務の相反

教員や職員として本学のコミュニティーに属するメンバーは、本学と本学のミッションに対して職務上の忠誠を尽くす義務があります。学外の職務や、個人的な金銭的利害関係、第三者からの利益の受取りは、大学への忠誠の義務と個人的な利益との間の対立を実際に生み、或は、そうした対立があるというように認識されることにつながる場合があります。

さらに、本学は、小規模であり、学部のない構造及び配偶者や内縁関係者の雇用解決を促進する伝統を持つため、実際の又は潜在的な利益相反を管理することで、親族関係が大学運営に関する判断や決定において公正性の欠如を招かないよう、極めて慎重でなければなりません。本学の役員及び教職員で、他の役員、教職員又は学生を親族に持つ者は、大学運営に関する判断や決定に参加する際、又は内部委員会に参加する際、自身の行動が大学運営の公正性や中立性を損なわないよう十分に配慮することが求められます。ただし、このことは親族関係にある者が自身のキャリアパスを追求することを妨げるものではありません。

こうした潜在的な利益相反又は責務相反(相反の兆候を含む)を未然に防ぐため、本学は、利益相反/責務相反を管理するための枠組みを整えています。この枠組みは、利益相反に関する懸念があるかどうか、もしある場合にはどのような対策が取られるかを示すことで、本学のコミュニティーに属するメンバーが利益相反に陥っているかどうかの懸念を軽減することを目的としています。役員及び教職員で、学外の職務や金銭的な利害を持つ者、又は本学の役員、教職員又は学生と親族関係にある者は、本学の利益相反管理規則に定める方針及び手続きに従って、その内容を開示しなければなりません。この規則は、本学の基本方針・ルール・手続きの第22章「利益相反防止及び安全保障輸出管理」に含まれています。