ダニエル・ロクサー教授の着任

OISTの分子遺伝学ユニットは研究室を率いる新たなリーダーを迎えました。

 この度、OISTの分子遺伝学ユニットは新たなリーダーとしてダニエル・ロクサー教授を迎えました。ロクサー教授はカリフォルニア大学バークレー校の物理学及び分子細胞生物学の教授で、OISTのアジャンクト・ビジティング教授として着任しました。

 ロクサー教授は1989年にカリフォルニア大学バークレー校の物理学の教授に就任しました。同教授はゲノムと遺伝子について研究するゲノミクスに対する興味から、物理学に関連した生物学的な問題を解決する研究に従事するようになり、さらにヒトゲノム・プロジェクトに関わるようになりました。それ以来、多くの研究者との共同研究で、さまざまな動物のゲノム解読を進めています。

 OIST分子遺伝学ユニットは、さまざまな動物のゲノムを比較することで、動物の進化の上で鍵となる遷移を解明しようとしています。とくに、多細胞動物の出現や背骨などの物理的な特徴をもつ動物の進化における重要な遷移に着目した研究が行われています。

 生物学を専門とする同ユニットのシマコフ・オレグ研究員は、「ロクサー教授は量的・分析的な手法に精通しており、私達も進化の過程におけるゲノム構成の変化を異なる切り口から考えることができるようになりました。学際性を特徴とするOISTにまさに適任の教授ではないでしょうか。」と話します。

 本ユニットが他の機関と共同で行った最新の研究に、ヒドラやタコのゲノムをはじめとする様々な動物のゲノム解読があります。こうした研究から動物における遺伝的変異や新たな特性の出現に関するより詳細な検証が可能になることが期待されます。

 ロクサー教授は、OISTが開催するウィンターコース「生物複雑系の進化」(OWECS)の講師として以前より度々沖縄を訪れています。ウィンターコースをきっかけに生まれたのがOISTマリンゲノミックスユニットの佐藤矩行教授との共同研究です。ロクサー教授と佐藤教授、さらにスタンフォード大学とカリフォルニア大学の研究者が参画し、ヒトを含む脊椎動物と祖先を共有する半索動物の比較ゲノム解読が進んでいます。

 数年前のウィンターコースOWECSでの議論がもたらした副産物のひとつが、ロクサー教授と分子遺伝学ユニットのメンバーが今後目指す連携の良い例と言えます。

   2014年にロクサー教授と佐藤教授が東邦大学の共同研究者と発表した論文は、動物分類学のあるサブカテゴリー(亜門)に分類されている脊椎動物は、本来はもうひとつ上位のカテゴリー(門)に分類されるべきことを示唆するものでした。こうした動物の系統分類学的改定は19世紀以来行われていません。ロクサー教授の着任を受けて、今後この分野におけるOISTの共同研究がより一層進むことが期待されます。

研究ユニット

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