生命の起源を探るOISTの学際的研究

個々の細胞がどのような働きをし、いつ分化を遂げ、死んでいくのかを決定するプログラムの実態はまるでブラックボックスのように謎に包まれています。 OISTの研究員はそのメカニズムの解明に取り組んでいます。

 ヒトであれ、アルマジロやウミウシであれ、生命の始まり方にほとんど変わりはありません。形の定まらないとても小さな幹細胞の固まりが生命の起源なのです。そこから、遺伝子発現をオン・オフにする複雑かつ巧妙な遺伝子制御のプログラムが展開され、細胞分化を経て個体へと成長を遂げます。しかし、個々の細胞がどのような働きをし、いつ分化を遂げ、死んでいくのかを決定するプログラムの実態はまるでブラックボックスのように謎に包まれています。各細胞内のDNA鎖で何が起きているかを知ることは極めて難しいのです。

 しかし、OISTのニコラス・ラスカム准教授と佐藤矩行教授は、最先端のDNAシークエンサーとコンピューター技術を用いればこの難題を解明できると確信しています。マリンゲノミックスユニットを率いる佐藤教授は、壺状の海洋脊索動物であるホヤの胚を単離し、各細胞の遺伝子の働きを観察します。それと平行して、ラスカム准教授率いるゲノム・遺伝子制御システム科学ユニットの野田武志研究員とガース・イルズリー研究員は、コンピューター技術を考案し、それを駆使して胚を成熟へと導くメカニズムの解明に取り組みます。

 この研究プロジェクトでは、ヒトや他の脊椎動物の発生パターンに高い類似性が見られる110細胞期までの胚を使用しています。ここで得られる知見は、様々な場面で展開する可能性があります。ラスカム准教授は、「将来的には、細胞を自在に操りES(胚性幹)細胞やある特定の組織をつくれるようにしたい」と、抱負を語りました。