息をのむほどに美しいスカイウォーク
センター棟と第2研究棟の間にまたがる新しいスカイウォーク(連絡通路)を歩いて渡ることは、他では味わえない体験です。遠くに東シナ海の素晴らしい景色を臨み、眼下の谷間には緑豊かな植物が生い茂る全長63メートルのスカイウォークは、周りの自然と一体となったセンター棟と第2研究棟を連結しているだけでなく、非の打ち所のない建築美学も加味しています。
このスカイウォークのユニークな点は、大半の橋と異なり、逆キングポストトラス橋と呼ばれる張弦梁構造であることです。通常、キングポストトラス構造では、2本の傾斜ケーブルが中央の垂直支柱に取り付けられています。逆さになった橋の構造の場合、中央柱は、2棟の建物の間、谷の上にあります。中央柱とケーブルが吊り下げ式だと、ともすれば自然景観を損ない、スカイウォークの下の渓谷の植物に影響を与える支柱を必要としません。OISTのデニス・ブルック研究員は、「生態学者として、2つの建物の間に位置する水辺地域の保全にはとても関心があります。スカイウォークの建設には多くの時間とコストがかかったと思いますが、OISTは大切な野生動物の生息地、特に絶滅危惧種であるサンショウウオの生息地を保護しています。また、OISTが自然景観に色を添えるものとしてスカイウォークの建設に相当な努力を注いでいることも素晴らしいと思います。」と語っています。
2012年1月20日、スカイウォークは2本のスチール製サポートケーブルの上に「ジャッキダウン」されました。それは、スカイウォークの下に見えるケーブルが、橋の総重量約550tを支えることを意味します。この日、第2研究棟では、建設作業員や技術者、建築家が集まり、ジャッキングの各ステップをコンピュータでモニターしました。スカイウォークの建設中、橋を支えていた4本のジャッキを徐々に緩め、橋を中央柱の先端にある金属製のブラケット上に下げました。そして、橋の重量がジャッキから金属ブラケットに移動するたびに、ケーブルの張力をテストしました。
スカイウォークは、台風や急激な温度変化、地震にも耐え得るつくりになっています。例えば、地震に備えて、第2研究棟と橋の接合部は永久固定されているのに対し、センター棟との接合部は可動式になっていて、前後にわずかに滑るようになっています。
第2研究棟の建設の現場監督を務める西松建設株式会社九州支社OIST出張所の高橋雅樹所長は、「怪我人も出ず、橋が完成に近付いていることを嬉しく思います。でも仕事はまだ終わっていません。第2研究棟の完成までにやるべきことはまだあります。」と述べています。第2研究棟の建設が始まってから、1年4ヶ月が経ちました。この建物は今年3月に完成する予定で、研究員が新しい研究室に移れるのは6月となる予定です。
第2研究棟には、物理学者、数学者、計算科学者、化学者、生物学者が入る予定で、OISTの学際的研究の精神を育みます。第1研究棟と同様、第2研究棟もさまざまな研究分野の教員のオフィスが隣接します。また、客員教員オフィス、会議室、実験系と理論系のラボ、そして研究員や学生が使用する多くのスペースを備えることとなっています。
(ジュリエット・ムセウ)