2010-11-10

中島啓介博士、佐藤矩行代表研究者ら オタマボヤのセルロース合成の仕組みを解明

 

オタマボヤのセルロース合成の仕組みを解明 

- クリーンな資源の有効利用に期待 - 

 

 独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)マリンゲノミックスユニットの中島啓介博士、佐藤矩行代表研究者らは、プランクトンの一種であるオタマボヤが、繊維状高分子物質であるセルロースをどのように合成するかを遺伝子レベルで解明しました。

 

 セルロースは地球上に最も豊富に存在し、環境負荷の小さいクリーンな有望な生物資源として、その有効利用は社会的に大きな注目を集めています。セルロースは鋼鉄に匹敵する強さ(縦弾数係数)を備えていますが、その秘密はセルロースの微細構造にあります。天然セルロースはナノサイズの繊維状の小さな結晶(ミクロフィブリル)として存在しており、それがセルロースの強さを生み出す要素として極めて重要であることが知られていました。しかし、従来どのようにしてセルロースの結晶構造が形成されるのか、その詳細は謎でした。

 

 本研究グループは、海の中で浮遊生活を送る動物プランクトンの一種であるオタマボヤという生物が、セルロースの結晶構造を巧みに制御して、生活に適した構造物を作っていることを明らかにしました。このワカレオタマボヤと呼ばれる生物は、結晶の最小基本単位である単位胞とよばれるレベルにおいて、全く異なる2つのセルロース結晶を作り分けて、それぞれ幼生の体のヒレと成体が海水をろ過して餌を捕らえるハウスという構造物を作っていました(参考写真)。ワカレオタマボヤにはセルロース合成酵素遺伝子が2つ存在しており、単位胞の異なる結晶を作るに当たり、それぞれ別個の遺伝子が用いられることから、セルロースの結晶構造の形成過程に分子制御の仕組みが存在していることが明らかとなりました。かねてより理論的にはそのような仕組みが存在し得ることが指摘されていましたが、今回ついに発見されたことになります。

 

 今回の発見は、結晶レベルで制御されたセルロースを人工的に合成する仕組み(人工合成系)の構築に必要不可欠な知見であり、セルロース資源の有効利用を実現する上での大きな一歩です。沖縄の海にはたくさんのオタマボヤが泳いでいます。この研究の成果は、沖縄の海の生物を使った沖縄県産業の育成にも貢献できる研究であると期待されます。

 この研究は、沖縄科学技術研究基盤整備機構のマリンゲノミックスユニットの中島啓介研究員を中心として、沖縄県が今年度から開始した「知的クラスター形成に向けた研究拠点構築事業」の一環として行われました。

 本研究成果は、2010年10月23日発行の自然科学系の学術雑誌 Cellular and Molecular Life Sciences(セルラー・アンド・モレキュラー・ライフ・サイエンス)電子版 に掲載されました。

<参考>

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左上)ワカレオタマボヤ幼生の電子顕微鏡写真。幼生は胴部と尾部で構成されたオタマジャクシ型幼生という、脊椎動物と共通の体制をしている。尾部の側面および後端部にセルロースでつくられたヒレが認められる。

右)ハウスに包まれたワカレオタマボヤ成体。ハウス内部は複雑な構造になっている。

左下)ハウス内部のメッシュ構造の拡大写真。ハウスは海水に含まれるミクロサイズの餌を効率よく集める優れたろ過装置である。

発表論文 詳細

1)

発表先および発表日: Cellular and Molecular Life Sciences (セルラー・アンド・モレキュラー・ライフ・サイエンス)電子版 2010年10月23日 (土曜日) http://www.springerlink.com/content/mgt2v3640830xj32/

2)

論文タイトル:The crystalline phase of cellulose changes under developmental control in a marine chordate (海洋脊索動物オタマボヤはセルロースの結晶構造を発生的に制御しつつ変化させる)

3)

著者: Keisuke Nakashima, Atsuo Nishino, Yoshiki Horikawa, Euichi Hirose, Junji Sugiyama, and Nori Satoh

  プレスリリース   

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独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構

マリンゲノミックスユニット 中島啓介博士

TEL: 098-966-8504             FAX: 098-934-5622           E-Mail: keisuke@oist.jp

 

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