入居企業インタビュー:esse-sense

国内最大級の研究者インタビューを運営する株式会社エッセンス CEO 西村勇也氏に、滋賀県に生活拠点を置きながらOISTイノベーションインキュベーターへ入居した理由や、入居によって感じているメリットをお聞きしました。

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貴社の事業内容について教えてください。

私たちは、日本が誇る「研究者」という資産を社会につなげることを事業の主軸としています。具体的には、以下の4つの事業を展開しています。

1. 研究者を紹介するメディア「esse-sense」の運営
2. 研究者を主人公とした大型ビジネスカンファレンスの企画・運営
3. 日本国内の34万人の研究者が誰とどこで何を研究しているかを網羅するデータベースの整備・運営
4. 研究者への経済的・環境的支援として、企業の新規事業立ち上げ時のアドバイザー業の紹介や、ビジネスパートナーや共同研究パートナーを探すマッチング支援

OISTとは、これら全ての事業で関わりがあります。メディア事業では、POC段階から広報の方に協力していただき、OISTの研究者を取材対象として紹介していただきました。カンファレンスでは毎年OIST特別セッションを設けています。データベースにはOISTの研究者の知見も含まれていますし、研究者支援の文脈でもOISTの研究者からの問い合わせに対応しています。 • OISTイノベーションインキュベーターに入居した理由を教えてください。 前職で理研に所属していた時にOISTを訪れたことがあったのですが、その際に感じたスピード感に魅了されました。OISTは比較的小規模で、大学としてもスタートアップ的な性質を持ち、例えばSlackやメッセンジャーを使ったコミュニケーションにも柔軟です。スタートアップ特有のスピード感に対応できる学術機関は他にほとんどありませんが、OISTとならスピード感を持った連携ができると確信し、入居を決めました。創業前に入居を決定し、OISTイノベーションインキュベーターで登記も行いました

OISTイノベーションインキュベーター現在の利用方法を教えてください。

ホットデスクを1席借りていますが、現在は滋賀県に住んでいるため、ワークスペースとしての利用はほとんどありません。ただ、毎年1回、約70名の株主を沖縄に招集し、OISTの会議室を借りて株主総会を開催しています。その際、キャンパスツアーを行い、株主に研究者にとって理想的な環境を体感してもらい、どのように研究者に貢献できるかを具体的にイメージしてもらっています。 

OISTイノベーションインキュベーターに入居するメリットとして感じていることを教えてください。

OISTとの連携が可能であることが最大のメリットです。私たちの事業は、大学や学術機関の協力なしには成立しません。OISTとの連携をきっかけに、京都大学や東京大学など、他の大学との連携にも広がりました。また、OISTの研究者のクオリティは非常に高く、メディアとして読者に新たな発見や驚きを提供でき、メディア自体のクオリティも向上しています。

どんな企業にOISTイノベーションインキュベーターへの入居をおすすめしたいですか?

入居と聞くと、実験環境を必要とする企業が対象と思われがちですが、それだけではありません。研究者と連携したい企業にとって、国内トップレベルの研究施設を活用できることは大きな価値です。 また、ディープテックスタートアップというと、研究成果をベースにした企業というイメージが強いですが、私たちのように工学や自然科学だけでなく、情報科学や社会科学の研究成果を活用するスタートアップも、ディープテックスタートアップに含まれるのではないかと考えています。また、私たちは沖縄を中心に活動しているわけではありませんが、OISTがあるという沖縄の地理的利点を活かして生まれ、沖縄に本社を置く沖縄発スタートアップでもあります。典型的なディープテックスタートアップや沖縄発スタートアップだけでなく、幅をもったディープテックスタートアップ・沖縄発スタートアップが他にも増えることで、OIST周辺のエコシステムがさらに広がり、面白い展開が期待できるのではないでしょうか。

OISTイノベーションインキュベーターに今後期待することがあれば教えてください。

私たちは、メディアとしての公平性を保つため、強い株主を持たないガバナンス体制で運営しています。そのため、一般的なスタートアップのようにベンチャーキャピタルからの資金調達は行わず、複数の手法で資金を確保していますが、これが大変で、経営者の多くの時間が割かれています。OISTがスタートアップへのベンチャーキャピタルの紹介に力を入れていることは承知していますが、銀行やフィランソロピスト、顧客となりうる企業など、ベンチャーキャピタル以外の資本との接点づくりも支援していただけると非常に助かります。

(取材日:2024年7月29日)

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