沖縄から世界へ、オープンエネルギーシステムの挑戦
OISTにおいて2014年最初のシンポジウム、「第1回オープンエネルギーシステム国際シンポジウム」が開催されました。シンポジウムは1月14日・15日の2日間にわたってソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)との共催で行われ、約150名の参加者が会場を埋めつくしました。シンポジウムではOISTオープンバイオロジーユニットの北野宏明教授およびSony CSLと県内事業者の沖創工が中心となってOISTキャンパスで進めているオープンエネルギーシステム(OES)実証試験の現状や、スマートコミュニティー構築に向けての国内外の取り組みを中心に、行政や産業界、学会など多方面からの報告と討論が行われました。
今日私たちが直面しているエネルギー問題の課題である原子力の安全性、予想外の事態や経済格差に対応できるエネルギーシステムには、何が求められるのでしょうか。シンポジウムはこの問いかけから始まりました。OESは、その問いに答える一つのモデルと言えます。北野教授率いるチームは、昨年9月から複数のOIST教員宿舎で試験を始めています。そこでは、各家庭の屋根にOESソーラーパネルを取り付け、各戸の物置部屋に設置したエネルギーサーバーと呼ばれる電力管理装置と新規開発された蓄電池を内蔵した設備に接続し、これらのエネルギーサーバーを直流電流(DC)マイクログリット状に繋げることにより、家庭間で電力を融通し合うことが可能となります。日照量の違いに左右されることなく、また住人が不在にしがちな家で発電された電力を、常に人が家にいる家庭に回すなど、様々な生活パターンの人たちに対して安定した電力の確保が期待されます。
シンポジウムでは、OESを始めとする太陽光・風力・水力・地熱に由来する地産地消の再生可能エネルギーシステムに加え、スマートコミュニティーの構築について、有効性と展望が示されました。スマートコミュニティーは、電力の最適活用を可能とする次世代送電網を基盤とした街のことで、エネルギーの需要と供給をITを活用することでモニタリングし、電力会社と家庭間、双方向の電力のやり取りを調節します。再生可能なエネルギーとこれらのシステム利用への転換は、環境問題や健康維持に寄与するところも大きいと考えられています。よってこれらのエネルギー源やシステムは、先進国の次世代インフラ整備に留まらず、発展途上国においても重要な役割を果たすと期待されています。日本では現在、4つの都市でスマートコミュニティーの実証試験が始まっています。今後も自治体や市民を巻き込むこれらのシステムの普及には、効果を示し、企業やコミュニティーの理解を得ることが不可欠であると強調されました。
「力を合わせることで世界を変えることが出来ると思う。沖縄から世界へ、掛け声で終わらず行動に繋げていきましょう!」と北野教授は呼びかけました。その上で、次世代エネルギーシステムは環境・経済・日々の暮らしなどさまざまな分野にまたがる重要な課題であること、またその構築には分野の垣根を越えた協力が必要であることを同教授は強調しました。シンポジウムの最後にOISTのジョナサン・ドーファン学長は、OESの取り組みが、基礎研究と技術開発を同時に行うユニークなプロジェクトであり、OISTが次世代エネルギーシステムの研究開発プラットホームとして、今後も多くの研究機関や企業とのパートナーシップを組んでいきたいとしめくくりました。
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