腸内細菌やゲノムなどの網羅的解析を AIとロボットで自動化するプロジェクトを開始

沖縄科学技術大学院大学( 以下OIST、学長 ピーター・グルース、沖縄県恩納村)および株式会社コランダム・システム・バイオロジー(以下コランダム・システム・バイオロジー、代表取締役 大竹秀彦、東京都港区)は、2024年度までに腸内細菌やゲノムなど多角的な網羅的解析を高度に自動化し、疾病の予測や治療法の発見を目指す研究プロジェクトを開始しました。

OIST and Corundum Systems Biology to Jointly Establish Fully Automated Multi-omics & Microbiome Data Analysis Lab

共同プレスリリース

沖縄科学技術大学院大学( 以下OIST、学長 ピーター・グルース、沖縄県恩納村)および株式会社コランダム・システム・バイオロジー(以下コランダム・システム・バイオロジー、代表取締役 大竹秀彦、東京都港区)は、2024年度までに腸内細菌やゲノムなど多角的な網羅的解析を高度に自動化し、疾病の予測や治療法の発見を目指す研究プロジェクトを開始しました。第一期の3年間で、高度自動化網羅的解析システムを開発し、「ゲノミックス」と呼ばれるゲノムの網羅的解析や「メタボローム」と呼ばれる代謝関連因子の網羅的解析など複数の網羅的解析を行う「マルチオミクス解析」および細菌叢(マイクロバイオーム)の網羅的解析などの研究を行います。

これは、人工知能とロボットを用いて高度に自律的な科学的発見を可能とするシステムを開発するグランドチャレンジの一環であり、その第一歩として腸内細菌などを中核とした完全自動化された複合的網羅的解析システムの開発を行うものです。この共同研究から、大規模なヒト・マルチオミクス研究が可能となり、人間の健康と長寿のための新たな発見へつながることが期待されます。

本プロジェクトは、"Multi-omics Analysis Platform for Nobel Turing challenge* to develop AI scientists.(AI科学者開発に向けたノーベルチューリングチャレンジ*におけるマルチオミクス分析プラットフォーム)"の頭文字を取って「MANTAプロジェクト」と命名されました。本年4月から3年間で総額3億100万円の予算が充てられ、そのうちの2億3710万円は、コランダム・システム・バイオロジーが出資することになります。MANTAプロジェクト ラボはOIST内に設置され、 OIST統合オープンシステムユニットを率いる北野宏明教授(アジャンクト)が本プロジェクトの研究代表者を務めます。

MANTA プロジェクトラボでは、実験室の完全自動化により、患者のゲノミクス(ゲノム配列の網羅的解析)、トランスクリプトミクス(遺伝子転写状態の網羅的解析)、プロテオミクス(タンパク質の網羅的解析)、メタボロミクス(代謝因子の網羅的解析)などの各種オミクス情報や、マイクロバイオームの網羅的解析結果などの膨大な情報を取り扱うマルチオミクス研究が大きく加速することになります。本プロジェクトでは、2024年度までに全自動化を開始し、バイオデータの品質と再現性を標準化し、国や地域を超えた研究を可能にする予定です。

本共同プロジェクト「MANTAプロジェクト」の2つのミッション:
データを標準化して、世界中の研究に適用できるようにすること: 現在、表現型の研究は世界各地で行われており、ヒトの生物学的データの収集・解析が日々行われています。同プロジェクトの研究成果を標準化することにより、全世界で同等の質のヒト生物データを大量かつ迅速に、さらに最小限のコストで解析することが可能となります。つまり、マルチオミクス研究の規模を拡大し、研究を深く掘り下げることが可能となり、現在行われている研究や新たな研究で世界中の研究者と共同研究を行うことが可能となります。

個別化予防医学分野での新発見: MANTAプロジェクトラボによるバイオデータ(生体情報)の標準化によって科学的発見への道が開かれ、環境、生活習慣、人口統計などの要因が人間の健康にどのように影響するかが明らかになる可能性があります。人工知能(AI)解析によって得られる知見から、病気の原因の解明、個別化医療の発展、新しい治療法の開発、健康長寿の実現につながることが期待されます。

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*ノーベルチューリングチャレンジ:北野宏明教授が中心となって進める「ノーベルチューリングチャレンジ」は、「2050年までに、ノーベル賞レベルの科学的発見を高度な自律性を持って行うことができる「AI科学者」を開発する」という目標を掲げたグランドチャレンジで、国際的な共同研究プロジェクトとして立ち上がり始めている。これは、どうしたらノーベル賞やそれ以上のインパクトを持つ科学的発見をする高度に自律的な人工知能システムを作ることができるか、そして、そのようなシステムは、本物の人間の研究者と区別がつかないのか、全く違う知性の形を見せるのか、という二つの問いに対する挑戦となる。ノーベルチューリングチャレンジを通じて、科学の活動と社会に史上最大の改革を引き起こすことが期待される。

プロジェクト関係者の言葉

北野宏明教授
「これは、科学的発見をAIやロボティクスで高度に自動化する、”AI科学者”の開発の第一歩となります。マルチオミクスの自動解析ラボを設立することで、この目標に向けて重要な第一歩を踏み出すことになります。AIを活用することで、高度に自律的なハードウェアとソフトウェアのモジュールがさかんに相互作用することでタスクを達成し、重要な科学的発見にたどり着くことができるようになります。この施設を通じて、健康の複雑な要素や、生活習慣、ゲノミクス、マイクロバイオームなどの要素がどのように相互作用しているかが理解できるようになると考えています。このラボがOISTだけでなく、世界の科学者にとって貴重な資源となることを願っています。」

コランダム・システム・バイオロジーの大竹秀彦代表取締役社長
「コランダム・システム・バイオロジーは、世界のマイクロバイオーム研究とその事業化を支援することを目的に設立されました。マイクロバイオーム分野は、今後重要な発見が起こる余地があると信じています。そのような中で、表現型の研究を深く掘り下げることによって、いずれ私たち人間の健康維持や長寿に役立つ多くのことが明らかになることでしょう。OISTは、起業家精神を持っている点と網羅的研究を行う点で弊社と一致しています。また、学際的な最先端の研究を国境を越えて行うという、一貫した研究姿勢を貫いています。さらに、OISTが拠点とする沖縄県は、アジアとのアクセスも良く、今後海外の国々との連携も視野に入れている弊社にとって、理想的な立地となっています。」

OISTのギル・グラノット・マイヤー技術開発イノベーション担当首席副学長
「OISTは、この非常に重要な研究においてコランダム・システム・バイオロジーと提携できることを喜んでいます。この共同プロジェクトに携わる研究チームは、自動解析システムの設立により、人間の健康、長寿、幸福に関する新しい科学分野と、その研究成果に基づく新たなビジネスチャンスが生まれると期待しています。」

MANTAプロジェクトラボについて

OISTの北野宏明教授(非常勤)が主任研究員、東京工業大学の山田拓司准教授がプロジェクトリーダーを務め、その他3名のポスドク研究員が本プロジェクトに携わります。

株式会社コランダム・システム・バイオロジーについて

コランダム・システム・バイオロジーは、次世代のライフサイエンス技術や人類の健康と生活の質を向上させる可能性を秘めた重要な分野であるマイクロバイオーム分野におけるイノベーションの拠点(Innovation-Hub)となることを目指しています。日本を拠点とし、マイクロバイオーム分野を中心に、新規事業開発、生体情報データベースおよびデータ解析プラットフォームの開発、研究開発を促進・加速するための助成金の提供の3つの事業を展開しています。同社は、2020年4月に東京都にて設立し、世界的に著名なマイクロバイオーム科学者であるワイツマン科学研究所のエラン・シーガル教授が科学顧問委員会の委員長を、代表取締役を大竹秀彦が務めています。

https://www.csb.co.jp/

 

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