より速くより正確な津波予測を可能に

トンガで火山噴火が起きた際の大気と海洋の相互作用を研究し、高リスク地域の予測と津波警報システム改善に役立つシミュレーターを開発しました。

2022 Tonga explosion

2022年1月15日、トンガのフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山が噴火し、大気中と海中に大量のエネルギーが放出され、太平洋全域に津波が発生しました。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の衝撃波・ソリトン・乱流ユニットの研究チームは、この噴火の際に発生した大気と海洋の乱れを研究し、現行の津波早期警戒システムの改善に役立つシミュレーターを開発しました。本研究論文は、科学誌Journal of Fluid Mechanicsに掲載されました。 

本研究論文の筆頭著者である同ユニットの技術員スティーブン・ウィンさんは、「警報システムに役立つ正確な予測をするには、大気の波が時間の経過と共にどのように変化するかを把握することが重要です」と述べています。 

トンガの火山噴火によって引き起こされた津波噴火により大気中に形成された幅数百キロメートルに渡る空気の圧力波の影響も受けていました。この大気中の圧力波は、まず上方に移動して、次に外側に広がり、平均時速1141キロメートルで移動していました。これは、海の深くを移動する通常の津波を時速約400キロメートル上回る速度です。この津波は、地球を一周して遠くの地中海にまで到達しました。衝撃波・ソリトン・乱流ユニットを率いるイミル・トゥベール准教授によると、このような津波が現代的な機器で詳細に記録されたのは、今回の津波が初めてのことです。 

2022年のトンガ火山噴火で発生したような空気の圧力波によって引き起こされる津波と、それが地球観測衛星によってどのように検出されたかを示すアニメーション。

大気波は、海上を伝播する際にその下の海水に力を加えるため、通常よりも速い速度で津波が移動します。同ユニットのポストドクトラルスカラーであるアデル・サルミエント博士によると、太平洋で発生した津波は、通常は大陸に阻まれて地中海には到達しませんが、大気波は陸地に遮られることなく、その上を移動するため、今回の津波は世界中に波及し、通常の津波よりも広い範囲に影響を及ぼしたとのことです。

2022年のトンガ火山噴火のシミュレーション。OISTで開発された新しいモデル(右)を用いて、空気の圧力波と発生した津波を全球赤外線衛星データ(左)と比較した。

研究チームは、トンガの火山噴火の測定値を用いて、開発したシミュレーターの検証を行いました。パリのフランス国立工芸院のNicolas Alferez博士と共同開発した最先端のコード「dNami」を使用し、OISTのスーパーコンピュータで今回の噴火発生時の地球の様子を素早くシミュレーションしました。このコードを使用すると、津波の到達よりも速く高解像度のシミュレーションを行うことができるため、今後の警報システムを改善するのに役立ちます。トゥベール准教授は、特定地点での波の到達時間や高さをより正確に予測し、リスクの高い地域を迅速に特定できるようになったと説明しています。詳細はこちらから。 

さらに、ハリケーンや台風もまた、大気に乱れを生じさせて海洋に作用し、海岸線に影響を与えるような大きな水位変化を引き起こすことがあります。トゥベール准教授は、同シミュレーターを使用すると、典型的な嵐の条件下で海面が一定量変化した場合に海水の流れが海岸に近づくにつれてどうなるかを調べることも可能であると述べ、それによって嵐の際の高潮に備えるためにどのような防波システムを設置すべきかを判断できると説明しています。 

この予測シミュレーターを活用することで、沿岸地域で津波に対して適切な備えや対応が行われ、命を守ることにつながると期待されます。 

広報・取材に関するお問い合わせ
報道関係者専用問い合わせフォーム

シェア: