沖縄県産難消化米開発プロジェクトがフード・アクション・ニッポン アワードを受賞
11月19日、沖縄科学技術大学院大学(OIST)植物エピジェネティクスユニット代表の佐瀬英俊准教授が取り組む「生活習慣病を予防・改善する沖縄県産高機能米開発」プロジェクトが、フード・アクション・ニッポン・アワード部門優秀賞(研究開発・新技術部門)を受賞しました。同アワードは、フード・アクション・ニッポン推進本部事務局および農林水産省より、国産農林水産物の消費拡大と日本の食料自給率向上に寄与する事業者・団体に授与されます。
本プロジェクトの主な目的は、「アミロモチ」の新品種米で沖縄の気候に適したものを開発することです。既存米の多くは、消化されやすいデンプンを多く含んでおり、米を主食とする食習慣が近年の肥満や糖尿病の増加に繋がっています。アミロモチは、ヒトの体内でブドウ糖に分解されにくい難消化性デンプンを含む特別な品種です。難消化性デンプンは食物繊維のような機能を持っており、食後の血糖値上昇を遅らせ、消化管機能を正常に保ちます。
「私たちが開発した米なら、食生活やライフスタイルを変えることなく体重を減らすことができます」と、佐瀬准教授は言います。確かに夢のような話ではありますが、本当にそんなことが可能なのでしょうか。それを裏付ける結果が、予備臨床実験で出ています。マウスを用いた実験評価では、難消化米を摂取した場合、一般の白米を摂取した際に見られる血糖値の上昇は示されませんでした。高脂肪食にアミノモチ米を組み合わせた食事を与えたマウスでは、コレステロール値の低下と肝臓への脂質蓄積の減少が確認されました。佐瀬准教授の研究チームが開発した県産新品種米が将来日本や世界中で実際に生活習慣病の改善に役立つかもしれません。
この画期的な難消化米研究は初めから順風満帆だったわけではありません。30年前に九州大学で開発されたアミロモチは、従来のものと比べて食感も硬く、味も劣っていました。また、難消化性を持たない同様な品種の米であるうるち米と比べるとアミロモチの収穫量は6割程度の収量という課題がありました。当時、食料の増産と高いエネルギーの摂取を求める食品市場にとって、 その開発に注力していくだけの動機付けが十分ではありませんでした。しかし今日では、2型糖尿病などを含む生活習慣病が現代人の主な死亡原因の一つとなっており、病気を防ぐ有効手段として難消化米の価値が高まっています。
佐瀬准教授の研究チームは伝統的な品種の選抜法と先端的科学を組み合わせ、沖縄の亜熱帯気候でも高い収穫量が得られる難消化性の新種米を開発しました。分子解析とゲノム解析を行うことで選抜作業の効率性が向上し、人工気象器中の栽培においては1年間に5回の収穫に成功しました。これら全て2012年の本プロジェクト開始から今年の圃場実験までわずか3年に満たない期間で達成されました。通常は8年以上の開発年数を要することから、いかに優れた成果を上げているかが分かります。
本プロジェクトの最終段階では、食品製造と商品の普及に取り組みます。試食をした人からは、「コシヒカリ」の様に甘くもちもちとした食感と異なりパサパサ感があることから、「おいしくない!」という反応が返ってくることもあります。そこで、難消化米を米粉にして、麺や焼き菓子、パン、あるいは天ぷらの衣として使われる小麦粉の代わりに使います。こうすることで、食品の味を損なうことなく難消化米が持つ有効成分の効果を保つことができます。現在、難消化米入りの小麦粉で作ったフードバー(栄養補助食品)を患者に提供する臨床試験を、琉球大学医学部附属病院と共同で進めています。数年後には、食事制限を必要としない夢のような減量法がここ沖縄で実現するかもしれません。
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