MarVeLワークショップの開催 -海域を越えたつながりを目指して
5月10日から12日にかけて、海域を超えて海洋生物が海流によってどのようなパターンで結ばれているか(コネクティビティ)を調べ、その予報システムを構築することをテーマとしたMariana Vent Larvae (MarVeL) ワークショップが沖縄科学技術大学院大学(OIST)で開催されました。OISTと米国国立科学財団(NSF)の共催によって行われた本ワークショップには、マリアナ海溝の熱水噴出孔に関する研究の連携構築に向けて、日本、米国、フランスの研究員らが集結しました。この研究の主たる目的は、熱水噴出孔付近に住む生物の幼生が、他の噴出孔へ移動する海流輸送メカニズムを明らかにすることです。
熱水噴出孔はいわば深海の温泉で、海底から熱水が湧き出ています。周囲の冷たい海水域に比べ、熱水噴出孔付近は水温が生息に適しているため生物活動が活発で、微生物や羽織虫(チューブワーム)、魚、エビ、カニなど、多様な生物群の温床となっています。ワークショップを主催したOIST海洋生態物理学ユニットの御手洗哲司准教授によると、これらの生物は成長すると、生息域から広く移動することはありませんが、生まれて間もない時期(幼生期)には海流によって輸送され、新しい定着先で成育すると信じられています。同教授は、「運が良ければ、これらの幼生は別の噴出孔にたどり着くことが出来ます。彼らが何百キロにもわたる距離を漂流することも明らかになりつつあります。」と、説明しています。
御手洗准教授と共に本ワークショップを主催した米国マサチューセッツ州のウッズホール海洋研究所(WHOI) ステイス・ボーリュー(Stace Beaulieu)博士は、MarVeLワークショップの主な目的のひとつは、現在進められている研究プロジェクトに、地球化学や微生物学、集団遺伝学といった異なる分野の手法をどのように取り入れられるか模索することであったと述べています。御手洗准教授の研究ユニットは主に沖縄トラフにおける研究をおこなっており、米国の研究員らは、地質学的に活発な海域の一つとして知られ、比較的アメリカ大陸から近い東太平洋海嶺を中心とした調査を進めてきました。本ワークショップをきっかけに、今後は研究助成金獲得のための計画を共同で策定し、これまであまり研究の対象となっていないマリアナ海溝の調査に乗り出す予定です。
ボーリュー博士は、「科学は、国際的な連携によって一層興味深いものとなり、より多くの成果を得ることができます。」と述べています。また、ボーリュー博士は、研究者による問題への取り組み方は個々の文化に影響されるので、様々な国の研究者が集まれば、互いに多くのことを学ぶことができると説明してくれました。「私たちの間では、疑問の問いかけ方すら違います。」と、国際的な共同研究の利点を語ってくれました。
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