イノベーションを担う科学者:OISTに菅原寛孝教授が着任
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、象牙の塔になるのではなく、沖縄の地域経済の発展をもたらす触媒として機能することを目的として設立されました。しかし、科学的発見を産業化し、経済成長につなげていくことは一筋縄ではいかず、同時に、学術研究に携わる人が思いつかないようなある種の考え方を必要とします。そこで抜擢されたのが、この度OIST学長特別顧問として新たに着任した菅原寛孝教授です。高エネルギー物理学者として、これまで日本、米国、欧州の様々な研究機関で研究者として活躍するとともに、マネージメントにも携わってきた菅原教授は、ここOISTでイノベーション創出に向けた取組を遂行します。
菅原教授は、「先進国、特に米国における大学の役割が変わってきています。」と述べ、70年代までは研究型大学の主な2つの役割は、学生の教育と基礎研究を行うことだったと説明しています。その後10年間にわたって、米国の一流大学はイノベーション、つまり、産学連携により科学的発見を産業化するという3つ目の役割に取り組み始めましたが、「残念なことに、日本の大学の多くはこの3つ目の役割を明確に認識していません。」と、菅原教授は言います。同教授は、OISTが日本における他の大学の手本となり、意識改革を進めていくことに期待を寄せています。
菅原教授は、産業界と真の協力関係を構築することは容易でなく、粘り強さと失敗を恐れない精神が必要であるとした上で、OISTスタッフやOISTとの連携に関心を持つ関係者に気軽にオフィス(A107)を訪ねてもらい、研究や研究者のニーズについて率直に意見を交わしたいと話しています。
菅原教授は東京大学で学士号、修士号、博士号を取得後、国内外の様々な機関で研究を行いました。30年近く在籍した高エネルギー加速器研究機構(KEK)では教授を務めた後に、同機構の機構長に就任しました。OIST着任前は、日本学術振興会の海外研究センターの1つであるワシントン研究連絡センターのセンター長を務めました。OISTでは、イノベーション文化の育成に加え、ジョナサン・ドーファン学長を支え、政府や他大学との緊密な関係の構築を進めていきます。4月6日付けでOISTの学長特別顧問兼ディスティングィッシュトプロフェッサーに就任した菅原教授。同教授が関わる研究プロジェクトは物理学のみならず、脳イメージング、集団遺伝学、気候変動学、と多岐にわたります。
ショーナ・ウィリアムズ