OIST発のスタートアップ、淡路島の渇水課題に取り組む

気候変動により渇水が深刻な淡路島で、EFポリマーが新たなプロジェクトに参画しました。

OISTのスタートアップ・アクセラレーター・プログラムから生まれた、「EF Polymer株式会社(以下EFポリマー)」はこの度、アグリテック系のスタートアップ「カルティベラ」との共同で、兵庫県淡路島の渇水対策に取り組むプロジェクトを開始しました。

EFポリマーは2019年にOISTのスタートアップ支援のプログラムを通して設立され、主に農業向けの環境に優しい自然由来のポリマー開発を行っています。沖縄県内では農作物の残渣を活用した液体肥料の開発にも取り組んでいます。また、昨年末からは沖縄県内でオリオンビール株式会社と共同でビールの余剰酵母を使った有機液体肥料を開発しています。今回、淡路島で開始するプロジェクトでは、保水力の高いポリマーを渇水課題のある農地で活用することで、水資源の効率的な運用を目指します。

近年、淡路島では冬場に雨が降らないことで大規模な渇水が起き、農産物の収穫量が減少するという問題が起こっています。一方で、雨が降る日には極端に降水量が多いことで農作物が根腐れすることも懸念されています。今回のプロジェクトでは、淡路島南部でたまねぎやトマトなどの生産を行う株式会社アクアヴェルデAWAJIの農地の一部で実証実験を行います。

アクアヴェルデAWAJI

実験では、露地裁倍の農地でEFポリマーが開発した自然由来のポリマーを適用するのと並行し、ハウス栽培プラントではカルティベラ社の膜式栽培技術を実験することで、総合的な渇水対策に取り組みます。農地に適用されたポリマーは保水力が高く、ゆっくりと土の中で水分を放出することができるため、たとえ雨が少ない時期でも農地を潤す効果を期待できます。また、激しい雨が降った際にはポリマーが素早く水分を吸収することで、農地に水が溜まったままの状態を防ぐ可能性があると考えられています。

カルティベラ社は自社でも農業生産法人をもち、高密度繊維を使った膜式栽培農法など、環境適応型の新しい農業技術の開発を行っています。膜式栽培とは特殊繊維を蓄積させた人口培地シートを用いて、根域空間の湿度をコントロールすることにより、空間を疑似土中として植物の湿気中根を意図的に発生・培養させる技術で、少量の水分かつ無排水での作物栽培が可能となります。同社は今年2月からOISTのインキュベーター施設に入居しており、今回のプロジェクトはOISTを拠点とした二社のスタートアップがコラボレーションした初めての事例となります。

カルティベラ社の膜式栽培技術
カルティベラ

EF Polymerの有機ポリマー

淡路島で農地を運営する、アクアヴェルデAWAJI 代表取締役の豊田公隆氏は「近年、淡路島で極端化している気候変動の課題に対して、ポリマーや膜式栽培など新しい技術を取り入れることでどのような効果が得られるかを楽しみにしています」と語ります。

今回のプロジェクトを推進するチームは、初回のポリマー適用と膜式栽培技術の効果実証を測りながら、今秋には苗床への適用実験を行う予定です。

EFポリマーの創設者兼CEOのナラヤン・ガルジャール氏は「今回のプロジェクトを通して、私たちのポリマー製品の有効性を探り、異なる気候や地域における可能性を見極めたいと考えています。農家の方が抱える、多くの渇水問題を解決するためには彼らに持続可能な解決策を提供できることが最善の方法です」と述べています。

 

 

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