OISTで宇宙の国際会議
OISTではこれまで各種の会議施設を様々な学会や研究会などに提供してきましたが、昨年5月に完成した500名収容可能な講堂を利用する初めての大規模な国際会議「International Conference on Cosmic Microwave Background(宇宙背景放射に関する国際会議 CMB2013)」が本日6月10日から14日までの日程で始まりました。
大学が地域にもたらすメリットの一つは、わくわくするような第一線の研究を進めている研究者が世界中から集まって最先端の科学知識や研究の手法についての議論を行うための会場が提供されることです。
研究者にとっては、日頃の環境から離れて異なる視点で自らの研究を振り返るきっかけになるとともに、世界中に散らばっている同じ分野の研究者と意見を交わしたり、新しいアイデアについて検討することは、時に全く新しい研究手法についての大きなブレークスルーとなることがあります。
我々の宇宙は今から約137億年前にビッグバンと呼ばれる大膨張によって、目に見えないほどの小さな領域が高温高エネルギーの状態から現在の広大な領域にまで広がったと考えられています。この時、宇宙を満たしていた膨大な光のエネルギーは、宇宙の膨張とともに温度が下がって、宇宙のあらゆる方向から降り注ぐマイクロ波の電波となって現在も地球に降り注いでいます。1965年にアメリカのベル電話研究所の電波科学者ペンジャスとウィルソンが観測したこの宇宙背景放射が、宇宙がビッグバンで始まったことの証拠と考えられています。
観測技術が進歩するにつれて、この宇宙背景放射をさらに詳しく調べることによって我々がまだ見たことの無い宇宙のビッグバン初期の現象の痕跡を直接観測することができるのではないかと研究者たちは考えるようになりました。本国際会議の主催者の一人、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の羽澄昌史教授は「宇宙マイクロ波背景放射を丹念に調べていくと、ビッグバンが始まる前の原始宇宙で重力がどのような役割を果たしていたかを観測できるようになると考えられています。チリのアタカマ砂漠の高地など世界各地で、また、プランク衛星、WMAP衛星、さらには次世代型人工衛星を使って宇宙マイクロ波背景放射を調べる研究が進められています。これらの研究プロジェクトについての新たなアイデアが沖縄のこの地で生まれると期待しています。」と述べました。
本会議には宇宙論の専門家である佐藤勝彦自然科学研究機構長や小松英一郎マックスプランク天文学研究所長、プランク衛星、WMAP衛星、気球実験の専門家など、世界第一線の研究者が参加しています。
冒頭ご挨拶に立ったOISTのジョナサン・ドーファン学長は、「国際的にご活躍しておられる研究者の皆様を本学にお迎えすることができて光栄です。かつてスタンフォード大学で素粒子実験と加速器の研究を進めていた研究者として、本会議のトピックスには強い関心を持っています。OISTは教育研究の新たなモデルを築くことをめざしています。本学には学部が無く、研究機器やワークスペースは共用化されており、オフィスも専門分野ごとに分かれていません。こうした環境は、様々な分野の研究者や学生たちが学際的研究を育む機会を生み出しています。OISTのキャンパスツアーやご滞在中に、是非これら本学の特徴を御覧になってください。沖縄、そして本学へようこそ。」と語りかけました。