より良い社会の実現に向けてイノベーションを加速せよ!

大学発のイノベーションを加速することをテーマにOISTで国際シンポジウムが開かれ、グローバルに活躍する有識者らが活発な意見交換をおこないました。

 新しい技術が次々と生まれ、刻一刻と変化する世界で、イノベーション創出や社会的発展に大学がどう関わっていくか―多くの高等教育機関では、その役割が改めて見直されています。3月22日、沖縄科学技術大学院大学(OIST)では、世界中から有識者が集い、イノベーションおよび地域の経済成長を促す大学の役割について様々な意見が交わされました。

 「大学の使命は、人類に資する新たな知見を生み出すことです」と、OISTのジョナサン・ドーファン学長は言います。

 フォーラムは4つのセッションから成り、16名のスピーカーが大学におけるイノベーションを誘発・評価・促進するための方策について模索し、最後にパネルディスカッションが行われました。また、シンポジウムの冒頭では、日米それぞれのイノベーション・システムについて熟知している、アメリカ国立科学財団元理事長リタ・コルウェル博士と、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の原山優子議員が基調講演を行いました。

 コルウェル博士はイノベーションについて、科学技術の進歩と成長の原動力とみなされている一方で、新製品や技術を市場に送り出す際の障壁にもなりうるという否定的な意見があることも認めました。同博士はまた、イノベーターは自らの創造物が市場で受け入れられるようになるためには、そこに存在する巨大な障壁を打ち破る必要があると指摘しました。さらに博士は、人文科学と社会科学を自然科学と融合させた包括的で想像力を掻き立てる教育を学生に提供することが重要であると強調しました。

 「イノベーションとは言い換えれば創造性のことです。新しいものを生み出す思考力と創造力を養う教育を若者に提供することができなければ、次世代にまたがる持続的発展は見込めないでしょう。」と、コルウェル博士は語りました。

 これに関連し、原山議員は「イノベーションの中核に社会を位置づける必要があります」と説明しました。また、変化に富んだ世の中に対応するためには、産官学一体となって積極的に協調・対話・連携を進めていくことが不可欠であると同議員は主張し、目的達成のためには大学と諸機関との関係構築の重要性を指摘しました。

 「大学の役割は人々に教育と力を与え、つながりを持たせることです」と、原山議員は言います。「何と言っても重要なのは人です。科学者に限らず多様な人材間の連携が求められているのです」。

 基調講演に続き、イノベーションの仕組みや評価、利害関係者についての討議がおこなわれました。イノベーションの仕組について語った講演者全員に共通していたことは、研究者であれ、潜在顧客であれ、将来のイノベーターであれ、それぞれ異なった能力をつなぎ合わせることの重要性を強調したことです。その関係性が、社会および顧客のニーズを踏まえた技術移転に欠かせないものだと講演者は異口同音に述べています。

 イノベーションの評価については、大学によるイノベーション創出の成功を測る難しさに触れ、その要因は測定基準の欠如にあるとし、講演者は各々の経験や文化的背景に基づいた評価指標を紹介しました。その中で、2名の講演者がベンチャー企業の発足数と成功度が重要な指標となりうると述べ、起業家精神に対する積極的な奨励と支援をおこなうべきであると指摘しました。

 最終セッションでは、イノベーション活動に介在する様々な利害関係者に焦点をあてた討議がおこなわれました。講演者は、産官学ならびに資金提供者間のバランスと係わり合いについて、異分野間の一層の連携強化が求められていると、会場に呼びかけました。

 イノベーションを加速するための3つの要素である「人材」「繋がり」「連携能力」がシンポジウム中に何度も繰り返されるとともに、より多くの人々にイノベーションを訴求するため、情報を共有することの重要性も唄われました。

 本イベントの司会を務めたスタンフォード大学のリチャード・ダッシャー教授は、「産学連携が強く求められています」と述べたうえで、「今後も対話を重ね、それぞれの環境特性に適した計画を策定することが重要です」と語り、イノベーション加速に向けた最適な取組みは決して画一的ではないことを強調しました。

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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