生物医学分野のワークショップでOISTと京都大学が連携を強化
11月2日から4日にかけて、沖縄科学技術大学院大学(OIST)において第1回OIST-Kyoto University Joint Workshopが開催されました。新たに企画されたこのワークショップは今後も継続的に行われていく予定で、両大学間の交流の場となるほか、研究における連携強化にも繋がることが期待されます。
本年の共同セミナーは「Challenges in Biomedical Complexity(生物医学的複雑性への挑戦)」をテーマに行われ、OISTと京都大学が行っている神経科学、免疫学、分子生物学などの分野における重要な研究が取り上げられました。その中で、分子の働きから私たちの身体の仕組みにまで及ぶ生物医学の変わりやすく、不確実で、曖昧な性質を解明することの難しさに特に焦点が当てられました。
また、ワークショップは沖縄と京都の伝統的な芸術文化を象徴する織物をテーマに行われました。会場の外には京都の織物である「西陣織」とともにワークショップのポスターの背景にも起用された沖縄の織物「知花花織」が展示されました。
主催者の一人で、以前は京都大学に勤務していたこともあるOIST膜協同性ユニットを率いる楠見明弘教授は、開会の挨拶でこれらの織物が象徴する意味を説明しました。
「このワークショップの目的は、生物医学的複雑性に対する関心を共有する研究者たちに議論の場を提供することです。このポスターの織物のように、科学者のネットワークを織り上げていきたいと考えています。」
楠見教授はさらに、ワークショップの実現に尽力した京都大学の渡邉大教授、竹内理教授、OISTの山本雅教授の3名の共催者に謝辞を述べました。
次に、講演に先立って京都大学プロボストの岩井一宏教授が挨拶を述べ、今後の共同研究につながる科学交流の重要性を強調しました。
「このワークショップをきっかけに、京都大学とOISTの新たな関係が築かれていくことを願っています。」
3日間にわたって行われたワークショップでは、京都大学とOISTの17名の教員が交互に最新の研究成果を発表しました。各講演の後には簡単な質疑応答の時間も設けられ、研究者たちは議論を深めたり、新たなアイデアを検討したりしました。講演で取り上げられた研究テーマは、免疫細胞の役割、成長因子の伝達、ポックスウイルスの組み立て機構など、生物医学分野の広い範囲に及びました。
さらに、各機関から6名ずつ、計12名の有望な若手研究者も短い講演を行い、それぞれの研究内容を紹介しました。
初日の最後には夕食交流会が開催され、OISTのピーター・グルース学長兼理事長と京都大学の湊長博総長も出席しました。
グルース学長は、次のように述べました。「京都大学とOISTという日本を代表する2つの大学がこの場に集い、生物医学的複雑性に関して意見交換する機会を得られたことを大変嬉しく思っています。私たちは、互いに学ぶべきことや、得るものがたくさんあると思うので、皆さんにお集まりいただき、大変嬉しく思います。今後もこのような会合が数多く開催されることを強く願います。」
湊総長は、次のように述べています。「私個人としても、この素晴らしいイベントに参加できて光栄に思っています。近年の生命科学技術の進歩には目を見張るものがありますが、私たちのグローバル社会は、新たなパンデミック、精神疾患、さまざまな加齢関連疾患など、多岐にわたる医療・健康問題に直面し続けています。ですから、私たちは国際社会の福祉に貢献するために、一層努力していかなければなりません。OISTと京都大学が緊密に連携することによって、科学分野での相互発展につながるだけでなく、私たち自身や私たちの健康や生命を絶えず脅かす問題へ対処し、克服するための解決策を発見することができると信じています。」
2日目の講演終了後、京都大学の参加者はOISTキャンパスを巡り、OISTの研究者が利用できる最先端の研究施設を見学しました。
3日目のワークショップでは、OIST研究担当ディーンのニコラス・ラスカム教授と京都大学の松田道行教授が閉会の挨拶を述べ、両大学の関係継続を祈念して幕が閉じられました。
両大学は、生物医学分野に焦点を当てた第2回ワークショップを京都大学にて開催することで合意しました。次回はより具体的な研究テーマに焦点を当て、さらに多くの若手研究者が参加する予定です。また、来年は数理科学をテーマとした合同ワークショップも開催する計画があります。