ジェフ・ウィッケンス教授がHFSPの研究助成金を獲得

研究資金面ばかりでなく、新たな研究分野の開発にも貢献する助成金を受賞しました。

  この度、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)2019年の助成プログラムの審査結果が公表され、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のジェフ・ウィッケンス教授が率いる神経生物学研究ユニットの研究チームが、競争率の高い助成期間3年のプログラム助成金を獲得しました。研究チームは、米国、イスラエル、日本の研究者で構成されており、今後3年間で100万米ドルの支援を受け、記憶や学習に関わる神経伝達物質であるアセチルコリンとドーパミンの研究を行う予定です。 

 

沖縄科学技術大学院大学(OIST)神経生物学研究ユニットのジェフ・ウィッケンス教授とポストドクトラルスカラーのジュリ・シュイナール博士。 

  ウィッケンス教授は研究計画について、次のように説明しています。「実験動物であるマウスが課題作業をしている瞬間に、脳内でアセチルコリンとドーパミンがどのように相互作用しているかを知りたいのです。 そのために遺伝子操作して作成した新たな蛍光センサーを用いて 、この2つの神経伝達物質が脳内神経ネットワーク内を駆け巡る様子を可視化し、観察していきます。アセチルコリンとドーパミンは、パーキンソン病などのヒトの疾患に関与していることがわかっていますが、現段階では、活動している脳内でこれらの神経伝達物質を可視化することができないため、詳細は解明されていません。」

  チームにとって、この研究助成金は研究資金面の支えとなるだけでなく、共同研究により、新たな研究分野の開発にもつながるでしょう。本研究には、3名の研究者の異なる専門知識が集結されています。カリフォルニア大学デービス校のLin Tian博士は新しい蛍光センサーの設計・開発を担当し、エルサレム・ヘブライ大学のJoshua Goldberg博士は、神経細胞の発火活動の測定に基づいた数理モデルを作り、神経伝達物質が相互作用する際の動的パターンを予測します。ウィッケンス教授は、OISTポストドクトラルスカラーのジュリ・シュイナール博士と共に、課題作業の開発及び脳内の化学パターンの可視化に取り組みます。

  本研究では、独自のアプローチとして、バーチャル・リアリティ(VR)の装置を用いてマウスの体験をコントロールします。VRの使用により、マウスの自然な動きを邪魔することなく、クリック一つで環境を変えることができるのです。 

  ウィッケンス教授はさらに次のように話します。「VRは様々な用途に使用されていますが、ナビゲーション研究にはこれまで利用されてきませんでした。我々の研究では、VRを用いて、マウスの学習の動機づけを解明したいと考えています。本研究用にVRを独自にプログラムし、VRを用いて観察した行動と、より自然な環境における行動とを比較することで、これまでになかったVR活用法を生み出していくことになるでしょう。」

  HFSP研究助成金は、ライフサイエンスの研究を支援する助成プログラムです。本プログラムは、フランスを拠点とした13の国々と欧州連合により運営されています。本年のプログラムには、800を超える予備提案が申請され、86の本提案に絞られた後に、最終的に25の提案がグラントを獲得しました。

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