さらなる輝きを研究に
光を出す化合物は、暗いところで光る子供用の玩具、LED、光を放つセンサーにいたるまで、様々な材料で使用されています。このような化合物の需要が増すにつれ、効率的に生成できる新たな方法が重要になっています。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の錯体化学・触媒ユニットの新たな研究では、光輝性化合物(PL)をより効率的に作製する新手法を編み出し、この度、Journal of Materials Chemistry C誌にその成果が掲載されました。
PL化合物の生成は、主に二つの手法に集中しています。一つは従来型の金属リガンドシステム、もう一方は凝集ベースシステムです。前者では、化合物がある一定の波長の光を放つために金属イオンに強く配位する複雑なリガンドもしくは化合物を必要とします。残念なことに、このシステムは強く安定化されてしまうため、化合物がひとたび生成されると修正することができません。それとは逆に後者は、異なる分子または分子パーツの間での弱い相互作用によるもので、PL化合物と周辺環境との相互作用により、放つ光の色をシフトさせるという同調性が可能です。しかし凝集の手法では、コントロールが難しく、精度を必要とするシステムでの使用は現実的ではありません。
そこでOISTの研究員らは、PL分子生成のため両手法の長所を合わせました。OIST錯体化学・触媒ユニットのポスドク研究員であるギオルギ・フィロネンコ博士は以下のように説明します。「従来の二つのコンセプトを合わせ、より良いPL化合物を生成したいと考えました。すなわち、結合の弱い凝集による錯体の柔軟性と、従来型の金属リガンドシステムのコントロールのしやすさを合体させようと考えたのです。」
ジュリア・クスヌディノワ准教授率いる研究チームは、ひとつの分子内において原子間の弱い相互作用による光輝性を持つ化合物を設計しました。その結果、分子間の凝集を必要としない、単分子システムを用いて凝集性ベースの同調性を得ることができました。
フィロネンコ博士によって合成された分子は、従来型の金属リガンドと似て、光輝性を生み出すために相互作用するリガンドと銅イオンから成り立っています。ところが、OISTで合成した分子のリガンドは強固ではなく、二つのリングと呼ばれる環状結合の原子構造の積み重なりによって、単分子内において、凝集システムのような相互作用を可能にしています。さらに興味深いことに、この分子が発する光の色をこれらのリング間の距離により調整できることを研究者らは発見しました。フィロネンコ博士は以下の知見を明らかにしました。「他のどの原子グループがリガンドに結合しているかにより、化合物から出てくる光の色を変えられることがわかりました。より大きなグループであれば、リング同士の距離を縮め、光の色もオレンジから黄色系統になります。一方、より小さな置換基の場合、リング同士が離れ、放つ光が赤系統になるのです。このように分子から放たれる光の波長を同調させることができることは、従来の金属リガンドPL化合物では成し得なかったことです。」
上記の同調性やコントロールのしやすさは、この化合物が様々な応用への可能性を秘めた物質であることを示しています。「周辺環境に対して非常に高い感度を持つため、これらの化合物はセンサーとして使用するのに大きな可能性を秘めていると思います」とフォロネンコ博士は語っています。
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