2046年の世界を語ろう

科学と人文系の両方の視点から議論を行うシンポジウムで、OISTとAPUの学生が30年後の世界について意見を交わしました。

 沖縄科学技術大学院大学(OIST) と 立命館アジア太平洋大学(APU)によるシンポジウム 「FUTURE WATCH未来をつくる!」 が2月21日(日)にOIST講堂にて開催され、両大学の学生が30年後の世界について意見を交わしました。シンポジウムにはOISTとAPUからそれぞれ学生が5名ずつパネリストとして参加し、未来についての自身の考えを、地元沖縄からの来場者やOIST関係者を含む観客に向けて発表しました。

 OISTから参加の学生、渡邉桜子さん(日本)、サンドリン・ブリエルさん(フランス)、イリーナ・レショドコさん(カザクスタン)、ジェイムス・シュロスさん(アメリカ)、アンクル・ダール さん(アメリカ)は、科学的な視点から、APUの学生、ラキヒモブ・ フシュンドさん(ウズベキスタン)、マーティン・アルべさん(ケニヤ)、 カルメン・パルマさん(ニカラグア)、板山良菜さん(日本)、プラヴィニ・ウィクラマナヤケさん(スリランカ)は、人文系の視点から発表を行いました。人類の未来について様々なアイディアがもたらされましたが、一貫していたのは、教育が重要だという意見です。

 学生が議論したテーマは、持続可能な資源、高齢化、複合的思考、宇宙旅行、科学技術による地域社会の発展、ロボット工学、人工知能、核の抑止、貧困などにおよびました。渡邉さんは、「様々な重要な問題が議論されましたが、共通していたのは、教育の重要性に対する意見です」とふり返ります。

 シンポジウムには2名のゲストスピーカーもお迎えしました。著名なコピーライターでエッセイストの糸井重里氏と東京大学大学院理学系研究科の早野龍五教授です。これほど多様な背景を持った学生が集い、世界や宇宙旅行の未来について意見を交わすのは珍しいとの印象を語られた早野教授は、「参加学生は国際性に富み、観客とのやり取りも良かったです」と感想を述べられました。

 学生たちによる発表のあとに、集まった観客は自身が最も重要と思うテーマに投票を行いました。最も票を獲得したのは、APUのウィクラマナヤケさんが提議した貧困を救う財政支援の優先順位づけに関するテーマです。投票後にも、休憩時間のポスターセッションや質疑応答を通して学生と観客が意見を交わす機会が設けられました。

 早野教授と糸井氏も世界の未来についてそれぞれの考えを述べられました。早野教授は教育の重要性を強調し、学生たちに「実社会にでて活躍するようになった際に、どういったことで人々の記憶に残りたいと思うか」という問いを投げかけました。糸井氏は、人間社会の入り組んだ事情によって、教育のように本来は明確なものがいかに複雑になり得るかを学生に語りました。「ロボットなど、科学技術の進歩が人類に与える影響について、若い学生や科学者が多領域にわたって考えることがとても大切だと思います」と糸井氏は言われました。そして、人間にとっての幸せは何か、働くことや食べることは何を意味するのか、ロボットが人にとって代わって仕事をすることがその人の尊厳にとって何を意味するかを、科学技術と同じぐらい深く考えて欲しいと学生たちに語りかけました。

 最後に、シンポジウムを通して全ての議論を聞いた観客に、考えが変わったか再度投票をしてもらいました。依然、最も票を集めたのは、ウィクラマナヤケさんの貧困を救う財政支援の優先順位づけに関するテーマで、票を更に16票も伸ばしました。

 しかし、参加者と観客にとって最も大きな成果は、様々な視点からアイディアを共有したことだったのではないでしょうか。分野を超えた交流を通じ、科学者も普通の人なのだと感じたと言うアルべさんは「物事を異なる視点から見ることができました」と言います。

 OISTの博士課程の学生、濱田太陽さんも科学者以外のひとの意見を聞くことの有益さに気づかされたと言います。濱田さんは「科学者の立場と社会科学よりの立場からの議論は興味深かったです」と言い、「人文系と科学のつながりを意識して、両者が連携していく必要があると感じました。」と感想を述べました。

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