県内の高校生がトーステン・ヴィーゼル博士とサイエンストーク

 去る2月11日(祝)、(独)沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)は、沖縄県内6校の高校生計12人を恩納村内のキャンパスに招き、OIST運営委員会共同議長のトーステン・ヴィーゼル博士(ロックフェラー大学名誉学長、1981年ノーベル生理学・医学賞受賞)との懇談会を開催しました。この「ノーベル受賞者とのサイエンストーク」では、2時間にわたる対話と交流を通して、ヴィーゼル博士が、参加した高校生に対して進学や将来のキャリア形成に関するアドバイスをしました。司会は、OISTの山田真久博士(コモンリソースグループ研究統括)が務めました。

 サイエンストークは、参加生徒(男子生徒4名・女子生徒8名)による自己紹介で始まり、各自が好きな科目や将来の夢について語りました。多くの生徒が医師か科学者を目指していることが分かりました。

 ヴィーゼル博士からは、参加生徒の自己紹介に対する謝意に続き、出身国スウェーデンでの幼少期に始まる経歴について話がありました。大きな精神病院の医師の息子として生まれた同博士は、病院で暮らし、周りを患者に囲まれて育ったので、医学への興味が自然に育まれたことを紹介。しかし、一人ひとりの患者ではなく、もっと多くの人に役に立てる仕事に就きたいとの思いから米国ジョンズ・ホプキンス大学に進学し、脳が働くメカニズムについて研究を始めたこと。同僚のデイヴィッド・ヒューベル(David H. Hubel)博士とともに1981年にノーベル医学・生理学賞を受賞することになった脳皮質視覚野における情報処理に関する研究は、子どもの白内障治療に大いに貢献したことなどが紹介されました。

 自分自身を「頑固者」と評したヴィーゼル博士は、失敗しても何度も挑戦することや、新しいチャレンジに立ち向かえるよう常に準備することの大切さを説明しました。また、医師になることを志望している生徒に対しては、患者を癒す人になってほしいと語りかけました。科学者を志望する生徒に対しては、研究は厳しい競争の世界である一方で、今まで知られていなかったことを発見できる喜びがあると述べました。ノーベル賞受賞前後で何か変化があったかという質問に対しては、様々な大学や研究機関で役職に就くことになったため、残念ながら研究のための時間がなくなってしまったと振り返りました。一方で、こうして若い人たちと会って、科学技術分野でのキャリアについて話す機会ができたと説明をしました。

 最後にヴィーゼル博士はOISTについて触れ、運営委員会のメンバー一丸となって世界最高水準の大学院大学設立のために尽力していることを紹介するとともに、参加生徒の中からもOISTに入学する学生が生まれてほしいと期待を示しました。

 サイエンストークは、各生徒による感想で締め括られました。「生物系の研究に興味があったけれど、ヴィーゼル博士の話を聞いて医学系も面白そうと思った」と屋宜彩花さん(沖縄尚学高校1年)。「人と話すのがあまり得意ではないけれど、科学者として研究資金を獲得するにはきちんと説明できるようにならないとダメであることが分かった」と語ってくれた比屋根和樹さん(県立開邦高校1年)。外科医師志望であり、「気持ちをオープンにすることが自分の能力を引き出す鍵となることが分かった」と話した山田莉奈さん(県立球陽高校1年)。また、瑞慶覧亜紀さん(県立那覇国際高校2年)は、「自分の研究で多くの人を助けられることは素晴らしい」とヴィーゼル博士の話にとても感銘したと述べるなど、参加者それぞれがノーベル賞受賞者との対話で得られた感激を述べていました。

 上で御紹介した以外の参加高校生は、次のとおりです。池原舞さん(沖縄尚学高校2年)、濱川菜桜さん(県立開邦高校2年)、知念柊子さん(県立球陽高校2年)、藤本裕介さん(県立向陽高等学校1年)、大城良紀さん(同校2年)、安里晨さん(昭和薬科大学附属高等学校2年)、儀間香南子さん(同校2年)、赤嶺もなさん(県立那覇国際高校2年)。

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通訳を通して生徒に語りかけるヴィーゼル博士
通訳を通して生徒に語りかけるヴィーゼル博士
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OISTカフェでのサイエンストーク
OISTカフェでのサイエンストーク
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ヴィーゼル博士
ヴィーゼル博士

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