ペロブスカイト太陽電池、劣化機構の解明で新境地への飛躍となるか

ヨウ素を含んだペロブスカイト太陽電池の劣化原因が、材料そのものに内在することが研究で明らかになりました。

  産業界や政府系機関で太陽電池技術の普及が進む一方で、個人消費者には高額すぎて手が届かないという現状があります。より多くの人が利用できるようにするためには、従来のシリコン系(Si)太陽電池よりも安価でエネルギー効率の高い、新しいタイプの太陽電池が必要です。太陽光発電技術の分野でいま話題となっている研究テーマの1つが、優れた電力変換効率と、低コストで製造できる特徴を持つ有機無機複合層状ハロゲンペロブスカイトを太陽電池の材料として利用することです。

  ペロブスカイトは結晶構造の一種で、様々な化学結合により形成することができます。太陽電池に適用できる数あるペロブスカイト材料の中でも、最も広く研究されているのが、ヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPbI3)です。この材料を使った太陽電池の変換効率は20%を超え、Si太陽電池に比べて低コストでの製造が可能です。しかし、耐用年数が短いことから、Si太陽電池に替わって実用化されるまでには至っていません。そこで、沖縄科学技術大学院大学(OIST)エネルギー材料と表面科学ユニットでは、より高性能な太陽電池の開発に役立てようと、ペロブスカイト太陽電池(PSCs)の急速な劣化要因を調査しています。

 

作製されたばかりのペロブスカイト太陽電池を手に持つジャン・イェン博士(左)。シェンハオ・ワン博士(右)が持っている試作品からも分かるように、劣化したMAPbI3ペロブスカイト太陽電池はかなり変色している。
作製されたばかりのペロブスカイト太陽電池を手に持つジャン・イェン博士(左)。シェンハオ・ワン博士(右)が持っている試作品からも分かるように、劣化したMAPbI3ペロブスカイト太陽電池はかなり変色している。

  この度、Nature姉妹誌の Nature Energy に掲載された論文の筆頭著者、シェンハオ・ワン博士は、MAPbI3ペロブスカイトの劣化を防ぐ方法は存在しない可能性があると述べています。ヨウ素を含むペロブスカイトは、太陽電池作動中にガス状ヨウ素(I2)を放出し、それがペロブスカイトのさらなる劣化要因となっていることを今回の研究で明らかにしました。これまで多くの研究者が、空気や湿気、熱といった外的環境をMAPbI3の劣化要因として挙げてきました。しかし、それらの要因を全て取り除いてもなお太陽電池の劣化が止まなかったことから、原因はPSCsそのものが有する特性にあると、ワン博士は考えました。

  「ヨウ素を含むこれらのPSCsはおのずとヨウ素蒸気にさらされるため、MAPbI3ペロブスカイト化合物からヨウ化鉛(PbI2)へと急速に分解されます」と、ワン博士は説明します。「ヨウ素の蒸気圧は周りの圧力よりも高いので、ペロブスカイト材料の他の部分にもすぐに浸透し、太陽電池全体の性能を劣化させてしまいます」。

 

太陽電池の様々な劣化要因(空気や湿気、光照射、電場印加など)を示した略式図。ペロブスカイト太陽電池は作動中にヨウ素を放出し、性能劣化につながる。
太陽電池の様々な劣化要因(空気や湿気、光照射、電場印加など)を示した略式図。ペロブスカイト太陽電池は作動中にヨウ素を放出し、性能劣化につながる。

  とはいえ今回の研究結果により、ペロブスカイトが有望な太陽電池材料の対象から除外されるというわけではありません。「様々な望ましい光起電力特性に加え、ヨウ素含有量を少なくしたもの、あるいはヨウ素放出が原因で生じる劣化に耐えられる構造を備えた新しい材料が必要であるということが、この実験で明らかになりました」と、エネルギー材料と表面科学ユニットの主宰者で本論文の責任著者であるヤビン・チー准教授は説明します。

 

キャプション:今回の研究に携わったエネルギー材料と表面科学ユニットの研究者たち。左から、大野勝也博士、エミリオ・フアレス・ペレス博士、シェンハオ・ワン博士、ジャン・イェン博士、ヤビン・チー准教授
キャプション:今回の研究に携わったエネルギー材料と表面科学ユニットの研究者たち。左から、大野勝也博士、エミリオ・フアレス・ペレス博士、シェンハオ・ワン博士、ジャン・イェン博士、ヤビン・チー准教授

  OISTの研究者らは、より優れた変換効率と耐久性を備え、低コストで製造できるペロブスカイト材料を見い出すため、様々な材料の研究を続けています。さらに、一般消費者が利用しやすくするために、安価で、効率性と安定性に優れた太陽電池を開発することが今後の課題です。安くて高性能の太陽電池が幅広い消費者層に受け入れられ、さらなる普及拡大に繋がることが期待されています。

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