ナノスケールで汚染物質を検出
工場等から排出される汚染物質および車の排気ガスは、これらの有害なガスを吸い込む人々に悪影響を与え、大気圏の気候変動も悪化させます。このような排気物質を検出する方法は、現在非常に求められています。
沖縄科学技術大学院大学(OIST)のナノ粒子技術研究ユニットによる新たな研究は、ナノスケールでセンサーを用いて汚染物質の検出を向上させる有効な方法を開発しました。本研究はオーストリアのレオーベン物質センターおよび同国電子顕微鏡・ナノ分析センターとの共同で実施され、Nanotechnology(ナノテクノロジー)誌に掲載されました。
少量の異物原子が高温で生成され表面に付着する際、電気的特性に劇的な変化を認めるために半導体が作成されます。今回は、酸化銅ナノワイヤーが電気回路の一部として生成されました。研究者らは、結果として得られた回路の電気抵抗の変化をガスが存在する状態で測定し、一酸化炭素を間接的に検出しました。パラジウムのナノ粒子が付着した酸化銅ナノワイヤーが、ナノ粒子を施していない同じ種類のナノワイヤーに比べて、一酸化炭素の存在する状態での電気抵抗においてかなり大きな増加を示すことがわかりました。
OISTナノ粒子技術研究ユニットは、最初にナノ粒子をサイズに従って選別し、次にナノワイヤーの表面上にパラジウムのナノ粒子を均一に分布かつ堆積させることを可能にする高度な技術を用いました。このサイズが選択されたナノ粒子の均一な分散およびその結果として得られるナノ粒子とナノワイヤーの相互関係が、高度な電気的反応を得るために極めて重要なのです。OISTのナノ粒子局所堆積装置はナノワイヤーが存在する基板の特異領域に複数種類のナノ粒子を同時に堆積させるように調整することができます。言い換えれば、この装置は複数種類のガスの検出が行えるように操作できるのです。次のステップは、さまざまな種類のナノ粒子を利用する各デバイスを用いて、複数のセンサーデバイスでさまざまなガスを同時に検出することです。
ガス検出において研究が進んでいるその他の手法は大がかりで小型化が困難です。これらに比べて、ナノワイヤーのガス検出方法は安価で大量生産しやすいという可能性を秘めています。
このようなセンサーの動作に必要な主要エネルギーコストは、特定の電気的反応を確実におこす化学反応を促す高い温度です。今回の研究は、摂氏350度で行いました。しかし、このシステムの動作温度を低くするために、現在、さまざまなナノワイヤー-ナノ粒子の構成が研究されています。
「このような技術は産業用デバイスに組込むことができるため、ナノ粒子を施したナノワイヤーには大きな実用化の可能性が秘められていると考えます」とOISTナノ粒子技術研究ユニットで、ムックレス・ソーワン准教授を師事する日本学術振興会(JSPS)特別研究員のステファン・シュタインハワー博士は語りました。
(ジョイクリット・ミトゥラ)
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