エイミー・シェン教授による複雑流体研究が始動

マイクロ・バイオ・ナノ流体ユニットの代表としてOISTに着任したエイミー・シェン教授は、複雑な内部構造を持つ流体について研究をします。

 このたびエイミー・シェン教授がマイクロ・バイオ・ナノ流体ユニットの代表としてOISTに着任し、本年7月よりここ沖縄に常駐することになりました。現在米国ワシントン大学機械工学科の准教授でもあるシェン教授は、例えばサラダドレッシングや砂、溶岩、血液など、複雑な内部構造を持つ流体について研究しています。流体の挙動や制御方法を理解することで、薬の候補となる化合物を同定するドラッグ・スクリーニングや、生物資源を用いたバイオ燃料など生体医学やエネルギー関連分野での様々な発展に繋がることが期待されます。

 シェン教授は、米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で理論応用力学の博士号を取得し、ハーバード大学工学応用科学研究科で博士研究員(ポスドク)として勤務した後、ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学を経て、シアトルのワシントン大学に移りました。

 OISTでは、複雑流体の研究を引き続き進めていくというシェン教授。複雑流体は単体の原子や分子が多数集まってできたサブユニットから構成されています。サブユニットは特定の条件下で構成され、大抵は液体と固体の中間という珍しい特性を示します。テレビやスマートフォン(多機能携帯電話)などに使用されている液晶ディスプレイも複雑流体の一例です。シェン教授の研究の重要な要素となるのが、手のひらサイズのマイクロ・ナノ流体装置の設計です。これらの装置は、複雑流体の流れのメカニズムを調べたり、ナノ・マイクロ構造をもつ材料を作製する際に利用されます。同教授は、細胞の活性を固定化し、環境を制御することができる装置を開発しました。制御環境下では、個々の細胞の特性や細胞間の相互作用を容易に観察することができると考えられています。

 OISTの一員となったことで、今後の研究の進展に繋がる多くの可能性に胸を躍らせるシェン教授は、「OIST特有の学際的研究体制が、数多くの教員を着任以来新たな方向へと舵を切る後押しをしているように見受けました」と述べています。研究対象分野の裾野を広げる同教授が、最近特に着目しているのが海洋です。海に囲まれた島というOISTの独特な立地環境も手伝い、さっそく藻類に含まれる脂質に目をつけたシェン教授は、再生可能エネルギーやバイオ燃料への応用の可能性も模索し始めています。「この美しい島で、優秀な仲間と共に研究できることを楽しみにしています」と語る同教授の今後に期待が高まります。

(エステス キャスリーン)

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