御手洗哲司博士の寄稿が琉球新報に掲載されました
海洋生態物理学ユニット若手代表研究者・御手洗哲司博士の寄稿が2011年2月2日付の琉球新報「論壇」に掲載されました。
可能性に満ちた沖縄の海
~世界的拠点目指すOIST~
沖縄は、この地球上で、最も海洋環境に恵まれた地域の一つである。美しい海は、豊かな文化を育み、多くの観光客を惹きつけてきた。その沖縄の海に、今、世界の科学者の注目が集まっている。
沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)では、大学院大学の開学に向けた取組の一環として、先月、海洋環境研究に関する国際ワークショップを開催した。本稿では、研究対象としての沖縄の海の魅力を紹介するとともに、その成果を報告したい。
沖縄の海の最大の特徴は、世界有数の規模を誇るサンゴ礁の存在だ。そこは生物の宝庫であり、研究テーマに事欠かない。サンゴの白化現象など、気候変動の影響も現れやすい。沖縄の海洋環境を的確に把握・分析することにより、環境保全につながる予測も可能となる。
さらに、周辺の深海には、海底から熱水が吹き出す噴水孔がいくつも存在し、新種の微生物も発見されている。新たな発見が創薬などの産業につながることも期待される。これほど研究テーマにあふれる海は、世界でも例を見ない。
こうした優位性をどう活かすべきか。ワークショップでは、世界トップクラスの研究者から、海洋環境の観測に関する最先端の報告を受け、今後の可能性を話し合った。
参加者からは、サンゴ礁を眼前に臨むOISTの立地は世界でも珍しく、そのような地の利と、OISTが推進する異分野の融合や手厚い支援体制が相まって、世界をリードする独創的な研究が生まれることを期待する意見が多かった。また、スタンフォード大学など、米・仏・豪の世界的な大学との間で、共同研究を進める計画も動き出した。他方、海洋研究インフラの整備や研究者の更なる採用など、今後の課題も指摘された。国際的なネットワークを築きつつ、課題の解決に努めていくことが重要だ。
こうした研究には国の後押しも欠かせない。来年度予算案では、OISTの「沖縄海洋環境研究プロジェクト」の推進が盛り込まれた。最先端機器の導入が進めば、世界からの注目もさらに高まるだろう。
また、県内では、琉球大学や海洋博覧会記念公園管理財団などで、海洋生物に関する優れた研究が行われてきた。これらの機関との一層の連携により、相乗効果をあげていきたい。
沖縄は、海洋環境研究の世界的拠点に発展する可能性に満ちている。優れた科学者が集い、最先端の研究が進めば、その豊かな環境を守ることにもつながる。県民の皆様の一層のご支援をお願いします。
ワークショップの風景
御手洗先生によるOIST、そして沖縄の紹介プレゼンテーション
OISTセンター棟にて
参加者の集合写真
Participants in the 2010 Computational Ecology Workshop at OIST
Robert Warner (University of California, Santa Barbara)
Stephen Monismith (Stanford University)
Amaztia Genin (Hebrew University of Jerusalem)
Louis Legendre (Laboratoire d'Oceanographie de Villefranche)
James Mitchell (Flinders University)
Hidekatsu Yamazaki (Tokyo Institute of Marine Science and Technology)
Paul Barber (University of California, Los Angeles)
Jennifer Caselle (University of California, Santa Barbara)
David Robertson (University of Edinburgh)
Malcolm Atkinson (University of Edinburgh)
Siu-Wai Leung (University of Macau)
Fang-Pang Lin (National Center for High Performance Computing, Taiwan)
Scott Gallager (Woods Hole Oceanographic Institution)
Amber York (Woods Hole Oceanographic Institution)