「島を出るか、順応するか、それとも沈んでいくのか」(アジア・太平洋ユース科学技術交流フォーラムの開催)
OISTにて開催されたアジア・太平洋ユース科学交流フォーラム(APYSEF)では、34名の大学生が参加し、「島を出るか、環境共生型の新しい生活スタイルを取り入れるか(順応するか)、それとも沈んでいくのか」という課題を先進国と途上国に向けて問いかけた。
平成22年7月、OISTを訪問した前原誠司内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)(当時)は、アジア・太平洋地域の学生や若手研究者が交流し、地域の直面する問題に科学がどのように役立つか等について話し合うフォーラムをOISTで開催することを提案しました。この提案を受けて企画されたのが、琉球大学とOISTが共催したAPYSEFです。9月23日から4日間にわたって行われた同フォーラムには、アジア・太平洋地域の14の国と地域から34名の優秀な学生と、生態学、サンゴ礁の生物学、島嶼国の持続可能な開発等の分野の8名の若手研究者がパネルメンバーとして参加しました。
フォーラムでは、パネリストによるディスカッションや、学生が作成したポスター発表、また、島嶼地域の若者や彼らのコミュニティーが現在直面している問題について意見交換が行われました。これらの議論を通して、気候変動、魚の乱獲、陸地からの汚染物の流入に伴う海洋汚染問題をはじめ、島嶼地域に特有な様々な脅威が明らかにされました。そして、問題の解決策として、気候変動が引き起こす脅威について、地域規模さらには世界規模で、問題に対する認識を高めていくことや、漁業だけに頼らないより強固な経済インフラの構築、エコロジーに関する伝統的な作法や知恵の継承などが挙げられました。
フィリピンのビコル大学に通うクリスチャン・キャビレさんは、「未来を担う若者の一員として、今、私たちのコミュニティーで、そして母なる地球上で何が起こっているのかを知っておく必要があります。」と述べました。クリスチャンさんの意見に賛同したハワイ大学のポール・バンプさんは「このフォーラムに参加して、それぞれの国が抱える固有の問題について知ることができました。これらの問題は、私たち一人一人が考えて解決していかなければなりません。解決策が存在することは確かで、今こそ私たちが行動を起こさないといけないのです!」と、熱く語っていました。
フォーラムで発言するリサ・スティーブンソンさん
OIST運営委員の尚弘子博士(琉球大学名誉教授)や、琉球大学の山崎秀雄副学長、そして若手の専門家や地元メディアが見守る中、参加学生たちは、活発な議論を通してよく考察された決議案を作り上げていきました。そしてフォーラムの最後には、参加者全員による挙手と署名によって、満場一致で決議案が採択されました。フォーラムの開催にあたり中心的役割を果たしたOISTのハリー・ウィルソン学務課長は、若者たちがそれぞれの国のコミュニティー、リーダー、そして国や自治体に対してこの決議を届けることが重要との考えを強調しました。ウィルソン課長は、「みなさんがこのフォーラムで始めた努力を今後も続けていかなければなりません。みなさんの取組が、将来、島嶼地域の社会で実を結ぶことを願っています。」と語り、フォーラムを締めくくりました。
今回のフォーラムは、アジア・太平洋地域の若者が一堂に集まり、科学的な情報を吸収した上で、将来彼らが関わっていく政府や様々な組織、そして自身のコミュニティーがとるべき道について考えるきっかけを作るという大変素晴らしいものとなりました。もし真の変化を世界が求めているのなら、若者たちの参加が欠かせないのです。
パネリストのリスト
名前 | 所属機関 | 地域 |
Jack Kittinger | スタンフォード大学 | 米国 |
Dan Barshis | スタンフォード大学 | 米国 |
Yoko Nozawa | 中央研究院 | 台湾 |
Exsley Taloiburi | 国連開発計画ソロモン事務所 | ソロモン |
Huiyu Wang | 台湾国立大学 | 台湾 |
Sean MacDuff | ハワイ大学 | 米国 |
新里宙也 | OIST マリンゲノミックスユニット | 沖縄県 |
中村 雅子 | OIST海洋生態物理学ユニット | 沖縄県 |
参加者の所属大学リスト
所属大学 | 地域 | 参加人数 |
ハワイ大学 | 米国 | 2 |
グアム大学 | 米国 | 1 |
ジェームズクック大学 | オーストラリア | 1 |
南太平洋大学 | フィジー | 4 |
サモア国立大学 | サモア | 2 |
ニューカレドニア大学 | ニューカレドニア | 1 |
パプアニューギニア大学 | パプアニューギニア | 2 |
アテニシ大学 | トンガ | 2 |
パラオコミュニティーカレッジ | パラオ | 2 |
ボゴール農科大学 | インドネシア | 2 |
ディポネゴロ大学 | インドネシア | 2 |
ビコル大学 | フィリピン | 2 |
台湾国立大学 | 台湾 | 2 |
茨城大学 | 茨城県 | 1 |
国立沖縄工業高等専門学校 | 沖縄県 | 1 |
九州大学 | 福岡県 | 1 |
立命館アジア太平洋大学 | 大分県 | 3 |
琉球大学 | 沖縄県 | 3 |
(作:ムセウ・ジュリエット、訳:我喜屋 久)