次の世界的パンデミックに備えるために・・・
COVID-19パンデミックは私たちの生活すべてに多大な影響を与えました。将来に向けて、効果的な臨床ケアを確立する必要がありますが、私たちはそれはあくまでも分子生物学の基本的な理解に基づくべきだと考えています。
私たちの研究チームは、低濃度のエタノール蒸気がウイルスにどのような影響を与えるのかを多角的に調査し、エタノールという日常的に使われる安全な化学物質を臨床ケアに用いる方法を新たに提案しています。
具体的には、エタノール蒸気によって、
・ウイルスの表面タンパク質がどのような構造変化を起こすのかを電子顕微鏡で観察する
・in vitroモデル細胞を用いて、ウイルスの活性がどのように減少するかの生物学的な手法で証明する
・ウイルス感染マウスの症状にどのような改善が見られるかを観察する
という3つの試験を行なっています。
本研究は、2020年の新竹による理論論文 (arXiv:2003.12444)から始まりました。
私たちは、SARS-COV2(COVID-19)と同じエンベロープウイルスである、インフルエンザウイルスとニューカッスルウイルスを研究材料として使用しています。
既に、50% v/v濃度のエタノール蒸気が肺内のインフルエンザウイルスを減らし、マウスモデルでの生存率を改善できることを発見し、論文を発表しました。この研究はOISTの石川ユニットと共同で行われ、Journal of Infectious Diseasesに掲載されました。
"Effect of ethanol vapor inhalation treatment on lethal respiratory viral infection with Influenza A" Miho Tamai, Seita Taba, Takeshi Mise, Masao Yamashita, Hiroki Ishikawa, Tsumoru Shintake The Journal of Infectious Diseases (2023). doi: 10.1093/infdis/jiad089.
プレスリリースはこちらから確認できます。 here.
加速電圧300kVのクライオ電子顕微鏡で撮影されたニューカッスルウイルスの顕微鏡像
私たちは、クライオ電子顕微鏡、マイクロ CT、細胞実験、マウス実験、in vitro テストなど、さまざまな方法を駆使して、エタノール蒸気がエンベロープウイルスに与える影響を総合的に調査し、その結果を沖縄の臨床診療に応用していきたいと考えています。