飛躍の年、2023年を振り返る
2023年は沖縄科学技術大学院大学(OIST)にとって、飛躍の1年となりました。OISTの教員数は90人を超え、新学長が就任したり、新しい研究棟が開設したりと、様々な話題がありました。
そしてコロナ禍以降、初めてOISTの一般開放が再開された年でもあり、地域向けの科学イベント「サイエンスフェスタ」には1,000人以上が訪れました。キャンパス訪問者数はコロナ禍前、またはそれ以上の水準に戻り始めています。また、地域に根差したアウトリーチ活動も再開されるようになり、多くの訪問者や学生がOISTを訪れたほか、OIST研究者による講演会や科学体験イベントなど、県内各地で様々な地域活動が開催されるようになりました。
さらに、量子エンジン、眠れるタコ、さまざまな病気の新しい治療法など、OISTの研究は、科学メディアと一般メディアの両方において、幅広く取り扱われるようになり、OISTをより身近に感じてもらえるようになりました。
2023年、記憶に残る5つのイベント
2023年はOISTキャンパスが活動の拠点となり、印象に残るさまざまなイベントを開催しました。ここでは、今年行われた最も重要なイベント5つをご紹介します。
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「OISTサイエンスフェスタ2023」
コロナ禍以降初めてのサイエンスフェスタ開催でした。OISTの研究者たちは、沖縄県内の子どもたちや大人に、好奇心や驚きを通して科学の魅力を伝えました。 -
「恩納村・OISTこどもかがく教室」
今年で第13回目となる「こどもかがく教室」が、3年ぶりに対面開催されました。約130人の子どもたちは、学校の授業では体験できない科学に触れ、OISTの研究活動に興味を持ってもらうことができました。 -
OIST新研究棟を開設:オープンで現代的な空間が、分野の垣根を越えた研究を促す
開放的な吹き抜けが特徴の第5研究棟には、階段式観覧席(アンフィシアター)や、最新鋭の動物実験施設が備わっています。 -
ノーベル賞受賞者スバンテ・ペーボ教授が沖縄で講演会を開催(10月9日那覇、10月7日OISTにて開催)
講演会には多くの参加者が集まり、講演後には活発な質疑応答が行われました。 -
数学と理論物理学の架け橋となるプログラムがOISTで開催
OIST理論科学客員プログラム(TSVP)で、初の「テーマ別プログラム」を開催され、国際的な共同研究を促進しました。
2023年、OISTコミュニティーの注目すべきメンバー5人
壁を取り払い、科学を身近に感じられるようにするためにーOISTコミュニティーにとどまらず、世界における科学技術の発展を目指し、素晴らしい活躍を見せた今年注目のメンバーをご紹介します。
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パオラ・ラウリーノ准教授が女性科学者を支援する「ロザリンド・フランクリン フォーラム(Roz)」を共同設立
「ロザリンド・フランクリン フォーラム(Roz)」は、キャリアを積んだ世界中の科学者、特に女性教授や女性研究者からのアドバイスを提供することで、科学者の自信や機会、アクセシビリティや、包括性を向上させることに焦点を当てています。 -
ケシャヴ・ダニ准教授が物理学分野でFalling Walls Science Breakthroughを受賞
ダニ准教授は、「暗い励起子」の視覚化における画期的な発見により、「Falling Walls Science Breakthrough」の受賞者10人の一人に選ばれました。同賞は、今日の社会が直面している課題の解決策になり得る最新のブレークスルーなどの傑出した業績に対して贈られます。 -
カリン・マルキデス博士がOISTの学長に就任
今年、マルキデス博士がOIST学長兼理事長に就任し、リーダーが交代しました。マルキデス博士は、OISTの研究者間、そして科学と社会との間の協力体制をさらに強化することを誓いました。 -
北野宏明OIST教授が、国連のAIに関するハイレベル諮問委員会メンバーに選出
この委員会は、人工知能(AI)を人類のために機能させることを目的としており、世界33か国から専門家38人が参加しています。北野教授は同委員会のワーキンググループ共同チェアにも任命されました。 -
柏本理緒さん(OIST博士課程)が2023年度動物科学賞を受賞
海洋生態進化発生生物学ユニット (ヴィンセント・ラウデット教授)の学生である柏本さんが筆頭著者として執筆した論文が、他の5つ論文と共に、日本動物学会理事会の名誉ある賞を受賞しました。
2023 年に掲載されて、最も読まれた研究紹介記事トップ 5
タコのレム睡眠から、量子物理学や流体力学による新しいエネルギーの可能性まで、今年もあらゆる分野で多くの成果が生まれました。ここでは、今年発表されたOISTの研究リリースの中で閲覧数が最も多かったものをご紹介します。
- 量子革命の原動力、「量子エンジン」が実現する日も近い?
高効率な量子デバイス開発の可能性を科学誌「ネイチャー」に発表しました。
- 腸内細菌がコロナワクチン免疫反応に及ぼす影響
消化器官内の細菌が糖類を分解する働きが、新型コロナのmRNAワクチンから得られる免疫効果を弱める可能性があることがわかりました。
- 自己免疫疾患の治療につながる新たな可能性を発見
さまざまな自己免疫疾患の治療薬となる可能性を秘めた化学物質を発見し、マウスへの投与で病状を改善することに成功しました。
- タコも夢を見る?タコにも人間のレム睡眠に似た睡眠段階があるという事実が初めて明らかに
人間などの哺乳類と同様に、タコにも2段階の睡眠段階(静的睡眠と動的睡眠)があり、動的睡眠はレム睡眠と似た性質を持っていることが明らかになりました。
- 流体力学で挑むエネルギー問題
ポンプのオン・オフを繰り返して乱流を抑えると、流体輸送エネルギーコストを22%下げることがわかりました。
英語の記事トップ5は次のとおりです
- Potential treatment of autoimmune diseases revealed in new study
- What makes a neural network remember?
- Octopus sleep is surprisingly similar to humans and contains a wake-like stage
- Powering the Quantum Revolution: Quantum Engines on the Horizon
- Inhaled ethanol may treat respiratory infections and stop pandemics
2023年にメディアで話題になった記事5選
国内外の様々なメディアでOISTの活動について紹介いただきました。その中でも今年特に話題になった記事を5つご紹介いたします。
- 日本経済新聞 スペシャル動画:「博士人材は社会の起爆剤に」沖縄科技大学院大学長の提言【直言】
6月に3代目OIST学長に就任したカリン・マルキデスが日経新聞に取材を受けました。未来の大学のあるべき姿について提言しています。
- Forbes Japan: 沖縄OIST発の高吸水性ポリマー 世界の農家を水不足から解放
2019年にOIST Innovation Accelerator のプログラムに採択され、その後沖縄で設立されたEFポリマーが、期待の日本発スタートアップとしてForbes Japanで紹介されました。
- ニューズウィーク日本版: OISTが燃料不要な「量子エンジン」の設計・製作に成功。エネルギー新時代の幕開けか
9月に発表された量子システム研究ユニットによる研究成果が、ニューズウィークで紹介され、SNSを中心に大きな話題を呼びました。
- NHK:タコ 人間に似た2段階の睡眠サイクル OISTなどの研究チーム
人間とにた2段階の睡眠サイクル(レム睡眠、ノンレム睡眠)に似た行動が、タコにもみられること初めて明らかになり、眠るタコの動画がNHKをはじめとする多くのメディアで紹介されました。
- 日本テレビ: 笑ってコラえて!日本列島大学の旅 OISTスペシャル 2回にわたり、「笑ってコラえて!」に学生たちが密着取材を受けました。関根麻里さんが、OISTで行われる最新の研究を深堀しました。
*過去話は現在huluでのみで視聴いただけます。
海外のメディア掲載トップ5は次の通りです。
- CNN: Ancient Jawless Fish’s Head Fossilized in 3D Hints at Evolution of Vertebrate Skulls
- Science with Sabine: Scientists in Japan and Germany have worked together to build the first quantum engine
- Nature: Do octopuses dream? Brain recordings provide the first clues – special video
- The New York Times: What’s Really Happening When a Cuttlefish Seems to Vanish
- The Times of India: Study reveals potential treatment of autoimmune diseases