ジェンダー間の見えない「壁」を打破するために私たちが今できること
毎年3月8日は国連が定めた国際女性デーです。女性たちが成し遂げてきた功績を称えるとともに、一人ひとりがジェンダー間の平等を考える日として認識されています。
ジェンダー間の平等を実現するために、世界各地で様々な取り組みが行われています。持続可能な開発目標(SDGs)の中にも盛り込まれるなど、解決するべき重要課題のひとつとして捉えられています。
多くの場合、固定概念、文化や価値観の違いなど、ギャップが生まれてしまう原因は、見えない障壁としてお互いの理解を隔ててしまいがちです。見えない「壁」を乗り越えるには?ここでは、その壁に立ち向かい、すべての人があらゆる分野で活躍できる世界を目指して変化を起こそうと立ちあがったOISTの科学者たちの活動をご紹介します。
見えない壁は、対話で「見える」ようにする
2月14日、「Global Women’s Breakfast(世界女性朝食会、以下GWB)」が開催されました。これは2019年から世界各地で開催されている一連のコミュニティ活動のひとつで、この時期になると世界中の科学者たちが、男女共同参画の未来について考えるイベントを世界各地で開催します。国際純正・応用化学連合(通称IUPAC)※1が主体となって始まったムーブメントは、今や約80か国に広がり、昨年は407イベントが開催され、約3万人が参加しました。
OISTでは初の試みとなるGWBイベントを立ち上げたのは、OISTパイ共役ポリマーユニットを率いるクリスティーヌ・ラスカム教授、同研究ユニットの研究員サマンサ・ファンさん、学生のグィオ・ロレンソさんの3名。ラスカム教授は、 IUPACのポリマー・ディビジョンの代表を務めており、この度、2022年の高分子学会学術賞を受賞しました。
イベントに集まった約50名の参加者は、「あなたにとって科学における障壁とは?」「障壁を打ち破るためにどうすればよいか?」「その障壁を打ち破るために今できる行動は?」といった質問に対していくつかの小さなグループにわかれて話し合い、一人一人が科学の世界で感じる「見えない壁」に対する疑問や課題を共有したり、解決策を探り合いました。
今回のイベントには、学生から教員まで、女性だけでなく多くの男性や、科学者以外のスタッフも参加するなど、多様なバックグラウンドをもつ参加者が集まりました。「それぞれが違っていても、話し合って共通の目標に向かって努力することで、一人ひとりの結びつきが強くなります」見えない壁に立ち向かうには、全員が意欲をもって参加し、話し合い、共感しあうことが重要だとファンさんは話します。
ラスカム教授も、すぐに起こせる行動は話し合いだと述べます。「科学の世界における壁は男女間だけでなく、研究分野の壁、言語の壁、文化の壁、など様々なところに存在します。それらを克服できる唯一の方法は、コミュニケーションを通して相互理解を深めることなのです」と、単にお互いの違いを主張し合うのではなく、何を課題に感じ、どう解決したいのかを、様々な人と一緒に考えることが重要だと話します。
ラスカム教授は「いいアイディアであったとしても、実際に行動を起こすことが難しい、そういうこともあるかもしれません。それでも『いま私たちは壁を壊しているんだ』という意識を持つことが大切です。同じような考えを持つ人たちがコミュニティを作り、それが大きな変化を作っていく、そういったムーブメントを起こしていきたいです」と今後の展望について述べました。
※11919年に設立されたスイスを拠点とする国際機関。化合物の命名といった化学の共通言語の提供、持続可能な化学の発展促進、科学に関する情報の自由な交換、などを目的に様々な活動を展開する。
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