沖縄の女子高校生が長寿の科学を学ぶ:ハイサイ・ラボ2022
2022年3月、毎年恒例のワークショップ「HiSci Lab(ハイサイ・ラボ)」が開催され、沖縄県内の女子高校生35名が参加しました。このワークショップは、女子生徒のSTEM(科学、技術、工学、数学)分野への関心を高めることを目的に行われています。
3月25日、26日の2日間にわたってOISTが開催した同アウトリーチイベントは、沖縄県の後援とTANAKA Memorial Foundation(タナカ・メモリアルファウンデーション)からの追加資金を受けて行われました。参加者の中には、石垣島から2名、久米島から1名も加わりました。
HiSci Lab の一日目は、4名の女性研究者によるキャリアトークが行われました。そのうち3名はOISTで、もう1名は琉球大学で研究しています。博士課程学生から、博士号を取得した後のポスドク研究員、そして准教授に至るまで、研究キャリアの異なるステージにいる研究者たちが、それぞれの成功体験や悩み、科学の道を志したきっかけなどについて体験談を語りました。
主催者の一人で、OIST研究科の科学教育アウトリーチチームリーダーであるメリア・ミラーさんは、次のように述べています。「このイベントの主な目的は、女子生徒たちに科学分野のキャリアへ進むことを考えてもらうきっかけを与えることです。女性研究者たちと交流し、質問したりすることで、そこに自分たちの未来があることを実感してもらう機会となります。」
イベントの2日目には、長寿をテーマにした一連の講義が行われました。
イベントを企画した一人で、OIST研究科の学外エンゲージメントセクションのスタッフである戴芳怡(タイ・ファンイー)さんは、次のように述べています。「昨年は海をテーマとしていて、今回も引き続き沖縄とのつながりが深いテーマにしたいと思いました。沖縄の人たちは、長年にわたって健康と長寿であることで有名ですので、その歴史的背景や、科学的な原因を探りたいと思いました。」
2日目の最初のセミナーでは、OIST のG0細胞ユニットの技術員である照屋貴之博士が、加齢に伴う代謝の変化や加齢性疾患に関する自身の研究内容を紹介しました。
その後、女子生徒たちからは、研究内容やキャリアに関するアドバイスなど、多くの質問が上がり、照屋博士は次のように答えました。「興味のあることを見つけて、自分なりに勉強したり調べたりしてみてください。興味の対象が次々に変わってしまっても大丈夫です。その経験は、すべて将来役に立つはずです。」
その後の講義では、名護市の名桜大学大学院看護学研究科の本村純上級准教授が、地元の恩納村で最も多い死因となっている疾患を取り上げ、県内や国内の他の地域との比較を行いました。
生徒たちがデータの分析と比較を行うと、沖縄が持たれているイメージとは異なる結果が明らかになりました。世界でも有数の健康長寿国である日本国内の他の地域と比較すると、沖縄県民の寿命は長くはなかったのです。
昼食の前には、生徒たちはOIST植物エピジェネティクスユニットが開発したOIST米を試食し、食欲を増進させました。同ユニットを率いる佐瀨英俊准教授は、「OIST米はレジスタントスターチという 酵素で分解されないでんぷんを含むため、消化されにくいお米です。沖縄で深刻な問題となっている糖尿病などの代謝性疾患の予防に役立つかもしれません」と、その重要性を説明しました。
昼食をとった後、生徒たちは、沖縄に自生する果実で、健康に良い多くの効能があるとされる「シークヮーサー」について学びました。
その日の最後には、トータルウェルネスプロジェクト沖縄による講義とワークショップに参加し、沖縄の伝統料理について学びました。生徒たちは、琉球諸島の住民の生活様式について学び、地元で栽培された島野菜を調理し、味わいました。
この2日間で、生徒たちの間には友情が芽生え、沖縄ならではの研究テーマに対する新たな視点も生まれました。
ある生徒は、匿名でこのような感想を書いていました。「今回のプログラムでは、沖縄の長寿について学べただけでなく、科学に対する強い熱意を持つ学生や、実際に研究者になられた女性の皆さんとも交流することができ、貴重な体験となりました。プログラムを通して、理系の道に進みたいという思いが強くなりました。 貴重な体験をありがとうございました。」