OISTの歩みを紹介 ― 10周年記念式典開催
2022年5月22日、沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、10周年記念式典を開催しました。式典には、日本政府、沖縄県庁や理事会など、日本各地のみならず海外からの出席者と大学関係者が一堂に会し、10周年を祝いました。当初は、実際の10周年記念日に合わせて2021年11月に開催が予定されていましたが、渡航制限や感染予防対策のために延期されていました。
式典では、岸田文雄内閣総理大臣よりビデオメッセージが寄せられました。岸田総理はその中で、OISTが10年間で達成してきた成果を祝し、その研究成果が社会に広く還元されることを期待していると述べ、日本政府として今後もOISTの発展を支援していくことを約束しました。
また、OISTのこれまでの歩みとその構想に焦点を当てて制作された動画が上映されました。
式典では、OISTのピーター・グルース学長、細田博之 衆議院議長、西銘恒三郎 沖縄及び北方対策担当大臣、玉城デニー 沖縄県知事、長浜善巳 恩納村長、サントリーホールディングス株式会社新浪剛史 代表取締役社長より式辞が述べられました。
基調講演は、2009年ノーベル化学賞受賞者であり、英国ケンブリッジにあるMRC分子生物学研究所のグループリーダーを務めるヴェンカトラマン・ラマクリシュナン博士がビデオで行いました。博士は、国の豊かさは、科学的知識と情報、イノベーション、技術によるところが大きく、多くの場合、このような知識は他のどの資源よりも重要である、と強調し、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいて科学研究がウイルスの解明に重要な役割を果たしたことを中心に講演を行いました。
また、OIST名誉音楽監督とOIST財団音楽親善大使を務めるヴァイオリニストの加野景子氏が、ピアノ奏者のカレン・ハコビアン氏と共演し、素晴らしい開会・閉会演奏を披露しました。
10周年記念式典の挨拶・祝辞・講演からの引用
「OISTはなんという旅をしてきたのでしょう。この10数年あまり、私たちはなんという旅をしてきたのでしょう。この旅は、ある一人の男性の発想から始まりました。その大胆な発想を、多くの人は叶わぬ夢だと思っていました。それが今、私たちは、その夢が実現していくのを目の当たりにしています。この奇跡は、インスピレーションと大胆さ、人への信頼、そして投資への意欲によるものです。」
OIST学長兼理事長 ピーター・グルース博士
「OISTは2019年、研究機関の中で9位に位置付けられました。貴学が多くの成果を出されていることは、望外の喜びであります。貴学が世界における交流拠点として引き続き貢献を続けられることを御期待申し上げます。」
衆議院議長 細田博之氏
「OISTには設立当初より、世界中から優秀な教員や学生が集まり、学際的かつ先端的な研究・教育が展開されています。最近では、量子の研究に政府内でも注目が集まっており、OISTが量子技術イノベーション拠点の1つとして指定されました。また、研究成果を活かしたスタートアップ、企業との共同研究がさらに活発になり、沖縄の方々にもOISTの価値を一層実感していただけることを望みます。イノベーションの創出が鍵になってくると考えております。」
沖縄及び北方対策担当大臣 西銘恒三郎氏
「OIST は世界レベルの研究機関へと向かっているものと認識しております。その存在は、沖縄の子どもたちにも夢を与えるものです。OISTへの進学や世界貢献を意識する子どもが出てくることを私は大いに期待しております。またOISTでは、サンゴや沖縄モズク、海ぶどう、波力発電のプロジェクトなど、多数の研究も進められており本県の産業振興に貢献が期待されます。」
沖縄県知事 玉城デニー氏
「OISTが設立10周年を迎えられたことに対し、地元恩納村を代表して、衷心よりお祝い申し上げます。恩納村に、世界をリードするような研究機関として、沖縄県の振興と自立的発展に寄与してこられました。本村においては、村内の子どもたちに科学の楽しさや勉強の面白さを指導していただくなど、交流を深めております。」
恩納村長 長浜善巳氏
「私は今、ビジネスパーソンとしての立場でOISTに関わることができることを誇りに思っています。なぜなら、私は常に、科学とビジネスはパートナーであるべきだと考えているからです。私たちは大きな夢を持つことが必要です。日本は、世界レベルの問題解決能力を持つ人材を何十年にもわたり育成してきました。イノベーションは経済の基盤であり、競争力の重要な源です。私は、日本がその強みを失う危機にあると危惧しています。OISTは、世界、沖縄、そして日本に貢献すると信じています。これからの道のりは困難なものですが、同時に多くの可能性を秘めています。」
サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長 新浪剛史氏