ハゼはどこから沖縄へ
9月24日(土)、OISTマリンゲノミックスユニット前田健博士がこれまで進めてきたハゼ類の生活史や分類などの研究を評価され、日本魚類学会より奨励賞を受賞しました。本賞は、優れた研究成果をあげ魚類学の進歩に寄与し、将来の発展が期待される40才未満の研究者に贈られます。「これまで行ってきた研究が認められたことは嬉しいが、まだ多くの課題が残されているので今後も研究を進めていきたい。」と前田博士は抱負を語りました。
前田博士は主に川に生息するハゼ類の研究を行っています。この小さな魚は、その比較的短い一生のうちに、驚くべき旅をします。ハゼ類の一部の種は、東南アジアの川で生まれた後、海に出て黒潮に運ばれ、遠く離れた沖縄の川に遡上すると同博士は考えています。沖縄で普通に見られるハゼ類の中にも、川に上がってくる仔魚の一部に遠く離れた南の島で生まれた個体が混じっている種があると同博士は説明します。
しかし、東南アジアでは研究が進んでいないため、 仔魚の運搬経路や供給源の特定は容易ではありません。前田博士はフィリピンやベトナムの研究者との共同研究も積極的に進めており、沖縄と東南アジアの川に生息するハゼ類の分類や分布、DNAを用いた各地域の個体群間の関係などの解明を目指しています。
「OISTの新しい臨海実験研究施設でハゼの仔魚を飼育し、その形態や行動の変化を調べ、どのようにして運ばれるのかを解明したい。」と、前田博士はその意気込みを語ってくれました。海に近く海水が使えるなどの同施設の地理的利点も存分に活かし、ますます優れた研究が進められていくことでしょう。
研究を進めるかたわら、前田博士は例年、OISTが恩納村と共催しているこどもかがく教室でクラスを受けもっています。また同博士は、沖縄県内の各地で開催される自然観察会などのイベントで講師を務めています。「沖縄では川の生き物に馴染みのない人が多く、川の環境が顧みられない原因の一つとなっています。より多くの人に川の環境を理解してもらうことが川の環境の保全につながることを期待しています。」と、前田博士はしめくくりました。