2014-04-01

新竹積教授が欧州物理学会2014年 Gersch Budker賞を受賞

 この度、OIST量子波光学顕微鏡ユニットの新竹積教授が、欧州物理学会(European Physical Society: EPS)が 加速器分野において優れた業績を収めた研究者に贈る Gersch Budker 賞を受賞することに決まりました。 OIST着任以前、(独)理化学研究所のSPring-8(兵庫県)に建設されたX線自由電子レーザー(SACLA)の技術開発ならびに建設を指揮した同教授。本賞はその功績が讃えられての受賞となります。

 新竹教授の選出について、欧州物理学会は次のように受賞理由を発表しました。「新竹教授は理化学研究所のSPring-8施設において、C-band加速器技術を用いた X線自由電子レーザー(SACLA)の建設を指揮しました。全長400メートルのC-band線形加速器は35MV/mの加速電界を発生し、電子を8GeVに加速することが可能。さらにエネルギー安定度は0.014%という驚異的な性能を誇ります。新竹教授は電子源からC-band加速器 、そしてアンジュレーターの高精度設置など、開発と建設の全面にわたり貢献しました。また、CeB6カソードによる熱電子銃の独創的な設計は、X線レーザーに必須の低エミッタンスと高安定性を実現しました。2011年6月線波長での「レーザー発振」に成功し、多岐に渡る技術革新がここに結実。ゼロから開発されたC-band技術が実用レベルに達したことを実証しました。現在、C-band線形加速器は定常的に運転され、熱電子源から作られた低エミッタンス電子ビームを加速し、安定したX線を発生させています。SACLAの生み出す新しいX線は、原子レベルで物質の構造や機能を解明する手段として、科学、技術、そして産業におけるあらゆる課題を解決に導くものと期待されます。」

 SACLA はC-bandの構想から20年余りの歳月を費やして完成しました。SACLAの建設が開始されると、新竹教授は研究者として、また時にエンジニアとして開発に関わりながら、200名以上のスタッフを率いてプロジェクトの主軸を担いました。 新竹教授は今回の受賞について、「科学技術やノウハウは人の中にあります。失敗や経験を重ねながら学ぶプロセスは、プロジェクト において最も重要です。さらに、ゼロからのものづくりをするからこそ、細部を理解し信頼の持てる装置が作れるのです」と話し、長年にわたるC-bandの研究開発を振り返りました。

 ゼロから装置を作る新竹教授の流儀はここOISTでも実践されています。同教授率いる研究グループでは、量子波効果を用いるという今までとは全く異なるコンセプトで小型の電子顕微鏡を開発しています。この新しい電子顕微鏡は生物試料にダメージを与えることなく原子レベルの観察を可能とします。近い将来、その詳細がまだ明らかになっていないウィルスの構造が解明され、ウィルス感染を抑制することが可能となるかもしれません 。

 ジョナサン・ドーファンOIST学長は、「新竹教授がこの名誉ある賞を受賞されることを心より嬉しく思います」と述べた上で、「『新竹モニター』が導入されたスタンフォード線形加速器センターで共に仕事をして以来、新竹教授とは旧知の仲です。同教授はここOISTでもこれまで同様、創造力にあふれた熟練の研究者にふさわしい素晴らしい研究を続けています」と、お祝いの言葉をよせました。

 新竹教授の受賞の理由として、欧州物理学会は最後に「新竹教授の数知れない革新的な発想は、加速器研究をここ数十年で飛躍的に向上させました。そうした技術の一つに、ナノメートルの電子ビームを測定することに成功した『新竹モニター』があります」と語っています。授賞式は本年6月19日に、ドイツ・ドレスデンにて開催される第5回国際粒子加速器会議(IPAC’14)の中で行われる予定です。

西岡 真由美

(西岡真由美)

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