【展覧会・講演会】科学・芸術・テクノロジーが織りなす未来
世界で活躍するアーティスト、スプツニ子!氏による展覧会「Coral Colors(コーラル・カラーズ)」が、2024年11月29日(金)から2025年1月9日(木)までOISTにて開催されます。
本展では、100年以上にわたるサンゴの変化を記録した科学データを基に、コンピュータのアルゴリズムによって生成されたジェネラティブアート作品が展示されます。科学と芸術が交錯するこれらの作品は、観る者に地球温暖化がもたらす海洋生態系への影響や課題について問いかけます。
白化するサンゴが伝える危機の現実
サンゴ礁は多様な海洋生物の生息地として重要な役割を果たしています。しかし、近年、地球温暖化の影響によりサンゴ礁が白化し、深刻な危機に直面しています。水温が高くなりすぎると、サンゴはストレスを受け、共生する藻類(褐虫藻)を体内から排出してしまいます。この藻類は、光合成を通じてサンゴに栄養を供給する重要な存在で、失われるとサンゴは白化し、最悪の場合は死に至ります。2024年の夏、沖縄近海では海水温が過去15年の平均を最大1.6℃上回り、記録的な高温となりました。この異常気象は、沖縄のみならず世界中のサンゴ礁に前例のない規模の白化現象をもたらしました。
アートと科学が紡ぐ新たな価値の探求
2024年2月、スプツニ子!氏が沖縄科学技術大学院大学(OIST)の初代客員アーティストとして迎えられ、アートと科学の交差点を探るパイロットプロジェクトが始動しました。OISTのキャンパスを訪れたスプツニ子!氏は、OISTの科学者たちとの対話を重ね、気候変動における科学研究に触発されながら、科学データを活用したアート作品の制作に取り組みました。制作の過程では、OIST海洋気候変動ユニットを率いるティモシー・ラバシ教授が科学的なアドバイスを提供し、作品の根幹となるサンゴの変化を記録したデータを共有。このコラボレーションにより、展覧会「Coral Colors(コーラル・カラーズ)が実現しました。サンゴ白化の危機を広く伝え、地球環境の保護について考えるきっかけを作るために、アートと科学の力を融合させた試みとなりました。
さらにこのパイロットプログラムは、新たな資金調達モデルを模索する大きな試みでもあります。本展示のために制作された作品はデジタル資産(オンチェーンアート)として販売され、購入者はデジタル上で作品の所有権を得ることができます。収益の一部はOISTの科学研究の支援に充てられる予定です。
スプツニ子!氏を迎えた特別イベントを開催
展覧会開催に際し、スプツニ子!氏が来沖し、12月7日(土)午後2時より無料の特別イベントを開催します(要予約。登録はこちらから)。イベントではスプツニ子!氏による展示会の紹介に加え、OISTのティモシー・ラバシ教授や沖縄県立芸術大学の土屋誠一准教授を迎え、科学、芸術、そしてテクノロジーが交差する新たな可能性について探求します。
サンゴの未来や地球環境、そして芸術と科学の融合から生まれる新たな可能性を体感できる特別な機会となっています。ぜひご参加ください。
展覧会「コーラルカラーズ展」について
- 展示期間:2024年11月29日~2025年1月9日(12月29日~1月3日を除く)
- 会場:OISTトンネルギャラリー (恩納村谷茶1919-1)
- 入場無料
- ウェブサイト
特別イベント「デジタルキャンバス:科学・芸術・テクノロジーが織りなす未来」について
- 日時:2024年12月7日(土)午後2時~3時
- 会場:OIST講堂 (恩納村谷茶1919-1)
- 参加無料、要予約(登録はこちらから)
スプツニ子! について
英国ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を卒業後、英国王立芸術学院(RCA)デザイン・インタラクションズ専攻修士課程を修了。RCA在学中より、ジェンダーやフェミニズムを軸にテクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を反映させた映像インスタレーション作品を制作。最近の主な参加展覧会に、「New Eden: Science Fiction Mythologies Transformed」アート・サイエンス・ミュージアム (2023年、シンガポール)、「DXP (デジタル・トランスフォーメーション・プラネット) ー次のインターフェースへ」、金沢21世紀美術館(2023年、金沢、日本)、「Myth Makers—Spectrosynthesis III」Tai Kwun Contemporary Museum(2023年、香港)など。2013年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教に就任し、Design Fiction Groupを率いた。現在は、東京藝術大学デザイン科准教授。 公式ウェブサイト: https://sputniko.com/