そのチーズにはそのワインがお薦め? 福永泉美准教授の研究
福永泉美准教授の研究を理解するには、一杯の赤ワインとチーズがあるとわかりやすいかもしれません。 例えば、ある年のワインの味と香りをブルーチーズとカマンベールチーズと共に饗された時に比較する場面を想像してみてください。 福永准教授と研究チームは、これと似たようなことを実験室で調べています。
もちろん、研究者たちは実際にワインの試飲会に出席することはありません。 代わりに、実験室で生成される複数の臭気物質を使用しています。複数の臭気物質がチーズとワインの役割を果たし、マウスの神経機能の観察を可能にしてくれるのです。
「『ウォーリーをさがせ!』という絵本を知っているでしょう?」とOISTで知覚と行動の神経科学ユニットを率いる福永准教授が愉快そうに尋ねます。 「あれとちょっと似ているのですよ。中世の市場でウォーリーを探さなければならない場面とね。脳はたくさんの競合するシグナルの中から、最も関連性の高い情報を探しださなければならないのです。」
福永准教授のチームは、脳が受信するシグナルを解析し、最も関連性の高い情報(この場合は特定の臭いの組合わせ)に焦点を当てるため、脳がノイズとなるシグナルを遮断する方法を研究しています。 動物の脳をイメージング化し、特定の細胞からの電気出力を記録することにより、体験を区別する際に使う動物の神経経路を特定することができるのです。
たった一人から始まり、ほぼ一年で本格活動をしている福永ユニットでは、脳による情報処理の解明の鍵である抑制性ニューロンの研究が行われています。 ニューロン間の接続における特性を含め、異なるタイプのニューロン間の相互作用に着目しています。 これにより研究者らは、脳内の物理的経路をマッピングすることを目指しています。 福永准教授がOISTに着任して以来、この研究は、スピード感をもって進められています。
「福永准教授に初めて会った時は、まったく今のようではありませんでした。」と、9ヶ月近くにわたって福永准教授の下で研究するOIST博士課程学生のアリア・マリ・アデフィンさんは語ります。 現在アデフィンさんは大半の時間を実験に費やしていますが、空っぽの実験室をついこの間のことのように思い出すそうです。
重たい素材の黒のカーテンで光が遮られたエリアで実験が行われる部屋を、身ぶり手ぶりを交えて歩きながら、アデフィンさんは説明します。カーテンの向こう側には、数十本のワイヤーとチューブが組み込まれたカスタム設計の箱型実験装置があり、研究者らは、マウスが嗅覚を用いて何ができるかを調べることができます。
「自分達の実験装置を作ることで、様々なことがフレキシブルに研究できるようになっています」と福永准教授は説明します。
いまだ完成途中の二つ目の実験室には、顕微鏡と一番目の実験室と同様の装置が置かれている台が複数あります。 台の上には、強力な赤外線レーザーが備わっています。 これらのツールにより、使用する臭気溶液濃度、導入する臭気物質の種類数、各臭気物質の混合比などの重要な変数をコントロールしながら、特定の条件下における脳の研究をすることができるのです。
「日々研究を進めています」と、福永准教授は話します。
次の段階としては、様々な実験データをまとめていく作業が待ち受けていると、同准教授は楽しそうに期待を込めて語ってくれました。
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