蒸暑地域におけるサステナブルな暮らしに向けた産学連携共同研究が始動

共同研究に基づくサステナブルリビング実験棟およびバッテリー交換式EVシステム実験設備がOISTキャンパス内に設置され、2016年7月28日に披露会が行われました。

   沖縄科学技術大学院大学(OIST)、(株)ミサワホーム総合研究所および(株)ピューズは、2016年7月28日、沖縄県恩納村谷茶に位置するOISTキャンパス内に、三者の共同研究に基づくサステナブルリビング実験棟1およびバッテリー交換式EVシステムの実験設備2を設置し、関係者、報道関係者を招いて披露会を行い、研究についての説明を行いました。

 OISTがこの実験棟・設備を利用して進めていくのは、「サステナブル リビング プロジェクト」。アジア・アフリカ・中東において、電気や水などのインフラが未だ整備されていない地域においても、快適な暮らしができる住環境を提供することを目的として、実験棟の屋根に設置した88枚の太陽電池で発電された電力(最大出力7kW)と、実験棟の外に設置した2機の風力発電機(各1kW)で発電した電力を直流(DC)のまま蓄電し、直流エアコン、直流家電に使用されるという住宅内直流給電システムを実証していきます。OIST北野宏明教授は「地球規模で起きている環境問題を解決していきたい」として、OIST内で行っているオープンエネルギーシステムズに、今回のプロジェクトを加えることで、再生可能エネルギーを最大限に利用した仕組みを島しょ地域や発展途上国のコミュニティへ導入することを目指していくことができると述べています。

 ミサワホーム総合研究所がOISTでの実験棟を利用して実証していくのが、「蒸暑地サステナブルリビング」。屋根に設置した太陽電池が発電する際に、発電に寄与しないエネルギー(熱)を活用して室内の除湿を可能にするシステム(「カスケードソーラー」回収した熱を活用した夏期除湿空調)、壁や天井を冷却する放射冷房システム(非結露型壁放射冷房)、宅内DC給電などがその研究内容です。合わせて、雨水や、除湿の際に生じる水を生活用水として活用する地産地消型水システムの開発も行っていきます。ミサワホーム総合研究所の佐藤春夫代表取締役社長は、「OISTとの共同研究を、今後の人口増加で住宅建設とエネルギー需要の増加が見込まれる東南アジアなどの蒸し暑い地域において、省エネルギー住宅や環境負荷の小さいまちづくりを目指すうえで重要な技術とノウハウを蓄積するきっかけにしたい」と話しました。

 実験棟には、太陽電池と風力発電機で作り出された再生可能エネルギーを、電気自動車(EV)用バッテリー(容量1.5kWh)に充電できるシステム(スワップステーション)も設置しています。これは、日中車を使用しているときでも留守中に交換用バッテリーを充電しておくことで、使いたいときに車に搭載でき、さらに充電ステーションでの待機時間を省略できるという利点があります。交換式バッテリーを利用することにより、コミュニティ内の電力と移動用のエネルギーの自給自足を促進させるこのプロジェクトを行うピューズの宮下泉取締役は、「OISTのキャンパスは、島しょ地域などに適したバッテリーとシステム、電気自動車とその管理システムを開発するのに適した場所」と、OISTとの共同研究の意義を語りました。さらに、「この技術はコミュニティのエネルギー管理や、電力脆弱地域や無電化地域の電力事情の改善に貢献します。また、災害時の電力確保にも有効で、台風時の停電対策等に効果を発揮し、沖縄県の電力事情の改善に貢献します。」と語りました。

 説明会にて挨拶したOISTジョナサン・ドーファン学長が「これらのシステムが近い将来もたらすであろう、生活を一変させるような技術革新をこの目で確かめる日がくることを心待ちにしています」と語ったように、OISTのキャンパスから生まれる新たな技術が、私たちの生活を、そして世界を、変えていくかもしれません。

※1 サステナブルリビング実験棟
エネルギー効率が良く、かつ快適な生活を実現する住宅の開発を目的とした実験棟。沖縄や東南アジアといった蒸暑地での生活に必要なエネルギーおよび水について、持続可能(サステナブル)な導入および利用を可能にするシステムを開発・構築する。

※2 バッテリー交換式EVシステムの実験設備
交換型バッテリーを中心に再生可能エネルギーの効率的利用を目標とするマイクログリッドシステムを開発する。また、島しょ地域に適した交換型バッテリー、充電システム(スワップステーション)、電気自動車とその管理システムを開発し、島しょ地域や途上国に将来導入することを目的とした実験設備。
 

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