OIST学長が素粒子物理学の賞を受賞
この度、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のジョナサン・ドーファン学長が、 デービッド・ヒトリン博士、スティーブ・オルセン博士、髙﨑史彦博士と共に、2016年パノフスキー賞を受賞しました。同賞を授与するアメリカ物理学会は受賞の理由として、「B中間子におけるCP対称性の破れを実証し、クォーク混合及び量子色力学の理解を深めたBABAR(ババール)とBelle(ベル)の両実験において発揮されたリーダーシップを称えて」としています。1985年に設立された同賞は、アメリカ物理学会が素粒子物理学分野の実験物理学の功績を称えて授与する名誉ある賞です。
米国スタンフォード線形加速器センター(SLAC)(現、SLAC国立加速器研究所)にて1999-2008年に実施されたBABAR実験、および高エネルギー物理学研究所(KEK)(現、高エネルギー加速器研究機構)にて1999-2010年に実施されたBelle実験。この二つの素粒子物理学実験において、ボトムクォークを含む中間子であるB中間子を多量に生成・分析することで、誕生直後の宇宙 の状態が調べられました。本実験は、B中間子と反B中間子の違いを検証することで、なぜ宇宙は物質で満たされており、反物質が存在しないかという謎を究明することを目指したものです。
物質と反物質の違いを精密に計測したこの二つの実験が、小林誠博士・益川敏英博士が提唱した「小林・益川理論」の裏付けとなり、両博士の2008年のノーベル物理学賞受賞につながりました。
ジョナサン・ドーファン学長とデービッド・ヒトリン博士は、BABAR実験において多大な貢献をしました。ドーファン学長はSLACにおけるBABAR検出器の設計・建設に携わっただけでなく、PEP II加速器の建設および立ち上げにおいても中心的な役割を果たしました。一方、Belle実験の成功の鍵を握ったのがスティーブ・オルセン博士と髙﨑史彦博士です。