国際的な賞を受賞した物理学者がOISTに着任
OISTでは、昨夏より物理科学分野で優れた研究業績とリーダーシップを備えた研究者の採用活動を積極的に進めてきました。そして、今月新たにOISTに着任することとなった代表研究者が、新竹積博士です。
OIST着任前は、理化学研究所大型放射光施設(SPring-8)のX線自由電子レーザー施設「SACLA(さくら)」で200名のスタッフを率いていた新竹博士。総工期5年、総費用約400億円を費やしたSACLAにおいて、Cバンド主加速器の建設を統括するとともに、SACLAに採用された「チョークモード型加速空胴(新竹構造)」*** の研究にその発明から20年の年月を費やしました。このSACLAの成功により、新竹博士は本年8月に中国・上海で開催された第33回自由電子レーザー国際会議において自由電子レーザー(FEL)賞を受賞しました。同賞は、新竹博士の同分野の科学技術に対する貢献を称えたものです。
新竹博士のOISTでの研究目標は、量子波効果を用いるという今までとは全く異なったコンセプトで小型の電子顕微鏡を開発することです。この研究は、同博士が率いる「量子波光学顕微鏡ユニット」の由来となっています。この新しい電子顕微鏡を用いることで、現存する電子顕微鏡とくらべてずっと極小の物体の構造を見ることが可能になります。
新竹博士、ようこそOISTへ!
*** チョークモード型加速空胴(新竹構造)を用いることで、陰極などの電子源から発射された電子を、電子の質を劣化させることなく線形加速器で加速させた後、アンジュレータ装置にほぼ直線的な軌道で通過させることが可能となった。このアンジュレータ装置の中で電子は強い周期磁場に影響を受け、強力なX線を放射する。
(文:ジュリエット・ムセウ)