2020年5月17日更新
「COVID-19分子地図プロジェクト」は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に関わる分子間相互作用の全貌を解明し記述することを目的とした、国際的かつ学際的な取り組みです。最終的には、COVID-19の治療法を見つけるために必要な研究を提供することを目指しています。このプロジェクトには現在、世界中から150名を超える研究者が参加しており、今後数週間でその数はさらに増えると予想されます。
プロジェクトに参加しているOISTの統合オープンシステムユニットを率いる北野宏明教授は、次のように話しています。「世界各国からバイオメディカルシステムやウイルス学、病理学の専門家が集まり、新型コロナウイルス感染症の分子的背景の解明に挑んでいます。国際協力によって分子間相互作用に関する情報のデータベースを作成し、他の研究の基礎となる有用なリソースを提供しています。」
北野教授は以前、インフルエンザウイルス(H1N1とH5N1)の宿主との相互作用を研究しました。「季節性インフルエンザと新型コロナはどちらもウイルスであり、 違いはありますが類似点もあります。」
北野教授が持つ感染症の専門知識に加えて、OISTはCellDesignerソフトウェアやシステム生物学マークアップ言語(SBM)、システム生物学グラフィカル表記(SBGN)など、プロジェクトで極めて重要な役割を果たす技術を提供しています。
今後数週間にわたって、研究者たちは分子間相互作用のデータの開発を行い、さらに分子間相互作用ネットワークのダイナミクスを明らかにするためのシミュレーションを開始するまでに至る可能性もあります。新型コロナウイルスの研究は開始からまだ数週間しか経っていないものの、分子地図の基盤技術は10年以上前から国際的な開発が行われており、これまでさまざまな生物医学的問題に応用されてきました。
COVID-19分子地図は、将来の感染症流行やパンデミックにも活用できる可能性があります。「ウイルス感染の基本的なプロセスには多くの共通点があります。人間は過去にもエマージング・ウイルスに苦しんできましたし、 未来においても私たちを脅かす存在であることでしょう。SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)だけでなく、さまざまなウイルスに関する分子間相互作用および宿主応答の網羅的な地図を作成することは、非常に役立つリソースとなります。これにより、未来のエマージング・ウイルスのメカニズムと可能な治療オプションを迅速に見つけるための、基礎研究レベルでの準備態勢が向上することでしょう。」と北野教授は話しています。