マヘッシュ・バンディ准教授と研究チームは、綿あめ製造機に電圧をかけて粉末状のポリマーを使うことで、COVID-19の蔓延との闘いに役立つマスク用の生地を作成しました。
2020年11月25日更新
「Electrocharged facepiece respirator fabrics using common materials」が学術誌「Proceedings of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Sciences」で発表されました。
2020年4月15日
COVID-19がフェイスマスクなど必要な防護具の材料の不足を引き起こしているため、非線形・非平衡物理学ユニットを率いるマヘッシュ・バンディ准教授がこの度、N95マスクの原理にヒントを得たマスク製造方法をOIST学内で開発しました。
「自家製の布製マスクも、ほとんどの市販のマスクも、COVID-19ウイルス粒子をフィルタリングすることはできません。一方N95マスクは帯電した層が含まれているため、ウイルス粒子をブロックできる唯一利用可能な設計なのです。」と、バンディ准教授は語った。
N95マスクを製造するため使用される技術は、日常の材料で再現するのは難しいですが、バンディ准教授は不可能ではない、と強調します。
「必要な生地を生成する簡単な方法があるのですよ。少々改造した綿あめ製造機を使うのです。」とバンディ准教授は説明します。
綿あめ製造機は、高速で回転する小型の円筒状の内側容器とそれを囲む大型のドラム缶のような外側容器でできています。小型円筒状の容器には小さな穴があり、カラメル状になった砂糖が、綿あめのように噴出されます。バンディ准教授は、綿あめ製造機を改造し、カーバッテリーを使って電圧をかけました。
バンディ准教授は砂糖の代わりに、粉末状のポリプロピレンポリマーを小型円筒状の容器に注ぎました。このポリマーは、ペットボトルと同じ素材であるポリプロピレンプラスチックから作成できます。円筒状の容器が回転し始めると、ポリマーを熱し、帯電ナノファイバーの生地が作られます。
生地を作成しさえすれば、マスクを作るのは簡単です。カーバッテリーを使って12〜14ボルトの直流電流をかけた生地を3枚を作成する毎に、電圧をかけていない生地2枚を作成し、できあがった電圧ありと電圧なしの繊維をそれぞれ集め、2つの清潔で平らな硬い面の間に押しはさんで2種類の平らな生地にします。次に、電圧をかけていない繊維で作成されたファブリックを外層に、電圧をかけて作成された生地を内側の3層にして挟んで、5層の布地にします。この層状の生地材料を、6 cm x 6 cmの小片に切り、折って縫い合わせればできあがりです。
このようなプロセスで、バンディ准教授は医療用と同レベルのフェイスマスクを複製するため必要な材料と方法を開発しました。新型コロナウイルスの危機的状況下で従来のN95マスクを利用できない場合、この代替案は救命につながる可能性があります。 詳細については、バンディ准教授の一般的な材料で作れるN95帯電フィルターマスクのページをご覧ください。
このプロジェクトはまた他分野にわたるものであり、生体分子電子顕微鏡解析ユニットを率いるマティアス・ウルフ准教授、石津範子さん、エンジニアリングサポートセクションチーム、OISTイメージングセクションチームなど、OIST学内の多くの共同研究者の支援を得て作成しました。