グローバルな視野と地域への貢献
世界水準の研究を行うことはOISTの主な目的のひとつです。それと同時に、地元沖縄の地域社会への貢献もまた、OISTおよび本学の研究者にとって重要なことです。2012年12月16日、県内の子供たちに科学の素晴らしさを体験してもらうため、OISTの生物多様性・複雑性研究ユニットのメンバーらは、沖縄本島北部に位置する国頭村を訪ね、子供たち約30名をアリとシロアリの世界へといざないました。
同ユニットを率いるエヴァン・エコノモ准教授は、「科学者は、身近な世界で何が起きているかを知りたいと思っています。ときには、その対象が目と鼻の先にある場合もあります。」と子供たちに説明しました。また同教授は、「私たちは沖縄で暮らすことができてとても嬉しく思っています。皆さんが大きくなって、一緒に研究ができる日を楽しみにしています。」と話しました。
同ユニットのベノア・ゲナー研究員による昆虫の多様性と社会性に関する短い発表に続き、小学生を中心とした参加者の子供たちは4つのグループに分かれ、この小さな生き物について更に詳しく学びました。1つめのグループでは、同じく同ユニットで活躍するベアトリス・レクロ研究員が、アリがフェロモンと呼ばれる化学物質を分泌することで餌の位置や敵の存在などの情報を仲間とどのようにやり取りしているかを、実際に子供たちに見せながら説明しました。別のグループの子供たちは、エコノモ准教授と同教授の研究室に所属するビジティング・ステューデントのサンドリン・ブリエルさんの手を借りて、顕微鏡を使って生きたアリとアリの標本を観察しました。また、3つ目のグループでは、子供たち一人ひとりにアリを保管しておくためのチューブが配られ、子供たちは中に入れるアリを、ゲナー研究員とアダム・ラザルス研究技術員と共に屋外で採取しました。最後のグループでは、子供たちが紙の上にボールペンで線を描き、その線をたどっていくシロアリの様子を観察しました。興味深いことに、ボールペンのインクに含まれる化学物質は、シロアリのホルモンに非常に良く似ていると、シロアリの実験を担当したOISTサイエンステクノロジーグループのリサーチサイエンティスト、ワニータ・チューさんと、生態・進化学ユニットの岡本美里研究員は説明しました。
子供たちだけではなく、付き添われていた保護者の皆さんも昆虫に興味津々のようすでした。お孫さんと共に参加し、一緒にアリを捕まえたり、顕微鏡で観察されていた知花ヒロ子さん(80)は、「これまでアリなどの害虫と見なされる虫は駆除していましたが、今日参加して見方が変わりました。これからはできるだけ殺さないようにします。」と話してくださいました。この知花さんの言葉に心を動かされたエコノモ准教授は、知花さんと9歳になるお孫さんの新君に同ユニットの研究室の見学にくるようご招待しました。お祖母さまによると、新君は生物や昆虫に特に興味があり、部屋は「実験道具でいっぱい」だそうです。
本イベントは今年度OISTが沖縄県のご協力を得て開催する3回の出前講座のうちの1つです。来年1月にはOIST学生の渡邉桜子さんと細胞分子シナプス機能ユニットの江口工学研究員が宮古島を訪れ、子供たちに科学や自分たちが行っている研究について話をします。また、同月に、生物システムユニットのラリサ・キセレバ研究員が西表島を訪れ、講演を行うと共に、バナナからのDNA抽出など、子共たちが参加できる実験を行う予定です。上記に加え、OISTが恩納村教育委員会と進めている取組の一環として、今後OISTの研究員が恩納村の複数の中学校で講演を行います。
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