OISTに第9期生が入学
2021年1月15日に、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の2020年度新入生歓迎式典が行われました。新入生は、1126人の応募者の中から選ばれた18の国と地域からの62名で、2012年にOISTの博士課程プログラムが始まって以来、最多となります。
2020年は、博士課程の開始には厳しい年でした。新型コロナウイルス感染症のため、通常9月に開催される式典は1月に延期を余儀なくされました。2020年の大半を通じて国境を越える移動に制限があったため、実際にキャンパスで博士課程プログラムを開始することができたのは、62名の学生の約3分の1のみでした。その他の学生はラボ・ローテーションを延期したり、オンラインで開始したりしなければなりませんでした。学生支援セクションが、移動の制限が一時的に解除された際に、即座にビザ申請や転居の手続きを行い、61名の学生が無事にキャンパスに到着することができました。
新入生歓迎式典では、適切な社会的距離を保つための措置が講じられ、出席者は通常よりもかなり少なかったものの、世界中の友人や家族が式典の様子を見られるように、ライブストリーミングで配信されました。
OISTのピーター・グルース学長はスピーチで、世界が今直面している多くの地球規模の課題を取り上げ、なぜ今、科学者や学生、さらには科学研究がこれほど重要なのかを説明しました。
「世界が急速に変化し続ける中、私たちは、気候変動ならびに持続可能なエネルギーの提供、人口増加に対する食料および清潔な水の供給、そして人類の健康および地球の生態系の維持など、さらに多くの重要な課題に取り組み続けなければなりません。教育と研究は、この取り組みにおいて不可欠です。」
「皆さんこそが、それを担うのです – 皆さんの世代は、重要な役割を担っています。地球の未来は、皆さんの創造性、知性、誠実さ、責任感にかかっています。現在、第四次産業革命が私たちに迫っています。私たちを未来に導くために必要な技術的進歩、画期的なイノベーション、新たな分野の職業の多くは、まだ存在すらしていません。皆さんは、その最前線にいます。科学の新領域を開拓し、人類の未来を決定する機会があるのです。」
挨拶は、新入生へのメッセージで締めくくられました。
「OISTでは、トップレベルの研究、教育、イノベーション、そして起業家精神が提供されます。これらすべてが、科学の世界で生き、やりがいのある職業に就くための良い基盤となります。今、OISTが提供する機会を受け入れ、その先にある課題に立ち向かうかどうかは、第9期生である皆さん次第です。私たちの未来は、皆さんの成功と献身にかかっています。」
OISTはまた、15名の新任教員を迎えました。その分野は、理論数学から生命の進化、頭足類の行動まで広範囲です。各教員が自己紹介を行い、研究内容や背景を説明しました。
続いて、2016年度生の博士課程の学生であるアイナシュ・ガリフルリナさんが、OISTの学生評議会を代表して新入生に挨拶をしました。2020年度の学生評議会行事の執行役員であるガリフルリナさんは、学生生活で皆がそれぞれ達成することを共に喜び、できる限り友人や家族と過ごす時間を大切にすることを呼びかけました。
「初めての学会発表、初めての論文発表、そして最後の博士論文審査会の時の感動を共に分かち合えるのが、ここにいる人たちです。未だ実感が沸かないかもしれませんが、皆さんにはそれを実現するために必要なものすべてがあり、私たちは皆さんをサポートします。ご入学おめでとうございます。皆さんの健闘を祈ります!」
式典の最後には、沖縄の楽器である三線を演奏するグループ「チンダミ」など OISTのメンバーらによる沖縄の伝統的な演奏と舞踊が披露されました。
式典の締めくくりにOISTメンバーによってこのようなパフォーマンスが行われたことは、OISTと沖縄との関係において重要な意味を持つでしょう。これは、沖縄の伝統的な言語である琉球諸語で、さらに恩納村の方言で「共に働く」という意味をもつ「エーデー」と呼ばれる取り組みの一環としておこなわれたものです。この取り組みは、OISTのコミュニティが地域の文化をさらに受け入れ、沖縄の社会に溶け込んでいくことを目的としています。
OISTの2020年度生早わかり
- 18の国と地域62名
- 女子学生30名、男子学生32名
- 日本人学生13名
- マダガスカルおよびレバノンから初の入学生
2020年度生の中に、マダガスカルからの初の応募者と同時に新入生であるトウジョウアリシュ・ラコトアリティナさん(「トウジョウ」さん)がいます。日本で修士号を取得したトウジョウさんは、OISTが専門分野間に壁のない学際的な研究に重点を置いていることや、博士課程の学生用の資金サポートがあることを理由に応募したと言います。
特に人工知能とデータサイエンスに関心を持っているトウジョウさんは、「この分野にはまだ多くの発見が待ち受けています。博士課程の学生として、新しい知識を発見し、科学研究に貢献する機会を得ました。OISTで、特に人工知能の分野で有名な研究者たちと一緒に研究ができることを楽しみにしています」と述べました。
新入生の中には、初のレバノン出身者であるサラ・ザキャさんもいます。ザキャさんは、日本での博士課程プログラムを探してOISTの存在を知るに至りました。
「私は、日本文化にずっと興味を持っていました。OISTは、豊富なリソース、手厚い資金サポート、国際的な環境など、すべての条件を満たしています。OISTに来られたことを、とても幸運に思います。また、日本語を学び、沖縄の地域社会に溶け込み、何らかの形で貢献したいと思っています」と、ザキャさんは抱負を語っていました。