ナノ粒子の世界を照らして
食品サンプル中の有害な病原体など、物質中の生体物質を光を利用して検出するバイオセンサーを沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者らが開発しました。
現在標準的に用いられるバイオセンサーは、感度及び精度の面で限界があります。個々の分子ではなく、分子が集積した効果しか検出できません。しかし本研究チームが[1] 開発した装置は、標準の280倍も高い感度があります。
OIST量子技術のための光・物質相互作用ユニットは量子技術のための光・物質相互作用ユニット、米国ウィスコンシン大学の研究者らと協力し、光共振器の一種を用いてナノ粒子を個々に区別できるリアルタイム高解像度画像の作成に成功しました。この研究成果はACS Nanoに掲載されました。
ナノスケールの化学
OISTの研究者らはここ数年、細長いガラス管に中が空洞のガラス殻を取り付けたマイクロバブル共振器を使用した実験を行ってきました。マイクロバブル共振器を水で満たしてから、光のビームを当てると、光波が素早く水中を循環し、共振器の表面にある粒子の物理的および化学的性質を調べることができます。
今回の研究では、ウィスコンシン大学の共同研究者らがマイクロバブル共振器のガラス球の内側を金のナノロッドでコーティングしました。
研究者らは、レーザービームを照射して加熱したナノロッドを特定の化学物質や光に暴露させ、形状や配向、界面化学がどのように変化するかを観察しました。
ナノ粒子は光を吸収すると熱を帯びます。すると共振器から放射される光周波数が温度上昇によってシフトします。このナノ粒子温度のシフトを驚異的な精度で測定・画像化することに成功したのです。
「この共振器は非常に感度の高い温度計として利用できます」と研究者らは説明します。
次のステップとしては、この光熱感知技術をナノ粒子ではなくタンパク質に応用するため、金のナノロッドの代わりに[1] タンパク質で共振器の内部をコーティングする予定です。タンパク質の形状が変化することでその光学的および熱的特性も変化し、共振器表面での分子レベルの事象をさらに研究することができるようになるだろうと研究者らは期待しています。
この方法は、微小ウイルスまたは一本鎖のDNAを検出するのにも使える可能性があります。
「通常小さなタンパク質の高解像度画像を得るには電子顕微鏡が必要ですが、電子顕微鏡はタンパク質を損傷してしまいます。克服すべき技術的課題もまだ多く残っていますが、我々の技術が商業化された場合の可能性は非常に大きいのです。」と、本研究の共著者であるジョナサン・ワード博士は語っています。
研究ユニット
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