OIST理事会が今後の展望を語る
沖縄科学技術大学院大学学園(OIST)の理事会の第6回会合が5月9日と10日にOISTキャンパスにて開催されました。また、学園の諮問委員会である評議員会の会合が同日に開催されました。
理事会及び評議員会にて進捗報告を行ったOISTのジョナサン・ドーファン学長は、現在OISTが大学院大学として本格稼働していることを説明しました。本学の設立理念でもある、世界最高水準の教員・学生を獲得し、真に国際的で学際的な研究教育拠点を構築するという目標が既に現実のものとなっています。また、ドーファン学長は、伝統の殻をやぶり、新たな大学院大学の設立を推し進めてきた日本政府の尽力に感謝を述べました。更に、学長は、この半年間に、天皇皇后両陛下をはじめ、安倍晋三内閣総理大臣、及び山本一太内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、科学技術政策、宇宙政策)を本学にお迎えしたことに触れ、「このような方々にご訪問頂き、大変光栄に思います」と述べ、「教職員・学生一同は、これらのご来賓の方々に、本学にかける情熱や意欲をお伝えする機会を頂き、誇りに感じています」と語りました。
OIST上級副学長のロバート・バックマン博士は、第2期生となる博士課程の学生の選考及び新たな教員5名の新規採用活動が順調に進んでいることを説明し、「現状では、応募者のレベルが非常に高く、心強いです。引き続き、高い水準を維持していきます。」と、抱負を語りました。バックマン博士はまた、沖縄沿岸海域の海洋観測システム開発の進捗や海洋研究支援セクション及び物理研究支援セクションの立ち上げについても報告しました。
これまでの理事会会合では、OISTキャンパスにおけるチャイルド・デベロップメント・センター(幼児教育・学童保育施設)の整備が、優秀な教員・学生の獲得及び維持に欠かせないと提言されました。ドーファン学長は、2013年1月に仮設のプレスクールがオープンし、現在47名の未就学児と10名の学童が「てだこ」(沖縄の方言で「太陽の子」を意味する)と命名された同センターに通っていることを非常に嬉しく思うと語りました。チャイルド・デベロップメント・センターの恒久的な施設の整備は、2013年度予算案に含まれています。
次にドーファン学長は、大学の将来計画に触れ、第3研究棟の建設予算が2012年度の補正予算で措置されることを理事会及び評議員会に報告し、「政府の本学に対する信頼に感謝します。建設工事は2013年の夏に開始されます。」と述べました。第3研究棟には、教育活動のための追加スペースや研究室が整備される一方、低層階部分は本学の事業開発や技術移転などの機能を果たす専用スペースが設けられます。2014年に第3研究棟が完成することで、本学のキャンパス整備計画の第一段階が終了することになります。
OISTは、世界トップクラスの研究機関の設立という日本政府による構想を具現化したものです。理事会では、これまでのOISTの発展は日本政府からの多大な資金援助があったからに他ならないとの認識を新たにしました。沖縄科学技術大学院大学の枠組み案には、開学後10年間は運営に必要な資金援助を政府から継続して受けられるようにすることの重要性が示唆されています。この当初十年間にわたり、政府より運営資金が毎年度安定的に供給されることについて、政府の確約を求める決議を可決しました。
理事会は、本学の今後10年にわたる将来計画を検討するための委員会を設置することを決定しました。この委員会では当該期間に大学の規模を2倍に拡充するモデルを検討することになります。理事会議長のトーステン・ヴィーゼル博士は、「多くのことが達成されたことを踏まえ、世界最高水準の大学院としてのOISTの地位を確固たるものにするためには今後何が必要かを検討していかなければなりません」と述べ、「OISTが掲げる非常に高い目標を達成するためにふさわしい大学の規模を検討することは極めて重要です」と強調しました。
これまで理事会の一員としてご尽力いただいた李遠哲博士とマーティン・リース博士は今回の会合をもって理事をご退任されることとなりました。一方、理事会の重要な役割である新理事の選任が慎重に進められた結果、尾身幸次氏に理事への就任が要請され、同氏は2013年10月付でOISTの理事に就任します。「2001年に、当時の沖縄・北方対策、科学技術政策担当であった尾身幸次元内閣府特命担当大臣が、有馬朗人博士とともに沖縄科学技術大学院大学構想を提唱しました。尾身氏が示した強い決意により構想が具体化され、今日のOISTが存在します。その取組みに深く感謝の意を表します。」とヴィーゼル博士は述べ、「このようにご尽力いただいた尾身氏が理事会に加わることとなり、大変嬉しく思います。今後有益なご助言やご意見を頂けるものと期待しております。」と歓迎の意を表しました。