女性科学者活躍支援のための「リタ・R・コルウェル・インパクト基金」が設立
人類が直面している大きな課題に立ち向かうためには、社会のあらゆる分野からの多様な視点や経験、そして専門知識が必要とされることは皆が同意するでしょう。しかし、科学・技術・工学・数学(STEM)の分野における女性研究者の割合は、世界で30%未満に留まり、多様性に欠けています。さらに日本では、この割合は20%以下となっています。
この格差を解消するため、ニューヨークに拠点を置く非営利団体のOIST財団と沖縄科学技術大学院大学(OIST)が、この度共同で「女性科学者活躍支援のためのリタ・R・コルウェル・インパクト基金」を設立します。
この基金は、OIST学内でさらなる多様性と男女平等の文化を育み、沖縄県内の科学に興味を持つ女性や少女を育成し、女性がキャリアを積んで科学分野のリーダーとなる機会を作るために活用されます。
米国で著名な微生物学者のリタ・コルウェル博士は、OISTの理事の一人です。博士は、女性研究者の先駆けとして数々の困難に直面しながらも、健康、水、世界的な感染症の研究において偉業を成し、科学界で着実にキャリアを築いてきました。また、OISTの理事以外にも、1998年から2004年に米国国立科学財団(NSF)で女性初の理事長を務めた経歴を持ち、現在はメリーランド大学カレッジパーク校およびジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院の特別栄誉教授も務めています。
コルウェル博士は、このような重要な基金に自身の名前が付くことを心から光栄に思うと述べています。
「多様性は非常に重要です。経営陣に多様性がある企業は生産性が高く、収益も高いことがわかっています。それは、より多くの意見や提言、そして視点が蓄積され、戦略的な方向性が広がるからです。人類がもつ才能を、このようにしてフル活用することができるのです。そして、新型コロナウイルス感染症を始め、不平等、貧困、気候変動など、私たちが直面している課題に取り組むためには、すべての才能が必要とされているのです」とコルウェル博士は強調します。
自身のキャリアについて語る上で、必ずしもその道を平坦に進んできたわけではなかったことを博士は認めています。過去には多くの段階で妨害があったと説明します。「先生方は女性が科学や工学分野で就職を目指していても、推薦状を書いてくれませんでしたし、特別研究員の資格は女性にはもったいないと言われました。現在、状況は改善されつつありますが、まだ何世代もかかるでしょう。」
「OISTは、日本にとって非常に必要な存在であると思います。それは、素晴らしい多様性と卓越した研究の場であるからです。私は、女性科学者の採用に尽力しているOISTの理事であることを大変誇りに思います。この基金を活用して、OISTにより多くの女性を呼び込み、彼女たちのキャリアを発展・育成できることを願っています。」
日本の他の大学とは著しく対照的に、2020年度にOISTに入学した博士課程学生62人のうち、30人は女性です。また、OISTは文化的多様性も豊かで、博士課程学生の83%と教員の63%が海外の出身です。
この基金の重要性をさらに強調しているのが、沖縄県出身の天文学者である嘉数悠子博士です。彼女は現在、ハワイのすばる望遠鏡と国立天文台の30メートル望遠鏡(TMT)プロジェクトのアウトリーチ・スペシャリストを務める傍ら、OIST財団の教育大使も務めています。
嘉数博士は、次のように振り返ります。
「私が子どもの頃にOISTのような場所があればよかったのに、と思います。私が大学生だった頃は、女性は家にいるべきで、沖縄県外へ出て行くべきではないと考えられていました。大学に入学したときには、ある教授から『女性は物理学に向いていない』とも言われましたし、200人いた学生のうち、女性は3人しかいませんでした。」
さらに博士は、次のように説明します。「日本の状況は少しずつ良くなってきていますが、まだ大きな遅れをとっています。この基金を活用して、より多くの女性にSTEM分野への参入を促し、科学者というキャリアが現実的な選択肢であることを示すことができるようになります。」
女性科学者活躍支援のためのリタ・R・コルウェル・インパクト基金へのご支援については、下記までご連絡ください。
OIST財団(米国):oistfoundation.org | david@oistfoundation.org
OIST (日本):groups.oist.jp/giving | donation@oist.jp