OISTサイエンスフェスタ2025―未来の科学者たちへ創造的刺激を

さまざまな年齢の子どもたちが、科学者の世界に触れ、学び、体験しました。

科学と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?多くの人にとっては、専門家が遠い研究所で行うものと感じられるかもしれません。しかし、科学の根幹にあるのは、誰もが持つ「好奇心」です。

25年2月1日、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のキャンパスは、その好奇心を刺激する場となりました。子どもから大人まで約2000人の参加者が集い、17の体験型科学ブースやステージショー、レクチャー、ガイド付き体験を楽しみました。OISTで開催されたイベントの中でも最大規模となったこのサイエンスフェスタは、大盛況のうちに幕を閉じました。

「子どもたちや保護者の皆さんが楽しそうにしている姿を見て、とても嬉しかったです。この成功の裏には、約200人のOISTの教職員サポートスタッフや中高生ボランティアの尽力があります」と、イベントの企画・運営を担当したOIST地域連携セクションの池田有砂マネージャーは語りました。

ドキドキの世界

ステージが暗転し、スポットライトがバケツに当たると、石鹸水からホースが持ち上げられます。ホースの片方の端は石鹸水に覆われ、もう片方はドライアイスの容器につながっています。すると、周囲の空気中に気泡が発生し、それまで見えなかったものが鮮明に浮かび上がります――。幻想的な演出に、500人の観客から驚きの声が上がりました。光の分散、赤外線の可視化、炎の色の変化など、さまざまな光の特性を実験を交えて解説が行われました。子どもたちもその保護者も、夢中でステージに釘付けになりました。

子どもから大人まで多くの参加者で埋まったOIST講堂の様子。ステージでは、白衣の科学者2人がパフォーマンスを行った。2人の前のテーブルには、実験で使用する道具が置かれている。
OISTの講堂で、博士課程学生のジャック・フェザストーンさんとモニカ・エイガンバーガーさんが、竹野内真理さんの通訳を通じて、光とその性質に関するさまざまな科学実験を披露し、子どもから大人まで、観客は釘付けになった。
ワシル・ワスキヴスキ(OIST)

「私たちのショーに子どもたちが目を輝かせていたのを見て、本当に嬉しかったです!」と語るのは、博士課程学生のジャック・フェザストーンさん。同じく博士課程学生のモニカ・エイガンバーガーさん、通訳の竹野内真理さんと共に、観客と対話しながら科学の魅力を伝えました。「科学には多様な側面があります。例えば火ひとつ取っても、光の波長を探ったり、紫外線から肌を守る新技術を開発したりと、異なる視点が新たな発見につながるのです。」

サイエンスショーの様子。(写真左)逆さにしたウォーターディスペンサーボトルに青い炎が灯り、真っ黒な背景をバックに炎が噴き出す様子。(写真右)博士課程学生のジャック・フェザストーンさんの顔が、右手のひらのオレンジ色の炎で照らされている。左手に持っているのは着火ライター。
異なる化学物質は燃焼すると、それぞれ異なる波長の光を発する。写真左は、エタノールを含んだ透明な容器に点火し、青い炎が上がる様子。写真右は、博士課程の学生でサイエンスショーを実演するジャック・フェザストーンさんが、プロパンガスを充填したシャボン玉に点火する様子。(※これらの実験は大変危険ですので、ご家庭では絶対に行わないでください。)
ジェフ・プライン(OIST)

キャンパスのとある会場では、参加者がさまざまな不思議な現象を体験しました。色の異なる粘度の液体が層をなすガラス管に、小石を落とすとゆっくり沈んでいきます。その動きを観察する子どもたちは、目を輝かせながら、小石の動きを追いかけていました。

黄色と透明の液体で満たされたガラス管を熱心に見つめる子どもたち。透明な液体の中に、黒い小石が浮いている。この部屋では、子どもたちや保護者がさまざまな液体の実験に参加した。
黒い小石が円柱内の異なる粘度の液体層を通過するにつれて、その速度は大きく変化し、最も粘度が高い最下層では、小石の動きが亀の歩みのように遅くなる。
ジェフ・プライン(OIST)

好奇心はひとつひとつの疑問から生まれる

科学は、世界の驚異や壮大な現象だけを扱うものではありません。それは、私たち一人ひとりの心の奥底にある疑問によって前進しているのです。他のブースでは、コントローラーでおもちゃの潜水艦を操作します。透明な水槽を進む潜水艦は、偏光シート越しに見ると、虹色の波が浮かび上がります。OISTの研究者が、親子連れにこの現象をわかりやすく解説し、科学の面白さを伝えました。シロップは粘性が高いため、内部摩擦で動きが吸収され、目に見える波が抑えられます。この摩擦によって、流体の分子が一時的に整列し、光との相互作用が変化します。通常、この効果は肉眼では確認できませんが、偏光シートを使うことで、変化した光を取り除き、シロップの美しい模様を見ることができます。

科学実験の様子。透明な液体の入ったガラス槽に、明るい白色光が当てられている。水槽の片側半分には偏光シートが取り付けられている。研究者がこの偏光シートの後ろで金属棒を使って、透明な液体をかき混ぜ、水中で角張った波紋が起こり光っている。その手前に子どもが立って観察している。
コーンシロップは粘性が高く、波紋による乱れは通常、人間の目では観察できない。しかし、波紋の光が偏光フィルターを通ると、乱れが奇妙な角張った波としてはっきりと浮かび上がる。
ジェフ・プライン(OIST)

この日のハイライトのひとつが、ヴィンセント・ラウデット教授によるサイエンス・レクチャーでした。クマノミの研究についてユーモアを交えながら紹介し、会場には笑いと感嘆の声が広がりました。「なぜクマノミはイソギンチャクに刺されないの?」「なぜクマノミのしま模様は3本より多くならないの?」子どもたちからの質問に、ラウデット教授は真摯に答えます。科学の未解明な部分についても率直に語り、子どもたちに「まだ解明されていないことがたくさんある」と伝えることで、科学への興味をさらに引き出しました。(「なぜクマノミはイソギンチャクに刺されないの?」という質問については、最近の研究成果をご覧ください。)

ラウデット教授の話からは、海洋科学に対する深い情熱が伝わり、未来の科学者たちを魅了しました。「クマノミは宝物であり、沖縄も宝物です。私たちはその両方を守らなければなりません。そしてみんな、夢があるなら、それを持ち続け、夢のために戦い、夢に向かって突き進んでください!」と語りました。

オレンジ色のクマノミを模した帽子をかぶったラウデット教授が、大きなクマノミのぬいぐるみが置かれた演台の前に立ち、子どもたちに熱心に説明している様子。
海洋生態進化発生生物学ユニットを率いるヴィンセント・ラウデット教授が、クマノミの最新研究についてレクチャーを行った。クマノミが体の大きさに基づいて階層構造を形成し、群れの中で最も大きな個体がメスに変わる仕組みなどを詳しく説明した。
ジェフ・プライン(OIST)

「白衣」と「保護メガネ」を着用 

また、科学ブースでは、子どもたちが白衣と保護メガネを身に着け、実験の基本となる「ピペッティング(液体をはかって別の容器に移す操作)」に挑戦。電子顕微鏡で指紋を観察したり、砂の中から微細なプラスチックごみを探したり、海洋生物クイズに挑戦したりと、さまざまな体験を通じて科学の楽しさを味わいました。保護者の一人は、子どもたちにこれほどまでにこうした体験に興味を持つとは思わなかった、と驚いていました。

こうした体験は、OISTのスタッフや学生の約5分の1がボランティアスタッフとして運営した17の体験型科学ブースで行われました。

サイエンスフェスタに参加した子どもたち。(写真左)保護メガネと、子ども用とはいえ、やや大きめの白衣を身に着け、顕微鏡を覗き込む子ども。(写真右)真剣な面持ちで、ピペットを握り、ビーカーに液体を入れようとしている子ども。
サイエンスフェスタに参加した子どもたちは、実際に白衣を身につけ、個人用保護具(PPE)を試したり、OISTの科学者が画期的な発見に使った顕微鏡を覗いたり、ピペッティングやサンプリングなど、研究室で日常的に行われている作業を体験した。
(左)ジェフ・プライン(OIST) (右)ジョー・ペテレリ(OIST)

キャンパス内では、県内の高校生ボランティアが子どもたちの写真を撮影するお手伝いをしてくれました。OISTの教員紹介ポスターの特大版を背景に、子どもたちは思い思いのポーズで写真に収まりました。「大きくなったら何になりたい?」と尋ねられた男の子が即答したのは、「教授!」

この日OISTで得た経験は、未来の科学者たちの心に確かな刺激を与えました。

OISTのカメラマンやボランティアが撮影した写真は、こちらのFlickrアルバムでご覧いただけます。

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