好奇心、創造性、そして挑戦―第13回SCORE! サイエンス in 沖縄:起業のための研究 高校生のための研究コンテスト

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の講堂は、熱気に包まれていました。夏の自由時間に実験を計画し、データを分析するために費やした時間が、プレゼンテーションに詰まっていました。そして、仲間や引率教諭のみならず、国際的な科学者たちの前で研究発表した高校生たちは、審査員による結果発表を待ちわびていました。優勝チームには、最先端の科学を体験し、現場で活躍する研究者と直接交流できるアメリカ研修旅行が贈られます。一体どのチームがその栄誉を手にするのでしょうか。
OISTのトーマス・ブッシュ研究科長は冒頭の挨拶の中で大会の趣旨を紹介しました。「科学とは、世界中の人々の好奇心によって進められる最大のチームワークです。そして、皆さんの好奇心がこのコンテストへの参加につながりました。情熱を持って取り組んだからこそ、興味深い結果を生み出す素晴らしいプロジェクトが誕生したのです」と語りました。
続いて、観光客に向けたビーチ清掃プロジェクトを提供する株式会社マナティの代表取締役金城由希乃氏が、起業を通じたイノベーションの魅力について講演しました。「アイデアがうまくいかなくても、心配する必要はありません。新しいチャンスは常に訪れます。何度も挑戦し続ける人こそが努力を重ね、成功をつかむのです。学び続け、成長し続け、協力し続けましょう」と、参加者たちにエールを送りました。

司会を務めたのは、FM沖縄のパーソナリティーのデビッド・シェーン氏。プレゼンテーションの前には会場全員でストレッチを行い、緊張を和らげました。その後、最初のチームがステージに立ち、発表が始まりました。
多くのチームが学校で学んだ知識を活かし、日常の現象に応用する形で研究を進めました。向陽高校のチームは、廃棄された卵の殻を使って建築用の漆喰を作り、名護高校のチームは、学校周辺の森で見つけたヤスデから制服をきれいにする天然蛍光増白剤を開発。浦添高校のチームは、裏庭のクモの巣のから糸を作るというユニークな研究を発表しました。

球陽高校のチームは、アリの糞の抗菌作用を調査しました。発表を終えたメンバーの一人は、「これまで自分でプロジェクトを運営したことがなかったので、すべてを自分たちの手でやるのは大変でした。でも、その分楽しかったです」と振り返りました。
沖縄クリスチャンスクールインターナショナルのチームは、多くの植物に含まれる「プレコセン2」という物質の殺菌特性について発表しました。メンバーの一人は「本格的な研究に取り組み、それを起業やビジネスの視点で展開するのは貴重な経験でした」と語り、科学だけでなく実社会での応用についても学びました。

各チームは研究テーマの設定からデータ収集、ビジネスモデルの作成、プレゼンテーションまで、自らの力で進めました。さらに、多くのチームが英語で発表を行い、研究者の前で堂々とプレゼンする姿が印象的でした。
最後のプレゼンテーションが終了すると、隣接するカンファレンスセンターでポスターセッションが行われました。高校生たちは大学院生や教師、教授たちと交流し、熱心に議論が交わされ、会場は活気があふれていました。ポスター発表チームのうち、沖縄クリスチャンスクールインターナショナルの兄弟チームは、海岸のプラスチックごみ問題を解決するため、一輪車に搭載できる3Dプリント製のペットボトルシュレッダーを開発。「最初の試作品は全くうまくいかなかったけれど、試行錯誤を重ねて改良しました」と振り返り、粘り強い挑戦の姿勢を見せました。

ポスターセッションが終了すると、いよいよ表彰式です。審査員を務めたのは、OISTの研究者、スタートアップの科学者、沖縄県庁の専門家等から構成される計5名。審査委員長の森田洋平博士が挨拶を行い、受賞チームが発表されました。
優勝に輝いたのは、沖縄工業高等専門学校のチーム。彼らは通信機とカメラを搭載した低コストの災害対応ヘルメットを開発しました。能登地震で通信が途絶えた地域があったことをきっかけに研究を進め、沖縄気象台の専門家からの意見も取り入れながら、科学的に厳密なアプローチを実践。審査員からは、命を救うための実用的で革新的な発想が高く評価されました。
優勝チームは引率教諭と共に米国カリフォルニア州へ研修旅行に出掛け、グーグル、スタンフォード大学、地元の高校など、科学技術に関連する施設を訪れました。「この研修旅行で、自分の将来に対する考え方が大きく変わりました」とチームの一人は話しています。「私が学んだことの一つは、英語力についてあまり心配し過ぎないことです。それよりも、チャンスを活かして、できるだけ早く国際的な経験を積むことが大切です。」

審査員たちは各チームに講評を行い、OISTの科学者との交流を通じて得た学びを将来に生かしてほしいとエールを送りました。沖縄クリスチャンスクールインターナショナルの教員は「自分の情熱を形にする経験が、生徒たちの自信につながります。A+の成績を取ることも大切ですが、それだけで世界に通用するとは限りません。問題を分析し、解決策を考え、研究成果を発信できる力こそが重要です」と語りました。
SCORE! の運営を担当したOIST地域連携セクションの仲里未希さんは「参加者の創造性と起業家精神には本当に感動しました。OISTは沖縄における国際的な研究機関として、高校生や教師と世界の研究者を結びつける場となっています。今回の交流は私たちにとっても大きな刺激になりました」と振り返りました。
イベントが終了し、参加者が会場を後にする中、静かな期待感が残りました。来年、このステージにはどんな革新的なアイデアが登場するのでしょうか。
第13回SCORE! の写真は、こちらのFlickrアルバムをご覧ください。