次世代の脳科学者が交流:OISTと理研CBSの初の共同シンポジウム
沖縄科学技術大学院大学(OIST)と理化学研究所脳神経科学研究センター(理研CBS)は、8月21日から23日の3日間、両者による初の共同シンポジウム「OIST-RIKEN Brain Symposium (OIST-RIKEN脳シンポジウム)」をOISTで開催しました。両機関で神経科学研究を進める研究者および博士課程の学生、合わせて29人が登壇したほか、セミナーやディスカッションには50名以上が参加し、神経科学をテーマに様々な側面で交流を深めました。
開会の言葉を述べたOIST記憶研究ユニットの田中和正准教授は、「国内で、国際的な神経科学者が集う二つの研究拠点の連携を深めていくことがこのシンポジウムの目的です」と説明します。「そして、最大の特徴は、博士課程の学生が中心となってこのシンポジウムを企画・運営していることです。彼らがイベント運営の経験を得たり、学生同士だけでなく第一線で活躍する研究者と交流したりすることで、次世代の神経科学者のキャリア形成にも役立っています。」
OISTには、神経科学分野で研究を行う研究室(ユニット)が20ほどありますが、この分野で研究に携わる学生たちが、研究室の垣根を越えて学び合うために活用しているのが「OIST Neuroscience Club (OIST神経科学クラブ)」です。このクラブは2019年に、博士課程学生のトム・バーンズさんと、エルタバル・モハメッド・モスタファ・カマルさんが立ち上げたジャーナルクラブがきっかけとなり生まれました。学内の研究者による研究発表の場であるジャーナルクラブは、その後、最新の技術を学んだり話し合うチュートリアルや、学外の研究者による発表の場を設けるセミナーなども実施されるようになり、現在のOIST神経科学クラブへと発展しました。それ以来学生の自主的な運営が続けられてきました。
OIST-RIKEN脳シンポジウムの運営を担ったOIST神経科学クラブの南部美友さんは、「シンポジウムとしては小規模ですが、おかげで参加者同士の交流がしやすく、研究の発展につながる可能性が高まると思います」と言います。同クラブの梶原侑馬さんも、「質疑応答は想定していた以上に活発に行われていました」とシンポジウムが活気あふれた交流の機会になったと話します。
理研CBSから運営に関わった豊泉英智さんは、「参加者と交流する中で、OISTの学生は自分の研究プロジェクトを主体的に進めており、研究についての議論がしっかりしているという印象を受けました」と話します。一方で梶原さんも「OISTでは扱っていない実験生物であるショウジョウバエを使った研究について理研CBSの研究者から話が聞けて興味深かったです」と、お互いの交流の中から研究環境の違いを意識したり学びを得たりしている様子が伺えました。
南部さんは、「発表や交流を通して、新しく挑戦したいテーマも見え、改めて研究への意欲が高まりました。視野が広がり、科学者としてのキャリアの幅が広がったと感じます」と、今回のシンポジウムの意義を語りました。
OIST神経科学クラブは、今後も継続して同様のシンポジウムを開催することを希望しています。